活動ブログ

2018(平成30)年度 あいうえのスペシャル

冬のあいうえのスペシャル(2018.12.15)

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12月15日、1年も残すところもあと半月になった土曜日は、1月並みの寒さでした。それでも上野公園の美術館や博物館、動物園には開園前から並んでいる人が。なかでも特に行列していたのが東京都美術館、エドヴァルド・ムンクの有名な作品《叫び》が展示されている「ムンク展ー共鳴する魂の叫び」。そんな東京都美術館ではこの日、今年度2回目の「あいうえのスペシャル」が行われました。1日の様子をお伝えします。

 

■「あいうえのスペシャル」って?

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朝10時30分に受付開始。すると、アートスタディルーム(以下、ASR)前に設置された受付に続々と参加者がやってきました。受付で、今日だけのスペシャルなアイテムを受け取り、さらに特別ワークショップに参加を希望する人は整理券をゲットします。
そのあとは参加者が思い思いにその日行きたい上野公園のミュージアムへ出かけ、散策したり見学したりしてミュージアムの時間を楽しみます。それぞれがその間にどんなことを体験したかは、あとで記録される「冒険ノート」で明らかになります。

「あいうえのスペシャル」とは、あいうえののプログラムでミュージアム・デビューしたこどもたちとそのファミリーが再び上野公園を訪れ、継続的にミュージアムを楽しむことができるよう、開催されています。「ミュージアム・スタート・パック」を提げたこどもたちが上野公園やミュージアムを自分の足でめぐり、思い思いに1日を過ごせることができるようにしたい、そんな思いで作られている場です。

また、この日はプログラムに参加したメンバー同士が「再会」できる日としても開催されています。こどもたちだけでなく、一緒に活動したアート・コミュニケータ(愛称:とびラー)も、現役メンバーに加えて任期満了したメンバーも再び戻ってきます。こどもたちが少し成長した姿を見ることができたり、お互いの交流を楽しみに来たり。

こどもたち、アート・コミュニケータ、そしてあいうえののスタッフも共に集い、日常生活の中でミュージアムがメンバー同士の交差点となるような機会となること、つまりはミュージアムを介した新しいコミュニティづくりを目指して開催されています。

 

 

■書道じゃないの? 墨を使って自由に描こう!

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この日のメイン・プログラムのひとつは東京都美術館で開催中の上野アーティストプロジェクト2018「見る、知る、感じるーー現代の書」展にちなんだ、「特別ワークショップ 墨を楽しむ!缶バッジを作ろう」。1回25名の定員で行われました。

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6人が座れる机の上には、大きな和紙が1枚用意されています。

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このワークショップは、とびラーの自主的な活動(とびラボ)と連動して実施されました。今年初めての試みです。「とびラボ」から生まれたワークショップを出発点に、企画から準備、当日のグループごとの進行や運営をとびラー自身が行います。

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和紙は大きなキャンバスのようなもの。道具は、刷毛、スポンジに柄のついたもの、短く切られたしめ縄、上野野公園で拾った木の枝、段ボールの切れ端、歯ブラシ、割り箸などなど、普段書道で字を書くときにはおそらく使わないものたちばかり。
それらの道具の中からそれぞれ好きなものを選びます。すぐに決める子もいれば、悩みぬいてようやく手にする子も。

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次に、プラスチックのカップに入れられた墨汁を受け取ります。そして道具の先端に墨汁をつけ、思い切って和紙に墨を落とします。
最初は座って手の届く範囲だけで細かく表現していても、とびラーのかけ声に合わせて立ち上がり、紙の真ん中まで自分の思いをぶつけるようにして、どんどん大胆になっていく姿もありました。

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道具を変えたり、水を垂らして墨の濃淡を変えたりなど、意のままにモノクロームの世界をかたちづくってゆきます。
ほどほどに和紙の余白がなくなったところで作業は終了。

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チームで力を合わせてできあがった作品をつるして、みんなで鑑賞します。

全4回のワークショップで、合計16枚の作品が出来上がりました。すべて違う表情の作品たち。色の濃淡やかすれかたなど、黒一色だけでこんなにいろんなことが表現できることにも驚きです。

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そしてワークショップはこれで終わりではありません。作品の好きなところをオリジナルの缶バッジにすることができます!

