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2019年度 スペシャル・マンデー・コース

\特別レポート!/
スペシャル・マンデー・コース@伊庭靖子展 まなざしのあわい
町田市立鶴川第三小学校(2019.9.30)

ここは、上野恩賜公園の竹の台広場の前。

こどもたちの到着を待っている大人たちがいます。彼らは、東京都美術館を拠点に活動する、アート・コミュニケータ(愛称:とびラー)たち。

「もうすぐかな」

「あ、来た!」

この日行われるのは、学校向けプログラム「スペシャル・マンデー・コース」。

展覧会の休室日(月曜日)の東京都美術館を舞台に、特別な鑑賞授業が行われます。

バスに乗ってやってきたのは、町田市立鶴川第三小学校(以下、鶴川第三小学校)の、小学4年生76名、保護者7名、引率4名の計88名。そこに、プログラムの伴走役を担う22 名のとびラーと、スタッフが加わります。

 

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「おはようございます!」

「あ、E班あった!」「俺、ここだ!」

班のプレートを持ったとびラーのもとに、こどもたちが集まりました。

はしゃいでいる様子の子もいれば、少し緊張している様子の子もいます。

みんながそろったら、班ごとに移動開始。

「これから、美術館へ行きますよ!」

とびラーが声をかけ、先導していきます。

 

〈東京都美術館に到着!〉

「みなさんおはようございます。ようこそ上野公園にいらっしゃいました!」

東京都美術館のアートスタディルーム(以下、ASR)に着いたみんなを出迎えたのは、東京藝術大学美術学部特任助手/Museum Start あいうえのプログラム・オフィサーの、鈴木智香子さん。

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「上野公園は、全部で9つの文化施設が徒歩圏内に集まっている、世界でも珍しい場所。今日は、その中の1つのミュージアム、東京都美術館で、『伊庭靖子展 まなざしのあわい』(2019年7月20日〜10月9日)を鑑賞します」。さっそく、伊庭靖子展についての説明が始まりました。

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「伊庭靖子さんは、1967年生まれの52歳。今、生きている作家さんです。普段は京都で活動しています。」

事前学習で、アートカードを使い、展示作品をみて「気になる作品」や「その理由」を書いてきたこどもたち。美術館に初めて来るという子も多く、展覧会に期待が膨らみます。

 

今日の活動は次の3つのステップで進みます。

1.      空間に慣れるための、展示室散歩の時間

2.      グループで見る時間

3.      ひとりで見る時間

 

「今日は、美術館の楽しみ方をいっぱい知っている、とびラーのみなさんが、みんなと一緒に活動します」。

こどもたちは、7人ずつ11のグループに分かれ、各グループにとびラーが2人ずつ加わります。

全体の説明が終わり、グループごとに自己紹介タイムが始まりました。

それぞれ、展示室での<4つのお約束>

1.      触らない

2.      話すときは小さな声で

3.      ゆっくり歩く

4.      メモをとるときは鉛筆で

を確認したら、いよいよ展示室へ向かいます。

 

〈展示室へ!〉

最初は、展示室散歩の時間。班ごとに、ぐるっと展示室内を歩きます。

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展示室ってどんな場所? どんな作品が展示されている? 気になる作品はあるかな?

そんなことに注意を向けながらゆっくり歩き、展示空間に慣れていきます。

「これ、なんだろう?」こどもの声に、とびラーが答えます。

「気になる? あとでじっくり見てみようね。」

 

〈保護者も、展示室へ〉

こどもたちが展示室へ向かった後、保護者の皆様へのガイダンスが始まりました。

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「スペシャル・マンデー・コース」では、先生だけでなく、希望する保護者も一緒に来館できます。保護者の皆様には、こどもたちとは別プログラムをご用意し、学芸員によるガイダンスや、対話を重視した鑑賞法を体験いただきます。

 

〈グループで見る時間〉

展示室では、<グループで見る時間>が始まりました。

とびラーが、こどもたちに話しかけます。

「最初に30秒ぐらい、じっと作品を見てみよう。」

静かに、作品を見つめるこどもたち。

「何か、気づいたことはあった?」

はい、と一人の子が手をあげました。対話が始まっていきます。

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また別のグループでは、「ちょっと離れてみてみようか」と、とびラーが声をかけています。少し後に下がり、「なんか違って見える」という子。

「じゃあ、今度は自分がいちばん好きな距離を探してみよう」

近づいたり、離れたりしてみるこどもたち。

「このへんがいい!」 自分にとってのベストポジションを見つけたようです。

<グループで見る時間>では、こうして、とびラーが積極的に話しかけながら、こどもたちが作品に興味を持ち、お互いの声を聞きあう状況を作っていきます。

また、展覧会にあわせ、作品のモチーフと似た素材を用意し触りながら鑑賞してみたり、手や体を動かしながら見てみたりと、こどもたちが様々な角度から作品を楽しむことができるようなきっかけづくりをしていきます。

 

