スペシャル・マンデー・コース:足立区立東加平小学校3年(2018.2.13)
2018年2月13日(火)に、今年度最後の「スペシャル・マンデー・コース」が行われました。
「スペシャル・マンデー・コース」とは、休室日(月曜日)に学校のために特別に開室し、ゆったりとした環境の中でこどもたちが本物の作品と出会い、アート・コミュニケータ(愛称:とびラー)と共に対話をしながら鑑賞する特別なプログラムです。
参加したのは、全部で3校。保育園の年長のみなさんと足立区と江戸川区の2つの小学校からやってきた3年生のみなさんです。本ブログでは午前中に来館した小学校の様子について紹介します。
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足立区立東加平小学校3年生
(児童 82人 引率 5人 とびラー 17人)
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《全体挨拶》
最初に東京都美術館のアート・スタディ・ルームにて、今日の活動について、あいうえのスタッフより紹介があります。
「美術館へようこそ!これから行くお部屋は『展示室』と呼ばれている場所だよ。本物の作品がたくさん飾られている場所なんだ。」
美術館に来るのがほとんど初めてのこどもたち。これからどんな体験が待っているのか、ワクワクしながらお話を聞いてくれています。
その「ワクワク」をつくるためには、美術館に来る前の学校の時間が欠かせません。
当日を迎える前までに、学校で事前授業を行ってからこどもたちは美術館に来館します。
今回、学校ではこの日のことを「スペシャル図工デー」と名付けていました。
学校で「美術館に行くんだ!」という気持ちをつくり、「連れて来られた」ではなく「行きたい!」と思うことでこどもたちは主体的にこの活動に取り組むようになります。
これから見に行く展覧会についてや、どのように過ごしてほしいかを、美術館のマナーも交えて伝えます。
「今回の展覧会は特別展と言って、限定で開かれているだよ。この展覧会のために、はるばる海外から作品たちが運ばれてきたんだ。普段はたくさんのお客さんが見にくるけど、今日は、みんなのためだけに開かれた、スペシャルな日!まさにスペシャル図工デー!じっくり本物の作品を見て、たっぷり美術館の時間を味わってきてね。
300年以上前の作品が今もこうやって残っているのは、「だれかがいいな」と思っているものがずっと大切にされてきたからなんだ。ミュージアムは、自分が感じた「いいな」をだれかに伝えていい場所なんだよ。だから今日は、自分の「いいな」と思うものを一つでもいいから、展示室で見つけてきてね!」
《グループの時間》
全体挨拶のあと、6〜7人ずつのグループに分かれて、いよいよ展示室へ向かいます。
最初の活動は「展示室散歩」。
最初から一つずつの作品を見るのではなく、展示室の中がどんな空間なのか、天井の高さ、明るさ、壁の色などを確かめながらゆっくりと進みます。
そのときに寄り添ってくれるのがとびラーたちです。ガイドとしてではなく、こどもたちと同じ目線になりながら、こどもたちが注意深く見られるように、また主体的に参加できるように声かけをしていきます。
「ここで壁の色が変わったのに気づいた?ここからはフロアが変わったんだよ。」
ぐるっと3つのフロアをめぐったあとは、ひとつの作品の前で立ち止まります。
まずはみんなでじっくり作品を見る時間です。
学校で見てきたアートカードと違って、本物の作品の色・質感を間近で目にして、こどもたちの表情は真剣そのものです。
とびラーたちは、こどもたちがつぶやいた言葉を丁寧に聞き、グループのみんなで共有できるように伝えます。
この時間を通して、こどもたちは多角的なものの見方、そしてお互いの見方を認めることを学びます。
《ひとりの時間》
グループでたくさんお話しをした時間のあとは、ひとりになる時間です。
東加平小学校では、事前学習で「自分が見たいと思う作品」を選んで「冒険ノート」にその画像を貼る活動をしてきていました。美術館に来た今日は、その本物の作品を実際に見る時間です。
ここで、その「冒険ノート」がとびラーから渡されます。
「今日は右ページに、本物の作品を見て、気づいたことや感じたことを書いてみよう。言葉でもいいし、絵でもいいよ。」
こどもたちは、初めての美術館の中を一人で歩くことに少しドキドキしながら、それぞれの作品のところへ向かいました。
作品の前に行くと、作品の前でじっと作品を見つめるこどもたち。
気づいたことがあれば、黙々とノートに記していきます。この時間は、だれもいない展示室だからこそできる体験です。
先ほどのグループの時間でみんなとしたように、下や横から別の角度から見てみるこどもの姿も。
《最後に:「ミュージアム・スタート・パック」をプレゼント!》
展示室の時間はあっという間に過ぎ去ってしまいました。
「もう帰るのか・・・」と残念がるこどもに、とびラーが伝えます。
「今度は家族でお弁当を持ってくるといいよ、上野公園で食べれば楽しいよ。」
こどもたちは目を輝かせていました。
そこで、上野公園にもう一度来るときに必要な、大切な道具があります。それは、「ミュージアム・スタート・パック」。実は事前に渡していた「冒険ノート」は、この「ミュージアム・スタート・パック」の一部だったんです。
「ミュージアム・スタート・パック」のアイテムである「冒険ノート」と、上野公園の9つの文化施設について紹介しているガイドブック「ビビハドトカダブック」、さらにキラキラシール付きのバインダーと「あいうえのバッジ」のセットがこれですべてそろいました。
けれども、これで完成ではありません。
各施設の「ビビットポイント」で呪文を唱えると、オリジナルバッジがもらえるんです!9つのオリジナルバッジは布バッグにコレクションをすることができます。呪文はパックのアイテムに隠れているよ、と伝えると、みんなで早速見つけて口々につぶやき練習をしていました。
この「ミュージアム・スタート・パック」を持って、また何度でも上野公園に来てください!と伝えてその日の活動を終了しました。
《後日・・・事後学習の記録が届きました!》
そして後日、学校で事後学習が行われました。
①はじめて行った美術館での発見や感じたこと ②もう一度観たい作品を選ぼう、という2つの活動を行なったそうです。
冒険ノートの記録の一部をご紹介します。
“92番(の作品) かごがある。二羽の鳥がどうして同じ方向をむいているの?”
“みんなでみた74番の絵「愛のぐう意」ヤン・ブリューゲル2世
かいが岩についている
なぞの薬?!
白鳥がくちばしを合わせている(キスしている?!)”
“東京都美術館に行って気づいたことや発見したこと
・ロビーは学校の電気とちがって明るくもない、暗くもないちょうどいいおちつく明るさ ”
グループで鑑賞した作品で気づいたことや、疑問に思ったこと、また、作品以外でも発見した美術館のことを思い出しながら書いてくれているのがわかります。
この体験をきっかけに、これからもぜひ、この冒険ノートを携えて、何度でも上野公園に足を運んでほしいと思います!
鈴木智香子|東京藝術大学美術学部特任助手、Museum Start あいうえのプログラムオフィサー