まんなかが丸く切り取られたルーペを持ち、作品を丁寧に観察してから自分の好きな場所を探します。「ここ!」と決めたらその部分を切り取ります。さらにそれを丸く切って「墨」の缶バッジを作ります。

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ワークショップには任期満了したアート・コミュニケータも一緒に参加します。「ガッチャン」とマシーンを押すと、シックでわびさびを感じさせるような絵柄のバッジができました。自分のこだわりで仕上げたバッジをつけて、みんなうれしそう。

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「見る、知る、感じるーー現代の書」展では、様々な墨の表現を鑑賞することができます。
人間の体よりもずっと大きな作品、大胆で太い線で書かれた作品、繊細な線で書かれた作品など、墨には無限大の可能性があるみたい。このワークショップは、そのことを実際に体験してほしいと思って企画されました。
このワークショップを体験してから、実際に会場へ出かけた参加者も多数いました。

部屋中に墨のにおいが充満しており、ワークショップは一日中盛況でした。

 

■冒険ノートに記録! どんなものを見たか教えて!

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美術館の他に動物園や博物館があり、美術作品だけでなく、生き物や科学、歴史にも触れることができるのが上野公園の素晴らしいところ。
こどもたちが過ごしたミュージアムでのさまざまな体験が、「冒険ノート」に記録されました。

例えばこんな様子で書いていました。

落ち葉の季節ならでは、上野公園で拾った葉っぱをノートに貼ったり、当日開催されていた国立西洋美術館のワークショップ「美術館でクリスマス」で作ったツリーを再現したり。どちらも色づかいが上手で印象的でした。

きょうだいで参加していた2人は、最初にお姉さんが「あいうえの」に参加して入手したバッジをうらやましく思って、弟さんも参加するようになったそう。いまでは弟さん自身の冒険ノートに、見たものの記録がしっかりと積み重なっています。

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お子さんが冒険ノートに記録する脇で、一緒に記録を描く保護者の方も少なくありません。あるファミリーの参加のきっかけは「父親がアート好きだったから」とのことでした。大人も楽しめば、こどもも一緒に楽しみ、ファミリーで一緒に出かけるきっかけとなります!

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国立科学博物館の特別展「明治150年記念 日本を変えた千の技術博」を記録しているこどもがいました。ページいっぱいに大きく「タイガー計算器 十號型」(大正時代の四則演算機)の絵を一心不乱に描いているのを見て、保護者の方は「ほかにもいっぱい見たはずなのに」と話していました。しかし、タイガー計算機に興味を持ったこと、そしてそれに真剣に向き合って描いたことで、もしかしたら将来は技術や機械への興味を持つかもしれません。
自分自身が”いいな”と思うものを見つけることが何よりも大切。

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「ムンク展」の冒険ノートを書いている子もたくさんました。展示室を再現したり、自分の思う叫び声を《叫び》の作品に添えたり、自分のお気に入りの作品のことを熱心に描いていたりと、こども1人1人によってまとめ方はさまざまです。
ひとつの作品、ひとつの展示、ひとつの行き先から、こどもたちは様々な思いを受け取り、そこから想像が広がり、創造につながるということを深く感じさせられました。

他にもたくさん作られた冒険ノートはこちらから

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他にもいろいろ!人気のコーナーを紹介

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「あいうえのスペシャル」に参加するともらえる、ミュージアムを冒険するためのスペシャルなアイテムのひとつ「あいうえのスペシャルMAP」。
これで、まずは今日の行き先や、やりたいことを決めます。

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この日の「あいうえのスペシャルMAP」に書かれていたコーナーをご紹介します。

 

