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2019年度 スペシャル・マンデー・コース

スペシャル・マンデー・コース@コートールド美術館展 魅惑の印象派
都立石神井特別支援学校(2019.11.25)

「おはようございます!」

東京都美術館の入り口。入ってくる生徒たちを、アート・コミュニケータ(愛称:とびラー)たちが出迎えます。

 

この日は、学校向けプログラム「スペシャル・マンデー・コース」の日。休室日(月曜日)の東京都美術館を舞台に、特別な鑑賞授業が行われます。

1時間半ほどのバスでの移動を経て、到着したのは、石神井特別支援学校のみなさん(中学2年生26名、引率11名の計37名)。そこに、プログラムの伴走役を担う11 名のアート・コミュニケータ(以下”とびラー”)と、スタッフ3名が加わります。

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まずは、アートスタディルーム(ASR)へと向かいます。着いたら、グループごとに分かれて席に着きます。今日は、生徒3人〜8人ごとに、全部で5グループに分かれて活動します。

全員座ったところで、引率の先生が前に立ちました。

「挨拶をして、始めたいと思います。これから美術館見学を始めます。よろしくお願いします!」

 

「石神井特別支援学校のみなさん、おはようございます」。

登場したのは、東京藝術大学美術学部特任助手/Museum Start あいうえのプログラム・オフィサーの、鈴木智香子さん。「おはようございます!」と生徒たちが答えます。さっそく、プログラムが始まりました。

 

「最初に、今日の活動を説明します」と智香子さん。

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「今、みなさんがいるのは、東京都美術館。今日はここで、お気に入りの作品をひとつ見つけましょう!」

続いて、展覧会の説明が始まりました。

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「今日見に行くのは、『コートールド美術館展 魅惑の印象派』。コートールドっていうのは、実は、人の名前です。じゃん!この人です。」

コートールド美術館展 魅惑の印象派』は、実業家サミュエル・コートールドが収集した作品を核に設立された、コートールド美術館(ロンドン)のコレクションから、印象派・ポスト印象派の作品を紹介するもの。

 

「今日、みなさんと一緒に活動するのは、とびラーさん。美術館の楽しみ方を知っている人たちです。各グループにとびラーさんが2人〜3人入りますので、ぜひ、いろいろ話してみてくださいね。では、展示を見に行く準備を始めましょう!」

鈴木さんの説明が終わり、グループごとに自己紹介が始まりました。

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次に取り出されたのは、「冒険ノート」と、プリントされた作品、ノリや鉛筆。

今回、生徒のみなさんは、学校での事前学習で一人ずつ「見たい作品」を選んできました。ここでは、その選んできた作品を改めて確認し、冒険ノートに貼ります。

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終わったグループから、ゆっくりと展示室へ移動します。

展示室の前で、<4つのお約束:(触らない、話すときは小さな声で、ゆっくり歩く、メモするときは鉛筆で>を確認したら、いよいよ展示室の中へ!

 

【展示室で】

 

「みんな、待ちきれない感じだね。展示室ってどんなところかな?まずは散歩してみるよ。じゃあ、ゆっくり行こうか。」とびラーが話しかけます。

最初の展示室。1枚の絵の前で、足を止めた生徒がいました。「どう、この絵?」とびラーが声をかけました。

「木、葉っぱ」「湖」「そうだね」ちょっとずつ言葉を交わしたり、立ち止まったりしながら進んでいきます。

 

展示室に慣れてきたら、さらに小グループに分かれ、それぞれが選んできた作品や、気になった作品のところへ向かいます。

「みんなが選んだのあるかな?あったら教えて」ととびラー。

「あった、あった」「本物があったね」とこたえる生徒。

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冒険ノートを手に、見比べています。

「どう?」と先生。「大きい」と生徒。「色は?」「ちょっと違う、白っぽい」。

 

また別の作品の前で、「あったよー」と友達を呼ぶ生徒がいます。

みんなで並び、じっと作品を見つめます。

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「何でこの絵を選んだの?」と尋ねるとびラーに「かわいい」と答える生徒。

「何が可愛い?」「お姉さんの踊り。」

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作品の細部が見にくい時は、部分を拡大したツールを使ってみたり。

