活動ブログ

2018(平成30)年度 あいうえのスペシャル

春のあいうえのスペシャル(2019.2.24)

こよみの上では「春」とはいえ2月はまだ寒い季節ですが、2月24日「あいうえのスペシャル」が開催されたこの日はお天気に恵まれあたたかい陽射しがふりそそぎました。

「あいうえのスペシャル」とは、あいうえののプログラムでミュージアム・デビューしたこどもたちとそのファミリーが再び上野公園を訪れ、継続的にミュージアムを楽しむことができるように年3回開催されています。

今年度3回目となる今回は、とびラー企画の「こども建築ツアー」が行われたり、上野公園の9つの文化施設を訪れ楽しんだりする参加者の姿がありました。
ライターの近藤智子さんが見つめたこの日の様子をお伝えします。

 

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ようこそ東京都美術館へ! 「こども建築ツアー」へ出発

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「あいうえのスペシャル」の拠点となる東京都美術館は、建物そのものも見所がたくさん。建物に入るのに思いがけず地下へと誘導されたり、目当ての展示が行われている場所に行くまでが回廊のようになっていたり、迷路みたいで不思議な空間になっています。

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そんな東京都美術館をアート・コミュニケータ「とびラー」が案内するのがこの「こども建築ツアー」。まずはスタジオに集まって「建物を見る楽しさ」についてのお話を聞いたあと、グループ毎の旗を持ったとびラーといっしょに館内を巡ります。学年ごとのグループに分かれて午前・午後の2回、3グループずつツアーに出かけました。色ごとにグループ分けされた参加証シールも好評で、グループでまとまり移動開始です。

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まずは建物の色に注目!東京都美術館には複数の建物があるので、見たい展示を探すのに迷ってしまう人もいるようです。そこで、建物の内部を色分けしてわかりやすくする工夫をしています。その説明を聞いて建物を見上げ、「本当だ!」と歓声を上げるこどもたち。新鮮な気持ちで建物を見上げる表情がとても魅力的。

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野外彫刻や壁の外側にも注目!特にこどもたちの関心を引いていたのが野外に展示されている彫刻と壁のタイルでした。彫刻の中でも人気はやはり《my sky hole 85-2 光と影》。自分の背丈よりも大きなステンレスの球体を貫く穴をのぞこうとしたり、影の形に伸びている板の重さを知っておどろいたりと、こどもたちは様々な視点に立って活発に動きながら、建築を見つめます。また、「タイルにどうして穴があいているの?」…その説明を受けて真剣に穴を見つめていました。この穴は「打ち込みタイル」という工法で必要な釘などを打ち込むための穴なのです。「総工費はいくら?」「タイルの枚数は?」などの質問もどんどん飛び出していました。

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今度は建物の中に入ってみよう!内部のことも説明を聞きながらじっくり見ることで新鮮に感じられるようです。たとえば天井はかまぼこのような形。温かみのあるピンク色が、まさにかまぼこのようで、見ているとおなかがすいてきちゃったかも?!他にも、「食べ物に見える形」でいえば、ロビー階中央の階段も、総合案内のカウンターも、佐藤慶太郎記念アートラウンジのテーブルも丸みを帯びた三角形のおむすび型。中央の階段には、天井から下がっている丸い照明がちょうど真ん中に来ていて梅干しみたい。それが「おむすび階段」と呼ばれるもうひとつの理由です。見ているみんなの顔もほころんでいました。

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建物をめぐりながら、設計者のことも聞きました。東京都美術館を設計したのは建築家の前川國男(まえかわ・くにお)さん。「打ち込みタイル」を考えたのもこの人です。前川さんは1905(明治37)年5月生まれなので、今生きていたら113歳になります。東京帝国大学(現在の東京大学)を卒業した前川さんは、その足で船に飛び乗り、フランスに向かいました。そしてル・コルビュジエという有名な建築家のアトリエで学び、帰国後はたくさんの建築物をつくった日本の建築史に欠かせない人物です。とびラーが語る建物や建築家の話は、どのこどもの心にも強く印象付けられたようでした。

冒険ノート

建物をよく見たら、スタジオに戻って冒険ノートを作成します。人気の題材は「トビカンみどころマップ」の前川國男のイラスト。「この人がつくったんだ!」という驚きが大きかったのかもしれません。
テーブルに置かれたタイルやコンクリートを実際に手にしながら、ツアーで触った壁の感触を思い出してゆくこどもたち。さまざまな素材を使ったり、独特の色で塗ったり、感想を自分の言葉で書いたりして、それぞれ立派なノートが出来上がりました。次に来るときは今日気づいたことを、ほかのだれかに「ここはね」と説明してあげられるかもしれませんね。

とびラー一人ひとりの工夫も功を奏し、晴れた空の下、本当によいツアーになったようです。

 

 