「スペシャル・ビビッドポイント」というコーナーではオリジナル缶バッジを作ることができます。
そこで「冒険ノート」を見せた参加者は、この日だけの特別な冒険の証として、自分が描いたものを缶バッジにすることができるのです。

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動物や植物、抽象的なデザインなど、この日の発見や思い出を書き込んで、実にさまざまなオリジナルバッジがこの日も作られました。

 

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その他に人気なのが、参加者が上野公園で発見したことやおすすめの場所などを紹介し合う「情報コーナー・あいうえのマップ」。

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シールにイラストとメッセージを書いて壁のマップにぺたり。今回も「水で動物を描いてくれるおじさん」「オススメの、(寛永寺の)ご朱印帳!!」などの情報が寄せられました。このコーナーにもアート・コミュニケータがいて、今日開催しているイベントなどを紹介していました。その情報によって、行き先を決めたファミリーもいました。
自分のお気に入りスポットを、みんなに教えてくれてありがとう!

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そして、今回初の試みだったのが、部屋の一角に設けられた「あいうえのcafe・キッズスペース」。休憩場所としてリラックスしたり、飲食したりできるコーナーです。小さなお子さん(未就学児など)も、スタッフが用意したブロックなどで遊んでいました。
小さなコーナーですが、ファミリーみんなで参加しやすいように用意しました。上の子がプログラムに熱中している間、下の子もこのスペースでくつろいでいるなど、ファミリー全員で1日ゆったりと過ごすことができていました。じゅうぶんに活用してもらえたようです。

 

■「また会ったね!」笑顔でハイタッチ!!

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あいうえのでは、「あいうえのスペシャル」がホームカミング、つまり「おかえりなさい」と言える場になっていくことを願って、この日を設けています。今回、以前のプログラムで一緒だったこどもと再会し、ハイタッチしたことを報告してくれたアート・コミュニケータがいました。再会を果たしたそのふたりのことを、アート・コミュニケータみんなで喜びました。

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どのコーナーにもアート・コミュニケータがいて、こどもたちやファミリーの活動に寄り添います。
どんな時間を過ごしてきたのか、どんな体験が印象的だったのか、参加者の話を聞きながらミュージアムでの思い出をふりかえります。保護者のアンケートの中にも、このような声が寄せられています:

・とびラーの方がていねいに対応してくれるので、(1つ1つの事もほめてくれ)とてもこどももうれしい様です。
・とびラーの方々の笑顔と、優しい言動に心がいやされます。
・いつもとびラーの方々がやさしくお話をして下さり感謝いたします。居場所があるという事がとても喜んでいます。 

 

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これまで集めたバッジたち、9つのバッジと「あいうえのスペシャル」で作った特別なバッジも一緒に、誇らしく付けているこどもたちもいます。

こんな風に、アート・コミュニケータに会いに来たり缶バッジを作ったり、「あいうえのスペシャル」という日をきっかけに、一度きりじゃなくて、何度もミュージアムを楽しんでほしいと願っています!
和紙に墨が染みていったように、みんなの心にュージアムの楽しさが染みてゆくような、そんな1日になったでしょうか。

次回の「あいうえのスペシャル」は来年2月の終わりの開催を予定しています。暦の上ではもう春、どんな季節になっているでしょうか。みなさんに会えることを願って上野公園で待っています!

 


 

執筆|近藤智子
編集|Museum Start あいうえの運営チーム

 

 

プログラム: あいうえのスペシャル | 投稿日: 2018年12月15日

主催/東京都、東京都美術館・アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)、東京藝術大学

共催/上野の森美術館、恩賜上野動物園、国立科学博物館、
国立国会図書館国際子ども図書館、国立西洋美術館、東京国立博物館、
東京文化会館(五十音順)

お問い合わせ:Museum Start あいうえの 運営チーム(東京都美術館×東京藝術大学)
Tel: 03-3823-6921(東京都美術館 代表番号)
Fax: 03-3823-6920
E-mail: aiueno@museum-start.info

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