活動ブログ

2018(平成30)年度 うえの!ふしぎ発見

うえの!ふしぎ発見:けんちく部 伝説の建築家編(2018.8.18)

「楽しかった!」
「親はオマケ程度かと思っていたのですが、私もとても楽しかったです」
「これほどじっくり取り組めるとは思っておらず、嬉しい驚きでした」
こんな感想を寄せてくれたのは、「うえの!ふしぎ発見:けんちく部」に参加した親子。

「うえの!ふしぎ発見」は9つの文化施設があつまる上野公園を舞台に、ミュージアムとミュージアムのコラボレーションを通じて、たくさんのふしぎやホンモノとの出会いを探求するプログラムです。

今回のテーマは「けんちく」。「伝説の建築家編」というタイトルどおり、師匠のル・コルビュジエと弟子の前川國男、2人の建築家が建てた建物をめぐるこどもと大人の建築ツアーです。

参加したのは15組31名のファミリー。そこにツアーの伴走役を担う17名のアート・コミュニケータ(以下とびラー)が加わります。
ファミリー向けではありますが、プログラム中はこどもチームと大人チームに分かれて進みます。こどもチームは色や形の工夫に着目しながら建物を探検し、さまざまな不思議を発見する旅へ。大人チームは学芸員などによる解説を聞きながら、3つの建物をゆっくりめぐるツアーへ出かけました。

 

《冒険のはじまり》

「おはようございます」

朝10時。参加する親子が東京都美術館のアートスタディルーム(ASR)に到着しはじめました。
受付をすませたら、親子別々のテーブルへ着席。この日はこどもも大人も、グループに別れて活動します。各テーブルでは今日1日を一緒に過ごすとびラーが待っています。

プログラム開始とともに登場したのは東京都美術館の河野佑美さん。
「今日は、“たてものをみる目”を養う1日です。ゴールは自分でけんちくのおもしろいところを発見できる目を持つこと」と河野さん。

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今日のこどもたちの活動は、3つのステップで進んでいきます。

1、けんちくのおもしろいところをみんなで一緒に探す
2、実際にみにいく
3、自分でおもしろいところを見つける

どんなことが始まるんだろう? とわくわく顏になっていくこどもたち。

今日のツアーの中心的人物となる「伝説の建築家」ル・コルビュジエと前川國男の紹介のあと、とに自己紹介ワークがはじまりました。
今日訪れる建物の写真をみながら、それぞれの気になるポイントを共有します。
こどもが選んだ1枚をみながら、

「どうしてこれが気になったの?」とびラーが尋ねます。
「奥に絵があるから」
「ほんとだね。どんな絵だろう? あとで実際に見にいってみよう!」

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いよいよ出発です。まずは、国立西洋美術館へ。

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《発見のコツをつかむ:国立西洋美術館》

「みんな、ちょっと振り返ってみて」。
入り口で河野さんが声をかけます。美術館の前のタイル。その向かいに建つ東京文化会館の窓の枠。なにか気づくことはあるかな?
「あ!」「似てる!」こどもたちが答えます。
「前川さんが、先生であるコルビュジエさんに敬意を表して、似たようなデザインをしているところがあります。これもその1つなんです」と河野さん。もちろん、似ていないところもあります。そんな相違点を探すのも今日の楽しみの1つです。
「よーくみて、いろいろ発見してみよう!」河野さんの声援をうけて美術館のなかへこどもたちが入っていきます。

「建築だから、触れるものもあるよ」ときいて、さっそく柱に触っている子がいます。「すべすべしている」
「木みたいに見えるけど、木じゃないみたい」
「上のほうに切れ目がある」
ひとりの子の発言に他の子も柱を見上げました。
「あー、あそこだね!」

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「あそこを見てみて」今度はとびラーが声をかけます。
「あ、ちょっと隙間が空いているよ」

天井、壁、柱、階段、窓・・・・

何でできている?
どうなってる?
どうしてだろう?
これがあるのとないのとではどう変わるだろう?

