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2019年度 スペシャル・マンデー・コース

スペシャル・マンデー・コース@コートールド美術館展 魅惑の印象派
江東区立八名川小学校5年(2019.11.25)

美術館のロビーに並べられた、小さな椅子。その傍らで、こどもたちの到着を待っているアート・コミュニケータ(愛称:とびラー)たち。

今日は、学校向けプログラム「スペシャル・マンデー・コース」の日。

休室日(月曜日)の東京都美術館を舞台に、特別な授業が行われます。

 

「こんにちは!」やってきたのは、江東区立八名川小学校(以下、八名川小学校)の、小学5年生62名、保護者8名、引率5名の計75名。そこに、プログラムの伴走役を担うとびラー25名と、スタッフ6名が加わります。

 

「みなさん、こんにちは。ようこそ東京都美術館にいらっしゃいました!」

登場したのは、東京都美術館 学芸員アート・コミュニケーション係の河野佑美さん。

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「今日は、『コートールド美術館展 魅惑の印象派』を鑑賞します。」

展覧会の説明が始まりました。「コートールドって何かわかる? 実は人の名前なんです。」

今回の展覧会は、ロンドンにあるコートールド美術館のコレクションから、印象派・ポスト印象派の作品を紹介するもの。ファン・ゴッホやルノワール、マネといった著名な作家の作品が出展されていることもあり、開館日は混雑する展示室ですが、この日の午後はなんと八名川小学校の貸し切り!

「座ってみてもいい。立ってみてもいい。ぜひ、ゆっくりみてくださいね。」と河野さん。

展示室での約束を確認したら、活動スタートです。

 

ゆったりとした環境で、じっくり鑑賞できるよう、こどもたちは4人〜5人のグループに分かれます。また、各グループにとびラーが1人〜2人加わります。

「とびラーさんは、美術館を楽しむ達人。ぜひ一緒に、作品について、たくさんお話ししてくださいね。」

 

「こんにちは。」グループごとに、自己紹介が始まりました。

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今日の活動は、次の3つのステップで進みます。

1、空間に慣れる時間

2、グループで鑑賞する時間

3、一人で鑑賞する時間

 

【展示室へ!】

 

「ここが、コートールド美術館!?」展示室の入り口で、一人の子が声をあげました。壁いっぱいに大きく、コートールド美術館の写真が広がっています。

「中に入っていくよ」と、とびラー。

「おしゃれ!」また別の子が、言いました。壁の、格子窓のような部分に目を留めたようです。「会場のデザインもすごいね。」
今回の展示では、壁の一部が窓のようになっていたり、壁色が空間ごとに異なったりと、様々な工夫がされています。

「あ、これ、トランプしているのかな。」ポール・セザンヌ《カード遊びをする人々》の前で、足を止める子。

「いいなと思う作品があったら、覚えておいてね。あとで一人の時間にじっくり見られるよ。」

とびラーが声をかけます。

 

ぐるっと展示室を一周しながら、「今いるのは地下1階。展示室は、1階と2階もあるよ。」「降りるときは、こちらのエスカレーターを使うよ。」と、とびラーは館内の移動経路についても説明します。こどもたちが一人の時間に不安にならないよう、丁寧に。そうして空間に慣れる時間を過ごしたら、次はグループで鑑賞する時間です。

 

【グループで鑑賞する時間】

 

あるグループが、《カード遊びをする人々》の前で、鑑賞をはじめました。

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ポール・セザンヌ《カード遊びをする人々》1892-96年頃 油彩、カンヴァス

© Courtauld Gallery (The Samuel Courtauld Trust)

 

「最初に、喋らないでみてみよう」と、とびラー。頷く子どもたち。

しばらくして、とびラーが声をかけました。

「何か気づいたことがあったら、話してみて」

「テーブルが、傾いているみたい」と、一人の子。

「後ろが鏡みたいになって、人が写っている」と、また別の子。

「ガラスっぽいところが、模様みたいにも見えるし、外の風景が写っているようにも見える」「あー、なるほど」他の子も応じます。

 

ポール・ゴーガン《テ・レオリア》の前で、座っているグループもいます。

ポール・ゴーガン《テ・レリオア》1897年 油彩・カンヴァス

ポール・ゴーガン《テ・レリオア》1897年 油彩・カンヴァス

© Courtauld Gallery (The Samuel Courtauld Trust)

 

 

「この絵の中に、何か発見した人はいる?」

とびラーの言葉に、「はい」と一人の子が手を挙げました。

「空がちょっと夕方みたい」その発言を受け、「あそこも絵みたい」と別の子が言いました。「あー、あそこも絵。なんでそう思ったの?」ととびラー。

「なんか、窓の外が、すぐ外みたいになっているから。」

最初に発言した子は、背景の一部を窓と捉えていましたが、その子は同じ箇所を絵だと捉えていたようです。

「私は景色だと思った。山が赤くなっているから」他の子も話し出しました。

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他のグループも、それぞれのペースで鑑賞しています。

 

【保護者の時間】

 