みんなでつくろう スペシャルバージョンの「あいうえのマップ」

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 「あいうえのスペシャル」ではおなじみの「あいうえのマップ」。みんなの上野公園の見どころやおすすめスポットを、絵や言葉とともに紹介する地図です。今日は上野公園の中でこどもたちがカメラで撮った写真や、〝ふしぎ〟〝お気に入り〟などを描いたハガキサイズのカードを作り、マップに立ててゆきます。みんなが作ったカードが加わったことで、素朴でかわいいマップが美しさを持つものになり、とてもよい地図ができあがりました。

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気づきは人それぞれ違って、だれにも気づかないこともあります。自分のなかの秘密にしたいものもあるかもしれませんが、誰かに知らせたい、みてほしいというおすすめがあれば、これからもまた持ち寄って、みんなに見せてほしいなあと感じました。こうしてできたみんなのとっておきを集めた、世界に一つのあいうえのマップ。今回はこのマップを囲んで参加者のみんなで記念撮影をしました。

 

 

「冒険ノート」にたくさんの思いを込めて

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ミュージアムへ出かけて、感じたことや思ったことを残すための「冒険ノート」。アートスタディルームには色とりどりのペンや布、色紙、マスキングテープなど豊富な素材が用意されています。それを使ってこの日もたくさんのこどもが冒険ノートを描いていました。動物や展覧会の絵などをそれぞれ思い思いにノートの上に再現していくのを見ていると、違う世界に連れて行ってもらえそうな感じがします。

 

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学校の授業はみんなと同じことをするので苦手だというお子さんも、「あいうえの」では自由にノートを描けて楽しめるから好きだと話してくれました。いろんなこどもの思いを受け止める場としても、あいうえののプロジェクトは生きている――1冊ずつのノートに、深い感慨を覚えました。

できあがったノートはその場で写真に撮ってウェブサイトに発表ができます。この日は、たくさんのこどもたちから投稿されました。みんなの冒険の記録を、ぜひご覧ください。→http://museum-start.jp/book

 

 

大人気コーナー! また一つ増えた冒険のしるし

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東京都美術館のアートスタディルームにチェックインしたらもらえる「冒険カード」。これに好きな絵を描いて、この日の思い出の缶バッジをつくることができるスペシャル・ビビットポイントはこの日も人気でした。ツアーに参加して前川國男のバッジを作った子もいれば、上野動物園で見た動物を描いたり、東京都美術館で開催中の特別展「奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド」の歌川国芳の絵を描いたりして、バッジにしていた子もいました。

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■ミュージアムで出会う大人たちの存在

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活動中、とびラーはそっと寄り添います。一人で熱中して書いている子には静かに見守り、困っている様子の子などには話しかけてサポートします。「どんなものを見てきたの?」「わ〜その色、素敵だね!」と声をかけると、その子は少し照れたような恥ずかしそうな表情に。

保護者の方に尋ねると、「普段、こんなに褒められたり話を聞いてもらえたりしていないので、ここに来るととても嬉しそうです。」と話してくれました。

とびラーの様子

最後に、「あいうえのスペシャル」を見てきての感想となります。

毎回何よりも印象に残ったのは、スタッフやアート・コミュニケータのみなさんがとる、こどもとの距離感でした。そのゆるやかでやさしい動きに、こどもの頃に触れておきたかったなと思いました。

大概のこども向けワークショップは、有名な作品を一方的に紹介したり、簡単な遊びをしたりして、最後は「自由に〇〇してみましょう」といってこどもたち任せにする流れがほとんどだと思っていました。どうやって手を動かそうか迷っているこどもに対して、「どう?できたかな?」と急かすように声をかけることもあるかもしれません。でも、「あいうえの」のプログラムには一切それがありませんでした。こどもが何をしようとしているのかを聞き、その子が一番居心地の良いように接しているように見受けられました。そうやって、こどもと大人の間に心地よい距離感があってこそ、こどものこころも、また大人のこころも、ひらくんだなということに気づかされました。そして、その距離感をつくることに一番注力されているのだなという風に感じました。

そんな「あいうえのスペシャル」のプログラムに参加できて、とてもたのしかったです。一人ひとりの子どもたちの笑顔や作品をきっと忘れることはないでしょう。

 

今年度のあいうえのスペシャルはこれでおしまいです。また来年度も、その先も、上野公園でお会いできることを、スタッフもアート・コミュニケータ一同も、楽しみに待っています!

 

 


執筆|近藤智子(ライター)

編集|Museum Start あいうえの運営チーム

 

プログラム: あいうえのスペシャル | 投稿日: 2019年2月24日

主催/東京都、東京都美術館・アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)、東京藝術大学

共催/上野の森美術館、恩賜上野動物園、国立科学博物館、
国立国会図書館国際子ども図書館、国立西洋美術館、東京国立博物館、
東京文化会館(五十音順)

お問い合わせ:Museum Start あいうえの 運営チーム(東京都美術館×東京藝術大学)
Tel: 03-3823-6921(東京都美術館 代表番号)
Fax: 03-3823-6920
E-mail: aiueno@museum-start.info

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