活動ブログ

平成29年度 うえの!ふしぎ発見

うえの!ふしぎ発見:アート&サイエンス部(2017.10.29)

10月29日(日)にファミリー向けプログラム「うえの!ふしぎ発見:アート&サイエンス部」が行われました。

台風が近づくなか大雨のお天気となったのですが、9組19名の親子と共に13名のアート・コミュニケータ(とびラー)が活動しました。「うえの!ふしぎ発見」は上野公園の様々な文化施設が連携するプログラムで、毎回一つのテーマのもと、参加者がミュージアムを横断的に体験することができます。

今回は、国立科学博物館と東京藝術大学、東京都美術館の3つの場所を、「色」をテーマにめぐる一日となりました。国立科学博物館(以下、カハク)で色をじっくり見る・観察する体験と、東京藝術大学(以下、藝大)で色を作る体験を経て、最後に東京都美術館で色が使われている絵画作品を鑑賞する、というプログラムです。
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では、どんな一日だったか、ご紹介していきます。

 

①国立科学博物館で自然物の「色」をじっくり見よう

《ごあいさつ》

国立科学博物館の多目的室に集まった参加者のみなさん。

 

ミュージアム・スタート あいうえののプログラム・オフィサーと国立科学博物館 学習課の小川達也さんがみんなをお迎えました。

「上野公園へようこそ!みんなは、この写真を見たことがあるかな?」

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最初にみんなで見たのはある絵の画像です。
どんな「色」が見つかるかな?黒や茶色。動物みたいなのが描かれている。
この色は、どうやってできているんだろう?
みんなで謎解きながら小川さんに尋ねてみると、「実はこの色は、土などの自然物からできた絵具なんです」。

なんと、土からできた絵具!
この画像は、フランスのラスコーという洞窟の中で描かれた壁画です。この壁画は約2万年も昔に、人間が描いた絵で残されている最古のものだと言われています。
文字ができる前の時代から、人間は伝えたいことを絵で表そうとしていました。そして、絵を描くための材料として、身近にある土や炭などの自然物を使っていたということがわかりました。

では、みんなの足元にもある土の色って、どんな色があるのか、想像できるかな?
そこで小川さんが見せてくれたのは、国立科学博物館が持っている「土のコレクション」。

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「土と一言で言っても、これだけたくさんの色があるんだ。そしてその違いを見つけることができるのは、同じようなものをこれだけ集めているからなんだよ。博物館というのは、実はそういう風に、同じものを集めて並べてみることで、違いがわかる研究や調べ方をしている場所なんだ。
みんなも、今日はカハクのコレクションを見に行って、ぜひ色の違いや新しい発見をたくさんしてきて下さい。」

と話してくれました。

小川さんからのあいさつのあと、今日の活動の流れについて説明があります。

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①国立科学博物館で自然物の「色」を見に行こう。
②東京藝術大学で自然物からできた「色」を作ろう。実際に絵具づくりを体験するよ!
③東京都美術館で絵具を使って描かれた作品を見に行こう。
ーーー

自然の「色」を手がかりにした、各施設をめぐる冒険のはじまりです。

それでは展示室へと向かいます!グループごとに、「土のコレクション」をじっくり観察してから向かいました。

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《展示室へ》

こどもチームは日本館へ、おとなチームは地球館へと、それぞれ向かいます。

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それぞれの行き先で見つけてくるのは、「自分がいいな、これが好きだな」と思う色の自然物です。見つけた自然物に対して、「どんな色をしているかな」「ラスコーの人たちみたいに絵具にしたらどんな色になるかな?」と想像しながらじっくり観察します。

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こどもチームは鉱物や土など、日本館に展示されている日本の自然物のコレクションを見ました。とびラーはこどもたちと対話をしながら、自分が見たいものを見つけ出せるように寄り添います。
「この鉱物の中で持ち帰れるとしたらどれがいい?」と聞いた瞬間、そのお子さんの表情が明るくなりました。親でもない、先生でもない「とびラー」という存在の人と一緒にものを見るからこそ、自分のことを考え内省するきっかけが生まれます。

ある参加者は「こんなにひとつのものをじっくり見たのは初めて!楽しい!」と言っていました。

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展示室のなかで、こどもは「冒険ノート」に、保護者は「観察シート」に、それぞれ見つけた「色」を色鉛筆でスケッチしていきます。
ひとつの展示物の中の細かい色みまで、たくさんを見つけてくれていますね。

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展示室から再び多目的室に戻ってきたところで、お互いにどんな色を発見したのかをグループ内で話しました。自分では気づかなかったものや色についての発見を他の人と共有することで、自分のことやその人の存在についても知ることができます。

 

《藝大へ移動》

カハクでの活動を終えたら、昼食を食べに藝大へ移動します。
上野公園を通り抜けて歩いて行きます。向かったのは藝大の美術学部の構内です。

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今日は日曜日だから学生さんはあまりいないけれど、普段授業で使う教室や、絵に関して専門的な研究をしているお部屋に入ります。そこが午後の活動場所となります。

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②東京藝術大学で自然からできた「色」を作ろう

《こどもチームは絵具づくり》

いよいよ午後の活動開始です。藝大で出会ったのは、「美術学部 油画科 技法材料研究室」のみなさん。

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あいさつをしてくれたのは、齋藤芽生先生です。
「技法材料研究室へようこそ!ここは、絵画のなかの油絵に関する材料や技法について研究しているお部屋です。今日の活動を一緒に行ってくれるのは、長谷川銀さんと野口大地さんの助手の2人です。銀さんは、色のシルバーという漢字なのよ。今日はどうぞよろしくお願いします。」