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〈ひとりで見る時間〉

展示室散歩、グループで見る時間を経て、展示室に慣れてきたこどもたち。最後は、<ひとりで見る時間>です。

つぶやきシートを渡し、「発見をメモしてきてね」と、とびラーが声をかけます。

「言葉で言い表しにくい場合は、絵でメモしてきて!」。

それぞれ、気になる作品のところへ向かいます。

立ち止まって、すぐに鉛筆を走らせる子。

作品の前に座り込んで、ゆっくり書く子。

どの子も、それぞれのペースで集中して作品と向かい合っています。

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「美術館は初めてなんです・・・一人で集中して見れるかな?」

事前打ち合わせでは、先生方からこういった懸念の声を聞くこともよくありますが、心配無用。とびラーとの鑑賞を体験したこどもたちは、すっと一人の時間に入っていきます。

絵の前で前後に動いてみたり、いろんな角度から見てみたりと、グループで見る時間で得た、鑑賞の仕方のヒントを早速取り入れている子もいます。

「つぶやきシート」には、こんなふうに、それぞれの“発見”が書き留められていました。

 

「川にうつっている木がすこしかかれていて秋の終わりのふんいきがする。すごくきれい」

「あつみがあったり、シワのひょうげんがいい。見てると、そこでねてみたくなる」

「学校で見た物は少しくらいかんじがしたけど、ほんものはよるというよりもあさはやくというかんじがする」

 

〈保護者の時間〉

保護者も、展示室へ。こどもたちと同じように、グループで鑑賞した後は、「つぶやきシート」を片手に、展示室をまわります。親子で同じ展覧会、同じ作品を見ていても、“発見”は異なります。その違いを帰宅後に話すのも、また楽しいものです。

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〈事後学習に向けて〉

あっという間に、終了時間。ASRに戻ってきたこどもたちに、『ミュージアム・スタート・パック』が渡されました。

「ミュージアム・スタート・パック」は、こどもたちがミュージアムを楽しく活用するためのスターター・キットです。「ビビハドトカダブック」というガイドブックや「冒險ノート」などのアイテムが入っています。詳しくはこちら

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「今日は楽しかったかな? 上野公園やミュージアムをこれからも楽しんでほしいと思ってお配りしているのが『ミュージアム・スタート・パック』です」と鈴木さん。

最後に、「Museum Start あいうえの」のコンセプト・ムービーを鑑賞し、終了です。

「ぜひ、また上野公園に来てくださいね。とびラーさんと一緒に待っています!」

 

鶴川第三小学校は、今回が初参加。申し込みをされた先生に、不安はなかったのでしょうか。

「(美術館との事前)打ち合わせでの説明はわかりやすく、その後は主にメールでのやりとりでしたが、問題なく準備することができました」というのは、鶴川第三小の大橋千晶先生。

こどもたちはとても楽しみにしていて、当日はいつも遅刻してくる子も早く学校に来ていたそう。2時間ほどかかる移動時間も、貸切バス(無料送迎バスを利用)だったこともあり、こどもたちにとっては楽しい時間になったようです。

参加後は、図工の時間に作家・伊庭靖子さんや、とびラーへの手紙を書いたり、展示作品に似たモチーフを用いてデッサンをしてみたりといった事後学習も行いました。

「美術館に行ったことがない子も多かったので、グルーフで話したり、一人でじっくり鑑賞したり、貴重な体験になりました。上野公園や芸術文化への興味も増したと思います」と大橋先生は話します。

 

「スペシャル・マンデー・コース」では、こどもたちは小グループに分かれ、活動します。

少人数になり、さらにとびラーが各グループに加わることで、話しやすい場をつくっていきます。また、展示室で過ごす時間も、展示室に慣れる/グループで見る/ひとりで見るといった構成にすることで、美術館が初めての子も楽しめるようプログラムをデザインしています。

こどもたちのミュージアム・デビューが「また来たい!」と思えるものになるように。そして、それぞれの子が作品と出会い、発見を持ち帰り、自分の生活につなげていくことができるように。今日も、スタッフやとびラーは心を込めて、準備をしています。

 


 

 

執筆|井尻貴子

編集|Museum Start あいうえの運営チーム

<井尻貴子さんのプロフィール>
早稲田大学第一文学部(美術史)卒業、大阪大学大学院文学研究科(臨床哲学)博士前期課程修了。財団法人たんぽぽの家、公益財団法人東京都歴史文化財団東京文化発信プロジェクト室、NPO多様性と境界に関する対話と表現の研究所事務局長等を経て、現在はフリーランスでアート、哲学に関わるプロジェクト等の企画、運営、コーディネート、記録編集執筆などを行う。NPO法人こども哲学おとな哲学アーダコーダ理事。


「あいうえの」は、すべてのこどもたちの、ミュージアム・デビューを応援するプログラム。たくさんの不思議に出会い、自分の中の“なぜ”を他の人と共有することで、世界が広がっていく!それは、どんな子にとっても大きな経験となるはず。あなたもぜひ、あいうえのへ!

プログラム: スペシャル・マンデー・コース |
投稿日: 2019年9月30日