活動ブログ

2018(平成30)年度 うえの!ふしぎ発見

うえの!ふしぎ発見:けんちく部 歴史てくてく編(2018.11.24)
(国立国会図書館国際子ども図書館×東京藝術大学)

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『100年前にタイムスリップ!!』
こんな見出しで、冒険ノートを書いてくれたのは、2018年11月24日に行われた「うえの!ふしぎ発見:けんちく部 歴史てくてく編」に参加したひとり。

「うえの!ふしぎ発見」は、9つの文化施設があつまる上野公園を舞台に、ミュージアムとミュージアムのコラボレーションを通じて、たくさんのふしぎやホンモノとの出会いを探求するプログラムです。*プログラムについてはこちらからご覧いただけます。

今回のテーマは「けんちく」。「歴史てくてく編」というタイトルどおり、『100年前の上野公園を見つけよう!』を合言葉に、国立国会図書館国際子ども図書館(以下国際子ども図書館)と東京藝術大学(以下藝大)、その周辺の歴史的建造物を巡る、こどもと大人の建築ツアーです。

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参加したのは、小学校1〜6年生までの18名のこどもたちとその保護者。そこにアート・コミュニケータ(以下とびラー)16名が加わります。
プログラムは、こどもと大人(保護者)それぞれ少人数のチームに分かれて実施。各チーム、とびラーが活動の伴走役を担います。

今日の活動は、次の3つのステップで進んでいきます。

1、国際子ども図書館で『100年前』に出会う〜100年前を観察しよう

2、地図を頼りに上野公園の歴史に触れる〜フロッタージュで100年前を採取しよう

3、私の見つけた『100年前』〜冒険ノートで100年前を記録しよう

 

《冒険のはじまり》

朝10時。国際子ども図書館のアーチ棟研修室では、受付を済ませた参加者がチームごとに着席します。傍らにいるのは、今日の活動をともにするとびラーたち。

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「いまみんながいる、国際子ども図書館。この建物はいつ建てられたでしょう?」

国際子ども図書館の白井京さんが尋ねます。

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白井さんの問いかけに、うーんと考え込むこどもたち。白井さんが続けます。

「この図書館は、いまから100年ほど前に誕生しました。100年前ってきいても、想像がつかないかもしれないですね」。
インターネットもテレビゲームもまだなかった時代。
「100年前は、どんな様子だったか見てみましょう」。

白井さんのレクチャーが始まりました。最初に映し出されたのは、ドローンで撮影したという、つい最近の国際子ども図書館の写真。「この入り口の様子、よーく覚えていてくださいね」。次に映し出されたのは、白黒の写真。ぐんと時代をさかのぼっていきます。

「ここは、閲覧室。図書館の本や資料をみる部屋です。たくさんの人がいます。マフラーやコートを着ていますね。エアコンのような便利なものは、まだありませんでした」。
さらに昔へタイムスリップ。入り口の看板をよく見ると、「帝国図書館」と書かれています。そう、この図書館は1945年に戦争が終わるまで、「帝国図書館」という名前でした。
「閲覧室です。さっきとは、少し雰囲気が違いますね。この頃は、男女別の閲覧室だったのです。この場所もあとから探検します」。

国際子ども図書館の建物は、明治39年(1906)に帝国図書館として建設され、昭和4年(1929)に増築されました。さらに平成9年度(1997)から平成13年度(2001)にかけて、国際子ども図書館としてリニューアルオープンするため、改修工事が施工されました(レンガ棟の施設は、平成10年まで国立国会図書館支部上野図書館として使われてきました)。また、アーチ棟の建物は平成27年(2015)に竣工しました。*こうした各時代を記録した写真は、国際子ども図書館のウェブサイトでもみることができます。

「その頃のこどもたちは、どんなふうに過ごしていたのでしょう?」白井さんの言葉とともに、『子どもたちの日本史〈3〉明治・大正の子どものくらし』という絵本のページが映し出されました。当時の学校の授業の様子が描かれています。音楽の時間のエピソード。

  ー先生が「今日は教科書を使わないで、レコードを聴きましょう」と言って『カナリヤ』や『七つの子』を聞かせてくれた

そこで、「100年前のこどもたちが実際に聞いていた歌が、図書館に残されています。実際に聞いてみたいと思います」と白井さん。
ざーっという音とともに、『カナリヤ』のメロディが流れてきました。参加者の気持ちも、いっきに100年前にタイムスリップしていきます。

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レクチャーが終わり、チームごとに自己紹介ワークの時間となりました。