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銀さんより、絵具づくりや絵具の歴史について教えてもらいます。
「みんなは絵具が何でできているかって、カハクで聞いてきたかな?」
「土とか石とか木とか、自然のもの」
「そう、大昔の人たちは、自然のものを細かく砕いて粉状の”顔料”というものにして、絵具を作ってたんだ。顔料と接着剤を混ぜて練ることで、絵具ができあがるんだよ。今日は、ラスコーの人たちと同じように、土からできた顔料を使います。それとある接着剤を混ぜて、水彩絵具を作ります。」

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この接着剤を変えることで、絵具の種類も変わるのだそう。
「接着剤が卵からできたものだってあるし、油の場合もある。昔の人はすごく長い時間をかけて、ちょっとずつ絵具を練ってたから、ほんの少ししか作れなかったんだよ。だからずっと家の中でしか描けなかったんだ。だけど技術が進歩して、機械を使って絵具が作られるようになってから、外にも出かけられるようになったんだ。それが、実はゴッホが描いていた時代なんだ。ゴッホの絵は、顔料と油を混ぜてできた油絵具を使って絵を描いているんだよ。」

実際に油絵具を練るところをデモンストレーションしてもらいながら、丁寧に説明してもらいました。

ここからは、グループごとの作業です。
こどもチームは各グループ一色ずつ顔料を渡されました。
顔料の量を測ったり、初めて使う道具に触れたりしながら、絵具を練っていきます。

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作ったのはこの4色。

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「思ったより難しいし、すっごく疲れる。昔の人はこんな思いをして絵具を作ってたんだね。」と昔の人に思いを馳せながら、こどもたちも絵具づくりに熱心に取り組んでいました。

顔料のだまがないように丁寧に練り上げたあとは、小さな容器に移していきます。

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完成した4色です!

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《おとなチームは特別藝大ツアー》

その間、おとなチームは斎藤先生による特別藝大ツアーを体験していました。
まずは技法材料研究室がどんな研究を行っているのかを丁寧にご説明していただきました。

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ラピスラズリの顔料の抽出方法を例に絵の具の精製の話についてお話しいただいたり、藝大生の制作中の部屋を実際に見学したりしました。現役の学生が、絵具を使いながら格闘している様子を眼前に見られたことも貴重な体験になったのではないでしょうか。

 

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《ためしがき》

ツアーから戻ってきたおとなチームも合流し、最後に実際に作った絵具で試し書きをしました。
自分たちが作った絵具はどんな色をしているかな?どんな風に描けるかな?

まずは4色のサンプルを小さなカードに集めて描きました。そのあとは色を混ぜたり水で濃さを変えたりしながら、自由に描く時間もありました。

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さぁ、これから最後の3つめの場所:東京都美術館へ移動します。最後の行き先である美術館は、今日出会った藝大の人たちのように、絵を学んだ人たちが色や絵具を使って描いた作品が飾られている場所です。
次の場所で、「色」をめぐる冒険はまもなくおしまいです。

 

③東京都美術館で「色」が使われたゴッホの絵を見に行こう

《ゴッホ展をご案内》

本日最後の目的地:東京都美術館のアートスタディールームに到着です。3つめの施設で出会った人物は、東京都美術館で学芸員という仕事をしている稲庭彩和子さんです。

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稲庭さんより、現在東京都美術館で開催中の展覧会「ゴッホ展 巡りゆく日本の夢」についてご紹介していただきました。

「ゴッホは、約140年前に生きていた画家なんだよ。さきほど銀さんが話してくれたように、油絵具を使って絵を描いていたんだ。ぜひ本物の油絵具の色や表情を見てみてください。今回の展覧会でもうひとつ特徴があるのが、実は日本のものも展示されているということ。ゴッホさんは、実は日本の浮世絵が大好きだったんだ。浮世絵を参考にして絵をたくさん描いて、自分だけのオリジナルの作品や画風ができあがっていたことを紹介する展覧会だよ。

ぜひ、色について一生懸命見て考えてきたみなさんだからこそ、ゴッホが使っている絵具と日本の絵具の表情の違いや色について、ぜひ見て来てください!」

稲庭さんからゴッホ展の案内をしていただいたところで、今日の活動は終了です。

「色」について目を使い、手を使った1日となった<アート&サイエンス部>。
この体験をきっかけに、自然の中にある色に気づくようになったり、ある色を見つけたら「あれはいったい何でできているんだろう?」と想像をめぐらせてみたり、色の見方が少しでも変わってくれたら嬉しいです。

また何度でも上野公園へやってきて、これからもたくさんの発見をし続けてくれることを願っています!

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撮影:藤島亮(一部、運営チームが撮影)

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東京藝術大学 美術学部 特任助手
Museum Start あいうえの プログラム・オフィサー

鈴木智香子

 

 

プログラム: うえの!ふしぎ発見 | 投稿日: 2017年10月29日

主催/東京都、東京都美術館・アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)、東京藝術大学

共催/上野の森美術館、恩賜上野動物園、国立科学博物館、
国立国会図書館国際子ども図書館、国立西洋美術館、東京国立博物館、
東京文化会館(五十音順)

お問い合わせ:Museum Start あいうえの 運営チーム(東京都美術館×東京藝術大学)
Tel: 03-3823-6921(東京都美術館 代表番号)
Fax: 03-3823-6920
E-mail: aiueno@museum-start.info

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