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「つぶやきシート」を使ってみたり。

「つぶやきシート」は、作品を見て気づいたことや、感じたことなどを書くシート。
「作品を見て、素敵だなーと思うこと、書いてみて」というとびラーの言葉を受け、さっそく、書き始めました。

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それぞれのペースで、過ごします。

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展示室での時間は終わりとなり、ASRへ。

 

【ASRで】

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展示室から戻り、他のグループを待つとびラーと生徒。自然とおしゃべりも弾みます。

生徒たち全員がが揃ったのを確認して、鈴木さんが声をかけました。

「美術館、展示室はどうでしたか?」

「楽しかった」「トランプで遊んでるのが見つけられた!」

「楽しんでくれてよかったです」と鈴木さん。

 

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「今日楽しかった体験を、ぜひおうちの人にも話してくださいね。それから、今日の冒険の道具もまた使って、楽しんでください。また来てくださいね。とびラーさんと一緒に待っています。」

グループごとに、とびラーさんと挨拶して、解散。「ありがとうございました!」

 

【活動を振り返って】

 

当日参加したとびラーの一人は、こう言います。

「石神井特別支援学校の皆さんは、往復180分もかけてよく来てくれたと思います。先生方の前向きな気持ち。生徒のみなさんを、もしかして一生来ることがないかもしれない、美術館へよくぞ連れてきてくれたなーと、その思いが嬉しくて仕方ありません。ここでは点の経験だったかもしれませんが、これからも社会へ活動の場を広げていってほしいです。」

 

石神井特別支援学校に通うこどもたちの中には、慣れない移動や、人が多い環境が負担になり、なかなか遠出ができない子もいます。学校の活動だから、休室日を利用できるから、無料送迎バスが利用できるからこそ、来館が可能になる子もいます。

 

先のとびラーは続けます。
「生徒さんたちは、結構絵を見てくれました。単語で「きれい」「黄色」「ゴッホ」「僕はねー」などと言いつつ、作品を見てくれました。特別支援学校にはこれからもぜひ来てほしいし、とびラーも、もっとスキルをUPさせてお迎えできたらなと思いました。」

 

今回は、聴覚障害を持つ生徒も含めて発話でのコミュニケーションが難しい生徒など、多様な特性を持つ生徒たちが通う学校を受け入れました。

どうしたら、生徒のみなさん一人一人にとって充実した時間を過ごしてもらえるか、とびラーやスタッフも検討を重ねてきたと言います。

例えば、こうした<支援ツール>を用いることも、その中で発案されました。

活動用イラスト 鑑賞用イラスト

 

スペシャル・マンデー・コース=「本物の作品と出会い、対話する鑑賞プログラム」というと、おしゃべりが好きな子、話すのが得意な子じゃないと楽しめないのではないか、と心配する方もいるかもしれませんが、そんなことはありません。

 

“世界にはこんな場所もあるよ、美術館はこんなところだよ、こんな作品があるよ。”

大切にしているのは、プログラムを通して、こどもたちがたくさんのものと出会い、さまざまなことを感じること。そしてその体験が、またそれぞれの日常とつながっていくこと。そうしたことを念頭に置きながら、申し込み校と打ち合わせをし、学校や学年、こどもたちにあったプログラムを提案しています。

ぜひいろいろな学校に利用してほしい。とびラーもスタッフも、待っています。

 

 


 

執筆|井尻貴子

編集|Museum Start あいうえの運営チーム

<井尻貴子さんのプロフィール>
早稲田大学第一文学部(美術史)卒業、大阪大学大学院文学研究科(臨床哲学)博士前期課程修了。財団法人たんぽぽの家、公益財団法人東京都歴史文化財団東京文化発信プロジェクト室、NPO多様性と境界に関する対話と表現の研究所事務局長等を経て、現在はフリーランスでアート、哲学に関わるプロジェクト等の企画、運営、コーディネート、記録編集執筆などを行う。NPO法人こども哲学おとな哲学アーダコーダ理事。


「あいうえの」は、すべてのこどもたちの、ミュージアム・デビューを応援するプログラム。たくさんの不思議に出会い、自分の中の“なぜ”を他の人と共有することで、世界が広がっていく!それは、どんな子にとっても大きな経験となるはず。あなたもぜひ、あいうえのへ!

 

 

 

 

プログラム: スペシャル・マンデー・コース |
投稿日: 2019年11月25日