秋のあいうえのスペシャル(2016.10.8)
今年度2回目のMuseum Start あいうえののメンバー向けプログラム「あいうえのスペシャル」が、10月8日(土)に開催されました。年に3回開催される「あいうえのスペシャル」は、これまで「Museum Start あいうえの」のプログラムに参加した人が、ふたたび東京都美術館のアートスタディルームにつどい、ミュージアムをめぐるための拠点として場を活用しながら、その場に居合わせたほかの参加者やとびラー(アート・コミュニケータ)と活動をともにする特別な一日のプログラムです。
この日は雨にもかかわらず、54名のあいうえのメンバーのこどもとその保護者、2名の任期満了したとびラー、そして、13名のとびラーとスタッフの総勢69名がアートスタディルームに集い、上野公園のミュージアムをたのしむためのさまざまなコーナーで活動しました。
それでは、当日の様子をお伝えしていきます。
11時のプログラム開始とともに、ぞくぞくと参加者のファミリーが東京都美術館のアートスタディルームにやってきます。プログラムへの参加は、受付からスタート。スタッフが「あいうえのスペシャル」にやってきたあいうえのメンバーに、「あいうえのスペシャルを楽しむヒント」がつまった今回の会場の地図や、「あいうえのスペシャル」の参加証などを手渡してゆきます。
それぞれの参加者は、受け取った地図を手にアートスタディルームを見渡しながら、どんなコーナーがあるのかを確認します。活動してみたいコーナーや、そこで活動できる時間の長さを考えながら、参加者が自分の活動をデザインすることができるのも「あいうえのスペシャル」ならではの特徴です。
また、今回は、アートスタディールーム向かいのスタジオ一室を解放し、飲食可能な休憩スペースをご用意しました。壁には、活動連携する上野公園の文化施設から提供された、展覧会やイベントのポスターの数々が並びます。
メイン会場であるアートスタディルームの入口正面で、まずあいうえのメンバーを出迎えるのは、上野公園に点在する文化施設の情報があつめられた「情報コーナー」。ここには、「Museum Start あいうえの」で活動するファミリーを応援する9館から提供されたチラシや、「あいうえのスペシャル」開催日当日に楽しめるイベントの情報が壁一面に掲示されています。
これからミュージアムをめぐる参加者がその日に訪れてみたい文化施設を探すことはもちろん、すでにミュージアムをめぐった参加者がビビハドトカダブックの「冒険の記録」の作成に使えそうなチラシを集めたりすることも、「情報コーナー」ではできます。
このように、「あいうえのスペシャル」の各コーナーは、参加者の活動のスタイルに合わせて利用することができます。これは、さまざまな参加者が、自分らしく活動したり、安心してプログラムに参加したりしてもらうための工夫でもあります。
「冒険の記録をつくるコーナー」や、「いろいろな素材をつかって冒険の道具をバージョンアップするコーナー」、オリジナル缶バッジをつくる「スペシャル・ビビットポイント」でも、そうした場の自由な雰囲気を体感するなかで、人と人とのコミュニケーションのあり方を体で覚えていくことが、とても大切なこととして捉えられています。
こちらは、「冒険の記録をつくるコーナー」での一場面。どのようにブックをつくったらよいのか、とびラー(アート・コミュニケータ)が教えるわけではなく、ミュージアムを実際にめぐったこどもたちが自ら考えて、文字や絵におこし、ブックに残してゆくプロセスが重視されながら、活動が進められていきます。
ブックにミュージアムでの体験を記録として残したこどもたちは、この日に限りアートスタディルームに出現する「スペシャル・ビビットポイント」で、この日の活動の証となるオリジナル缶バッジを作成します。
題して、「ゴッホの色 & ゴーギャンの色 でつくるオリジナルバッジ 東京都美術館 特別展「ゴッホとゴーギャン展」の42色」。
調度、「あいうえのスペシャル」当日の10月8日から東京都美術館で始まった「ゴッホとゴーギャン展」にあわせた、特別な缶バッジです。
この活動で参加者はまず、「ゴッホとゴーギャン展」のチラシや図録をみて、「ゴッホの作品の中の色のくみあわせ」と「ゴーギャンの作品の中の色のくみあわせ」をじっくり比べて観察します。じっくりと観察したら、チラシや図録に載っている作品を選びます。選んだら、用意されている「42色のチップ(ゴッホとゴーギャンの作品のなかから採った42色)」から、作品に使われている6色を採集。じっくりと作品のなかの色彩をみて、重なりあった色のなかにある色をみんな巧みに探し出していきます。
選んだ6色を「台紙」の円の中に配置して、のりで張り合わせると・・・
ゴッホやゴーギャンの作品の色でできたバッジが完成!
「あいうえのスペシャル」に参加した証を持って帰るだけでなく、「ゴッホとゴーギャン展」を「色」というひとつの切り口から、自分のなかで理解し、缶バッジという形にかえて自分のものとしていくプロセスは、参加するこどもたちにとって作品と接点を持つ大切な機会となったのではないでしょうか。
さらに今回は、こどもたちが自分の「ビビハドトカダブック」をカスタマイズして、より自分らしい愛着のわくようなブックにバージョンアップするためのコーナーが新設されました。ここでは、素材や道具をじっくり見て、手を加える。そんなプロセスを楽しむこどもたちの活動がとびラーのサポートのもと行なわれます。使用するいろいろな 素材は、紙や布、紐やボタンをはじめ、過去の「Museum Start あいうえの」の活動で使用した素材もふくめたいろいろな素材です。
参加したこどもたちは、自分なりの素材を選んで、ビビハドトカダブックのインデックス、ブックマーク、ポケットを作成しました!
どのコーナーでも印象的だったのは、自分たちの手でブックやバッジなどを作り上げるこどもたちの真剣な姿でした。保護者以外のおとなであるとびラーとこども、そしてとびラーとの活動のなかでいつもとはちがうこどもたちの様子を見守りともに活動する保護者。今回の「あいうえのスペシャル」は、そんなさまざまな立場の人と人とをつなぐ役割りの大切さを深く感じることができるプログラムとなりました。
次回の「あいうえのスペシャル」の開催は、12月11日(日)となります。あらゆる人が、「Museum Start あいうえの」という活動を接点として、ふたたびつどい、つながり、自分らしく活動に参加できるような、心にのこるプログラムとなるよう活動を継続していきます。
(Museum Start あいうえの プログラム・オフィサー 渡邊祐子)