机の上には、アートカード(写真をカード状にプリントしたもの)が並んでいます。これらは、100年前から現在まで、この図書館に残っているもの。そのなかから1枚、気になるものを選びます。順番に自分が選んだアートカードを見せながら、その理由を話していきます。

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「さっきのスライドに出てきたから」
「直感で」
「模様がきれいだったので」
「あとで実際にその場所を見に行こうね」とびラーが声をかけます。

自己紹介ワークが終わったら、さっそく冒険に出発です。

《国際子ども図書館で『100年前』に出会う〜100年前を観察しよう

「いってらっしゃい、いろんなものをみつけてきてね」
スタッフに見送られ、こどもたちがとびラーと一緒に出かけていきます。
まずは、国際子ども図書館の館内をめぐり、100年前を観察する時間です。

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「こっち側の壁と、こっち側の壁、違うことに気づいたかな」というとびラーに「二重構造だ!」と答える子。
「すごい、そうだね。もともとはこっち側の壁が外壁でした。工事をして、さらに外側に新しくガラスの壁を作ったの。だから、明治時代の人は、ここは触れなかったんだよ」とびラーの言葉をきいて、「あ、そうか!ここ、2階だ」
こどもたちがそうっと、壁を触り始めました。

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今度は階段を下りながら「あ、この手すり、途中から違う」「石になってるね」発見を伝えあいます。天井の装飾や、帝国図書館時代に使用されていたという目録カード。大きな窓。ほかにも、見どころがいっぱいです。

あっというまに50分の国際子ども図書館探索が終了。「どんな発見があったかな?」とびラーと一緒に、振り返ります。

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一息ついたところで、地図が配られました。でも、見慣れた地図とは少し違います。茶色で、ところどころシミがある。難しい漢字も書かれている。実はこれ、100年前の上野公園の地図。次は、この地図を頼りに周辺のたてものを観察しながら藝大へ向かいます。

 

地図を頼りに上野公園の歴史に触れる〜フロッタージュで100年前を採取しよう

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「この建物、さっきの国際子ども図書館とどっちが古いんだろう?」
ひとりの子が、黒田記念館の前で立ち止まりました。移動中も、たてものに意識が向きます。

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「あれはなにかな?」
次に立ち止まったのは、博物館動物園駅跡
「あ、電車の音がする!」足元から、振動も伝わってきました。「地下に線路があるのかも!」別の子が答えます。

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道を渡り公園の中にたたずむのは旧東京音楽学校奏楽堂
「昔は東京藝大の前身、東京音楽学校の校舎として使われていたんです」。大人チームはとびラーの声に耳を傾けます。

大人もこどもも地図を片手に歩きます。上野公園も、そこにあるたてものも、朝とは違ったふうにみえているのかもしれません。

上野公園に隣接する旧正門を通り、いよいよ藝大に到着です。

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「こんにちは」

藝大では、東京藝術大学の君塚和香さんがこどもたちを待っていました。

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「僕は、このキャンパスのたてものや空間デザインの仕事をしています。キャンパス内のたてものを修復する仕事もします」。そう言って、指差したのは、赤レンガ一号館です。

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「このたてものが建てられたのは、いまから138年前。教育博物館という、現在の科学博物館がこの場所にあって、その博物館の図書室として使われていました。日本で最初の図書館建築のひとつです。約10年前に耐震補強などの改修をしました。さっそく、中に入りましょう!」

階段を上がり2階の「談話室」へ。

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「普通の家だと壁紙が貼ってあるかもしれないけど、ここでは赤レンガの壁をそのまま出しました」と君塚さん。天井の木の梁も、元のものをそのまま残しているそう。部屋のあちこちに“100年前”が感じられるように、改修されています。

「これから、自分たちの目と手、耳や鼻を使って “これぞ100年前”と思うものを探しに行き、見つけたら、採取します。どうやって採取するか。フロッタージュという方法を紹介します」。

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Museum Start あいうえのの山﨑日希さんが、こどもたちに声をかけます。
さっそく実演してみせます。壁に紙を当て、芯鉛筆でしゅっしゅっしゅっとこすると、木目が浮かび上がってきました。

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「すごい!」こどもたちから歓声があがります。
「みんなも、たくさんみつけて、集めてきてね」。

“100年前”を見つけに、藝大キャンパス探索に出発です。

「どこに行く?」「あそこは?」
こども同士、相談しながら歩きはじめました。

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「100年以上前っていってたよね」。
さっそく、赤レンガの外壁に触れてみます。とびラーが差し出した紙を受け取り、芯鉛筆を走らせます。