今回、活動に参加された保護者は8名。一緒にバスに乗り、やってきました。東京都美術館に着いてからは、こどもたちとは別行動になります。

こどもたちが展示室へ出発したあと、ロビーにて、「あいうえの」のパンフレットを片手に、スタッフよりプログラムについて説明します。

 

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「Museum Start あいうえの」は、「ミュージアムでの特別な体験をすべてのこどもたちに届けたい。」という思いのもと、上野公園に集まる9つの文化施設が連携して行っているプロジェクト。「スペシャル・マンデー・コース」のような学校向けプログラムのほかに、ファミリー向けプログラムも多数実施しています。

 

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その特徴のひとつが、対話を通した学びのプロセス。今回は保護者のみなさんも、グループでの対話型鑑賞を体験することができました。

 

 

【一人で鑑賞する時間】

 

グループでの鑑賞を体験したこどもたち。次は、一人で鑑賞する時間です。

ここで登場したのが「つぶやきシート」。気づいたことや感じたことなどをメモするためのシートです。

「いってらっしゃい」とびラーに見送られ、館内図を片手に出発したこどもたち。

八名川小学校は予定よりも早く到着し、活動時間を長くとることができたため、一人で鑑賞する時間は、なんと、50分!

どんなふうに過ごすのでしょうか?

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さっと目的の作品に向かった子。静かに鉛筆を走らせています。

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たまたま、同じ作品の前に立った子たち。一言二言言葉を交わし、またそれぞれシートに向かい出しました。

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少し書いては、作品を見て、またシートに書いて、と繰り返している子もいます。

こんなに長い時間を展示室で過ごすのは初めてという子も、少なくありません。

「途中で飽きてしまうんじゃないか」と心配する先生や保護者の方もいらっしゃいますが、こどもたちにとっては案外、あっという間のようです。それに、もし飽きちゃったり、疲れちゃったりしたときは、途中で休めばいいんです。

 

 

【鑑賞を終えて】

 

ロビーに戻ってきたこどもたち。椅子の上には、「ミュージアム・スタート・パック」が置かれています。

*「ミュージアム・スタート・パック」は、こどもたちがミュージアムを楽しく活用するためのスターター・キットです。「ビビハドトカダブック」というガイドブックや「冒險ノート」などのアイテムが入っています。詳しくはこちら

 

「みなさん、お帰りなさい!」と河野さん。

「作品をゆっくり見られたかな?今日はみなさんが早く到着したので、一人で見る時間を予定よりも長くとることができました。実際にみてどうだった?」

「迫力があった!」「いろんな描き方があった!」口々に答えてくれました。 

「今日は、みなさんにお渡ししたいものがあります。『ミュージアム・スタート・パック』です。」

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「ミュージアム・スタート・パック」の中に入っているバインダーには、黄色いノート(ガイドブック)と青いノート(冒険ノート)が挟まっています。

「このガイドブックには、上野公園の地図が載っています。」

さっそく、地図を確認するこどもたち。

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「私たちは、みんなに、いろいろな美術館や博物館を活用できる人になってほしいと思っています。この『ミュージアム・スタート・パック』を持って、またぜひ、上野公園にあるミュージアムに出かけてみてね!」

あいうえののこと、各館で貰えるバッジのこと、秘密の呪文もお伝えして、プログラムは終了です。

「今日の活動は、これでおしまい。学校まで、気をつけて帰ってくださいね。」と河野さん。

「さようなら!」とびラーも、手を振って、こどもたちを見送ります。

「バイバイ!またね!」ロビーの窓越しに、手を振り返してくれた子もいました。

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実は、とびラーやスタッフの活動は、お見送りして終了、ではありません。重要視しているのが、活動後の振り返りです。プログラムに関わった人が集まり、こどもたちとの時間を振り返り、気づいたことを出し合っていきます。

内容は適切だったか、時間配分はどうだったかといったプログラムのことはもちろん、作品のこと、こどもたちの様子などについて、よかった点を共有し、改善すべき点はすぐに改善策を検討し、また次のプログラムに生かしていきます。

 

ここにも、正解はありません。多様なこどもたち。そのこどもたち一人一人のミュージアム体験をより良いものにするには、どうすればよいか。常に試行錯誤しながら、そのときの最善を尽くしています。

 


 

 

執筆|井尻貴子

編集|Museum Start あいうえの運営チーム

 

<井尻貴子さんのプロフィール>
早稲田大学第一文学部(美術史)卒業、大阪大学大学院文学研究科(臨床哲学)博士前期課程修了。財団法人たんぽぽの家、公益財団法人東京都歴史文化財団東京文化発信プロジェクト室、NPO多様性と境界に関する対話と表現の研究所事務局長等を経て、現在はフリーランスでアート、哲学に関わるプロジェクト等の企画、運営、コーディネート、記録編集執筆などを行う。NPO法人こども哲学おとな哲学アーダコーダ理事。


「あいうえの」は、すべてのこどもたちの、ミュージアム・デビューを応援するプログラム。たくさんの不思議に出会い、自分の中の“なぜ”を他の人と共有することで、世界が広がっていく!それは、どんな子にとっても大きな経験となるはず。あなたもぜひ、あいうえのへ!

 

 

 

 

 

プログラム: スペシャル・マンデー・コース |
投稿日: 2019年11月25日