活動ブログ

平成28年度 ミュージアム・トリップ

ミュージアム・トリップ:一般社団法人kuriya[2回目](2017.3.4)

2017年3月4日(土)、よく晴れた早春の日に、「ミュージアム・トリップ」のプログラムが行なわれました。

今回の参加者は、高校生3名のみなさん。
迎えたのは、同じく3名のアート・コミュニケータ(愛称:とびラー)のみなさんです。

本年度より始まった「ミュージアム・トリップ」というプログラムは「すべてのこどもにミュージアム体験を!」という思いで実施するインクルーシブ・プログラムです。児童養護施設や経済的な困難を抱える家庭の子供を支援している団体、海外にルーツを持ちカルチャーギャップなどの困難を抱えるこどもを支援している団体等と連携して、こどもたちと引率者をミュージアムに招待する、オーダーメイドのプログラムです。

上記の対象者を支援している各団体等と連携をしながら実施しており、今回は海外にルーツのあるこどもたちを支援している一般社団法人kuriya のコーディネートにより、2016年の夏に続いて2度目のプログラムが実現しました。

 

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彼女たちの学校の試験明けとなったこの日、とてもリラックスした表情で東京都美術館に来館したみなさん。

「8月に初めて美術館に来たときに、何を見たか覚えている?」
「あ、覚えています!木でできた、、、大きな作品だった!」

前回訪れた時のことをたずねると、笑顔で答えてくれました。

「見るのがすっごく楽しかった!」

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前回見たのは2016年の8月から10月にかけて東京都美術館で開催されていた「木々との対話 再生をめぐる5つの風景」展。(前回の様子はコチラ
そのときに展示されていたのは、彼女が覚えている通り、木でできた彫刻作品でした。

前回のプログラムは、参加者のみなさんにとって初めての美術館。見たものは全て現代に生きているアーティストが作った現代美術の作品たちでした。
2回目となる今回の行き先は、前回と異なるミュージアムの世界を楽しんでもらおうと、”トーハク”(東京国立博物館)にしました。

夏に来館してからしばらく時期は開いていましたが、数ヶ月たった頃にあいうえのより「2度目の招待状」を送りました。その招待状が手元に届く頃に、「もう一度ミュージアムに行く?」と声をかけたところ、「行きたい!」と言ってくれた女の子たち3名が、今回再び、上野公園にやってきたのです。

まずは東京都美術館のアートスタディルームにて、お昼ご飯を食べながらリラックス。
今回一緒に仲間となってくれるとびラーの3名は、8月にも参加してくれていたみなさん。久々の再会でしたが、すぐに打ち解けた雰囲気になりました。

 

お昼を食べ終わったらプログラム開始です。
今回の行き先と、プログラムの流れについて紹介していきます。

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「トーハクには何があるんだろう?」ブックを広げながら、冒険のヒントを確認します。
「歴史の教科書に載ってる埴輪って知ってる?」少しずつ、東京国立博物館で大切にされている歴史的な文化財についてヒントを出しながら博物館に対するイメージをふくらませます。

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東京国立博物館にはたくさんの資料や建物があるのですが、その中でも今回の行き先としたのは「アジア・ギャラリー(東洋館)」です。
アジアに関する歴史的な資料がたくさん展示されており、参加者のみなさんや私たちが暮らす日本や、彼女たちのルーツがあるアジアの国々が、実は歴史的にも文化的にも繋がっていることを紹介しています。

さらに具体的にどんなものが展示されているのか、アートカードを見ながら観察します。
その中で、気になるものや見てみたいと思うものを1人1枚ずつ、選んでもらいました。

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選んだ1枚の気になった理由などを、ペアのとびラーと一緒に紹介し合いました。

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そして、今日のテーマを発表:「自分が100年後に残したいと思うものを展示室で見つけてこよう」。IMG_9958

「今まで100年以上大切にされてきたものを、今度は100年後の未来に残すとしたら、どのようにしたらいいだろう?」という問いかけをしたら、こんな答えが返ってきました。「箱にしまう・・・?」「誰かに預ける・・・?」
少し困惑した表情をしながら、想像をふくらませていました。
モノを永く大切に残し、伝えるというミュージアムの機能について少し考えてもらうことができるように、この<100年後の未来に残したいものを見つけてくる>というテーマを設定したのでした。

 

実際の文化財を見に行く気持ちの準備ができたところで、展示室を見に行こう、と出かけました。

出かける際に必要な冒険の道具:「ミュージアム・スタート・パック」を提げて、いよいよトーハクへ!