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ほかのものと比べてみたり、もしこうじゃなかったら、と視点を変えてみたりすると気づくこともある。
“けんちく”を見るコツを伝授され、こどもたちも次々と発見します。

「こっちから見ると、模様がつながって見える」
「この階段、片方だけ手すりがついているよ!」
「ここはこうなってるね」

身振りを交えながら発見を伝える子も。

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あっというまに時間となりました。
全員集合したら、次なる目的地、東京文化会館へ。

 

《自分で発見する:東京文化会館》

この日の東京文化会館は休館日。館内にいるのは、けんちく部の参加者と関係者だけです。普段は通らない裏口からの入館に、こどもたちのわくわく感も高まっています。

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「みなさん、今日はようこそおいでくださいました!建築の魅力がいっぱいつまった建物なので、じっくりみていってくださいね。」
大ホールの客席に座ったこどもたちの前に登場したのは、東京文化会館の橋本あす美さん。
写真を見せながら、開館当時の様子や普段どんな催しが行われているのかなどをお話します。

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「さあ、探険にでかけよう!」
これからはこどもたちが自分で発見する時間。
河野さんがこどもたちに呼びかけます。
「気づいたことをとびラーに報告してね。とびラーがメモするので、あとでそれぞれのメモを持ち寄って話しましょう」。
「ほかの子とかぶってもいい?」
「いいよ。でも、同じように思えてもみんなちょっとずつ違うはず。自信をもって自分の発見をメモしてきてね」と河野さん。

さっそく活動がスタート。気になるところへ歩きだします。

「カラフルな席がある!」
「たしかに」
「前の方は赤い席しかないけど、後ろの方に行くといろんな色があるね。」

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「来て来て!」他の子を呼ぶ声が聞こえます。
「ここの手すり、丸くなってる」
「ねえねえ、金色がいっぱい使われているよ」
こどもたち同士で発見を報告しあいながら。
「こんどはあっちへ行ってみよう!」

時間がきたら舞台上へ。用意された模造紙にこどもたちの発言を書いた付箋を貼っていきます。準備ができたら大人たちも合流します。

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「電気が三角。床も三角。三角がいっぱい」
「柱がシマシマ」
「タイルが4種類あった」
模造紙にはたくさんの発見が集まりました。
「ほかのひとはどんな発見をしたかな?」みんなで見てみます。

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最後は参加者全員でカーテンコール体験。
「客席、あんなに高いところまであるよ!」
ふだんは決して見ることができない、舞台からの景色に大興奮しながらの記念撮影となりました。

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これで午前中のプログラムは終了。
ASRに戻りお昼ご飯休憩をとったあと、午後のプログラムがスタートします。

 

《気づきを共有する:東京都美術館》

午後、こどもたちは東京都美術館の館内をまわります。
まずはグループごとに観察ポイントを2箇所決めます。

東京都美術館の外壁にある穴に注目したグループ。
穴を覗き込んでいます。
「丸い穴がある。人差し指が入るくらいの大きさ。奥はふさがっている」

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ここでこどもたちが手にしているのは「発見シート」。
自分で発見したことを書き込めるようになっています。
シートを見せ合うことでお互いの気づきを共有することができます。新たな視点を得て、自分のシートにコメントを書き足す子もいました。

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《いつもとは違った目になる:大人の1日》

一方、大人たちはどんな1日を過ごしていたのでしょう?