「できた!」
「きれいに模様が出てきたね」
採取した場所の名前を書いて、完成。
「紙はひとり10枚あるからね」とびラーが声をかけます。

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石畳の石。建物の壁。銅像の土台。電灯の装飾。
黙々と鉛筆を動かす様子に「いいね、いいね」と、とびラーが声をかけます。夢中になっていたら、手も真っ黒に。

「おなかすいた!」
あっという間にお昼の時間です。

 

私の見つけた『100年前』〜冒険ノートで100年前を記録しよう

午後は冒険ノートづくりの時間。藝大の講義室に集まったこどもたちに、冒険ノートが配られました。

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「みんなが見つけてきた”100年前”を、このノートに閉じ込めてね」。と日希さん。
こどもも大人もそれぞれ、“私の見つけた『100年前』”をテーマに、今日見たこと、気がついたことを記録します。

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国際子ども図書館の写真を切り抜き「本のエレベーター。3冊くらい入りそう」とコメントを書き添える子。
「今日は明治時代のおよそ100年前のものなどを探しに行きました」と記す子もいます。
書きながら「昔は何ていう名前でしたっけ?」と訊ねる子も。とびラーが「帝国図書館だよ」と答えます。

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大人も、参加者同士おしゃべりしながら手を動かしています。
「小学生のときに使っていた目録カード。懐かしい!」
「ガラスの気泡。質感がおしゃれ」

「あと10分です。」アナウンスに、「えーもう!」と大きな声があがりました。

時間になったら、それぞれのノートを机の上に広げます。みんなが何を発見をしてどんな冒険をしたのか、お互いに見る時間です。

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さっそくこどものノートを覗きにくる、保護者の皆さん。

「どんなのをつくったの?」
「すごいじゃないか」
「お父さんのは?」

ほかの人の記録も見て回ります。

 

そして最後は、冒険の道具ミュージアム・スタート・パック(以下、MSパック)をプレゼント。「行きたいところが見つかったら、MSパックに入っているビビハドトカダブックをひらいてみてね。ガイドブックになっているよ」。と日希さん。

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ミュージアムの冒険をこれからもっと楽しめるよう、そのヒントを伝えます。

こうして、1日のプログラムがすべて終了しました。

 

「1日のツアー、とても有意義でした。こどもと別々にまわるのも良かったです。後でどんなところでどう感じたかを話すのが楽しみです。」
「世界中でも上野でしか実現できないプロジェクトだと思います。こどもたちに とってかけがえのない体験になると思いました。」
参加した保護者の方々からは、こういった感想が寄せられました。

「さようならー」
「ありがとうございました!」
「また来てね」「待ってるよ!」

手をふって帰っていく参加者を、とびラーとスタッフが見送ります。

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そして、後日。

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「あいうえの新聞、作ろう!」と、冒険ノートづくりに取り組んだ子。帰宅後に完成させて、あいうえのウェブサイト内「みんなの冒険ノート」のウェブページに投稿してくれました。

それを見て、「一緒に冒険していた私もほんとうにうれしい!」と話すのは、その日同じグループで活動していたとびラー。
「タイトル見出しの『100年前にタイムスリップ』は「今日のテーマは何だろうな?そうだ!」と呟きながら書いていたことを思い出します。続編も楽しみです」。

活動を一緒に楽しむ。発見を一緒に喜ぶ。そんなとびラーがいるからこそ、こどもたちはよりいっそう冒険に夢中になることができます。
そこで得た感触を胸に、今度は家族や友達と、またはひとりで、冒険にでかけることができます。
次はどんな冒険をするのかな?

また上野公園のどこかで、こどもたちのいきいきとした表情をみることを、その話を聞くことを、とびラーやスタッフは楽しみにしています。

 


 

執筆|井尻貴子、編集|Museum Start あいうえの運営チーム

撮影|藤島亮(一部、運営チームが撮影)

プログラム: うえの!ふしぎ発見 | 投稿日: 2018年11月24日

主催/東京都、東京都美術館・アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)、東京藝術大学

共催/上野の森美術館、恩賜上野動物園、国立科学博物館、
国立国会図書館国際子ども図書館、国立西洋美術館、東京国立博物館、
東京文化会館(五十音順)

お問い合わせ:Museum Start あいうえの 運営チーム(東京都美術館×東京藝術大学)
Tel: 03-3823-6921(東京都美術館 代表番号)
Fax: 03-3823-6920
E-mail: aiueno@museum-start.info

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