東京国立博物館に到着したら、建物の形や不思議な形の彫刻にも目を見張り、興奮した様子で入館しました。
ひとたびアジアギャラリーの建物に入ると、しんとした空気感に包まれます。
ここではとびラーとペアとなり、それぞれアートカードで選んだ文化財のホンモノを探しに展示室へ入って行きます。

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展示室の中をめぐりながら、どんなものがあるか2人で対話をしていきます。

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「ここになんでイラン系のものがあるんですか?」
「あ、これおばあちゃんのお家に似たものがあった気がする」と、自分のルーツについて話し出す子もいました。

実際にモノが目の前にある環境で、
友達とも違う、家族とも違う、また学校の先生とも違う、異世代の人であるとびラーとだからこそ話し出せる関係性が生まれていたのではないでしょうか。
じっくりとモノを見て話し合うこの時間が、ゆったりと過ぎていきました。

展示室をぐるっと巡り慣れてきたところで、今度は「ひとりの時間」です。
今日のテーマ<100年後に残したいと思うものを見つけてこよう>に基づいて、自分がいいなと思うものを探してきます。
「どの展示室に行く?」と尋ねると、3人とも「(3室の)エジプトの美術!」と声を上げ、真っ先に向かいました。

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3人が集まって一緒におしゃべりする場面も。

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時間になったら、再びペアのとびラーと集合。
お互いにひとりの時間で見てきたものを紹介し合いました。
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アジア・ギャラリーを見終わったあとは、本館へも寄り道。
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本館正面の階段の美しさに見入り、興奮した様子で話していたみなさん。
「映画に出てくるワンシーンみたい!」と、喜んで記念撮影をしていきました。
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秘密の呪文を唱えると、オリジナルの缶バッジがもらえる「ビビットポイント」。
東京国立博物館の総合受付ではっきりと伝え、バッジを手に入れることができました!

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再びアートスタディールームに戻ってからはブックを使って「今日の記録」づくりです。
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東京国立博物館で配布されているパンフレットやコンタクトシートなどから、画像を切ったり貼ったりしながらブックのページをまとめていきました。
8月に来たとき以来、久しぶりに書くきっかけとなったそうですが、みなさん躊躇することなくどんどん手が進みました。それは、先ほど見て来たものや感じたことをすぐにでも留めておきたい、という気持ちが伝わってくるほどの集中力でした。

最後に、今日の仲間全員で「見つけてきたこと」を発表してもらいました。

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「日本の仏像と中国の仏像を見比べてみた」
「アクセサリーを集めるのが好きだから、昔のアクセサリーに興味があった」
「本を読むのがすきなんだけど、文字が読み取れない本があったのでそれがすごく興味深かった」
「金色でできているものだから、きっと大事にされていくもの。100年後に残すとしたら、家族を通じて残していきたい」

とびラーも高校生のみなさんも全員が、お互いに見つけてきたことを言葉にして聞き合う時間となりました。

3人のブックはこちらです。

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最後に「Museum Start あいうえの」について、上野公園にある9つのミュージアムのことを動画でご紹介。
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上野公園には美術館や歴史系の博物館だけでなく、科学系の博物館や図書館、音楽ホールなどもあります。その日の気分や見に行きたいもの、学びたいものに合わせて行き先を選ぶことができるので、今後もぜひ上野公園のミュージアムに来てほしい、というメッセージを伝えました。

今回も、最後までとても集中してプログラムに取り組んでくれたみなさん。
「次は”カハク”(国立科学博物館)に行ってみたいです!」と笑顔で帰って行きました。

 
普段の日常生活の中で「ミュージアムに行こう」という選択肢が思い浮かばないこどもたち。
今回のプログラムは、そういったこどもたちにとって「ミュージアムってこんな場所なんだ」「こういう時間の過ごし方もいいな」と思ってもらえるような時間を作り上げてきました。

過去に遺されたものを、さらに未来に託すことを想像しながら、アジアの多様な文化財を鑑賞する時間——
東南アジアにつながりのある参加者のみなさんだからこそ、その文化的な背景に思いを馳せ、まさにプログラム名の「ミュージアム・トリップ」のように<旅するような時間>を過ごすことができました。

いつかきっと近いうちに、また新たな文化財との出会いが生まれ、今回のように<旅するような時間>を過ごしに、上野公園のミュージアムを訪れてくれることを願っています。

 

(Museum Start あいうえの プログラム・オフィサー/東京藝術大学 美術学部 特任助手
鈴木智香子)

プログラム: ミュージアム・トリップ | 投稿日: 2017年3月4日

主催/東京都、東京都美術館・アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)、東京藝術大学

共催/上野の森美術館、恩賜上野動物園、国立科学博物館、
国立国会図書館国際子ども図書館、国立西洋美術館、東京国立博物館、
東京文化会館(五十音順)

お問い合わせ:Museum Start あいうえの 運営チーム(東京都美術館×東京藝術大学)
Tel: 03-3823-6921(東京都美術館 代表番号)
Fax: 03-3823-6920
E-mail: aiueno@museum-start.info

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