「今までとは違う見方や発見ができてよかったです!」というのは、参加者の一人。
この日、大人たちもこどもの活動と同様に3つの建物をめぐります。

とびラーによる東京都美術館の建築ツアーからスタート。さらに、国立西洋美術館の寺島洋子さんのガイドでコルビュジエが設計をした本館と前庭を巡りながら建物の魅力と秘密をじっくり聞きました。東京文化会館の橋本さんによるツアーでは、前川國男とコルビュジエの関係性や2つの建築に見られるデザイン上の秘密などの、普段は知ることのできないお話を聞きながら館内をツアー。

こどもたちが見て・感じて・発見したものを、大人たちは専門的な知識を得ながらめぐります。同じものを見ながら別の体験をすることで、プログラムが終わった後も大人とこどもがそれぞれの体験を共有し、お互いの意見を聞きあうことができます。

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午後の活動では、ASRにて東京都美術館の稲庭彩和子さんから「あいうえの」の取り組みについてや、ミュージアムを継続して楽しむ方法についてなどの話を聞き、こどもと一緒にミュージアムをたのしむことについてイメージを膨らませます。次はグループごとで「こどもと一緒にミュージアムを楽しむとは?」をテーマにとびラーと共に意見や悩みなどを話し合いました。

「こどもと好きなものが違うから一緒に楽しめないのでは、と不安・・」そう話してくれた保護者の方。
「お互いの好みを知ったり、意見を言い合ったりするのもミュージアムの楽しみの一つ。どこがいいと思ったの?と耳を傾けてみてはどうでしょう。“これ良いな!”と思ったことを人に聞いてもらえること=自分を肯定してもらうことで、こどものミュージアム体験はグッと楽しくなるんです。」

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それぞれがふだん感じているちょっとした悩みには共通するところもあり、話がはずみました。
「こどもにいろいろなものを見せたいと思い申し込んだ」という保護者の方も、「自分も充実した時間を過ごすことができ、楽しかったです」と話してくださいました。

こうして親子別々のプログラムデザインをしている理由のひとつに、保護者の方にも“親”という役割(例えば、美術館にこどもと一緒に来ても、こどもが騒がないように、他のひとの迷惑にならないようになど気にしてしまって楽しむ余裕がなかったという人もいます)からいちど離れ、一人の大人として美術館を楽しんでほしいという思いがあります。
それぞれに充実した時間を過ごしてこそ、一緒の時間がますます楽しくなる。まさにそれを体感する1日となったようでした。

 

《ふりかえり:冒険ノートを書いて、見せ合って》

最後は、こどもも大人も一人ずつ冒険ノートづくり。
「ミュージアム・スタート・パック」からノートを取り出し、切り抜いた写真や自分の発見をメモした付箋を貼ったり、イラストやコメントを書いたり。

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これでこの日のプログラムはすべて終了です。
「ぜひ家に帰ってから見せ合って、親子でも話してみてね」と河野さん。

 

《発見する“目”を獲得する:けんちく部》

「文化会館ホワイエのソファーで、○○ちゃんも座りに来てよ!きっと感想が違うから!!と同じチームの仲間を呼ぶ子。些細なことですが、自分の感想を伝えるより先に、相手の意見を聞いてみたい!という呼びかけに感動しました」

この日参加したとびラーの感想です。

見つけたことを誰かに話したくなる。
誰かに話すとまた違った気づきを得ることができる。
それは、誰かと一緒にみるからこそ起こること。
こうした体験をとおし、様々なおもしろいところを発見する“目”を獲得していきます。

帰り道、ふだん見ている建物も、またちょっと違って見えたのではないでしょうか。


 

執筆|井尻貴子、編集|Museum Start あいうえの運営チーム

撮影|加藤健(一部、運営チームが撮影)

プログラム: うえの!ふしぎ発見 | 投稿日: 2018年8月18日

主催/東京都、東京都美術館・アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)、東京藝術大学

共催/上野の森美術館、恩賜上野動物園、国立科学博物館、
国立国会図書館国際子ども図書館、国立西洋美術館、東京国立博物館、
東京文化会館(五十音順)

お問い合わせ:Museum Start あいうえの 運営チーム(東京都美術館×東京藝術大学)
Tel: 03-3823-6921(東京都美術館 代表番号)
Fax: 03-3823-6920
E-mail: aiueno@museum-start.info

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