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2019年度 うえのウェルカムコース

うえのウェルカムコース@子どもへのまなざし展(2019.12.3)

東京都立鹿本学園 肢体不自由教育部門高等部

「卒業学年の高3の生徒が社会に巣立つにあたり、日常と違う体験の積み重ねが豊かな社会生活にとって大きな糧になることを生徒に伝えています。今回のプロジェクトを通して芸術に接することを実体験し、希望をもってこれからの生活を送ってほしいという願いから参加しました。」(先生へのアンケートより)

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12月3日(火)、学校向けプログラム「うえのウェルカムコース」に、東京都立鹿本学園の高校3年生が参加しました。

鹿本学園は、肢体不自由教育部門(小・中・高)と知的障害教育部門(小・中)の2部門5学部が併置された特別支援学校です。年度末に卒業を控えた学校生活最後の社会科見学として、肢体不自由教育部門の生徒9名と引率教員13名が東京都美術館(以下、都美)に来館し、開催中の展覧会 上野アーティストプロジェクト2019「子どもへのまなざし」(〜2020年1月5日まで)を鑑賞しました。

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冬の寒さを感じさせない温かな日差しのもと、生徒たちを乗せた2台の大型バスが都美に到着しました。続々とバスを降車した生徒たちは、北口から入館し一直線に正門へと向かいます。

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普段はバスなどの発着場所との関係で閉鎖している北口ですが、この日は特別に解放しました。車椅子での活動がスムーズにできるように、館内の導線や、使用するエレベーターなど、先生や館内各所と細かく相談をして生徒たちを迎えます。

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「おはようございます、都美にようこそ!」

正門で生徒たちを迎えたのは、9名のアート・コミュニケータ(以下、とびラー)。この日は生徒ととびラーが1対1のペアになり展覧会を楽しみます。

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集合写真と全体での挨拶を終えたら、ペアでの活動をスタート。生徒の状態に合わせて介助の先生(支援員)も加わり、車椅子の操作や体調など様子をみます。それぞれ自己紹介をして、展示室へ出発です。

「〇〇さん、初めまして。とびラーの三輪です」

ペアとなる生徒に声をかけたのは、今年2年目となるとびラーの三輪恭一さん。普段は、大学で警備員の仕事をしている三輪さんは、この日のために仕事の休みを取り、プログラムに参加しました。
「肢体不自由の生徒さんと作品を見るのは初めてのこと。どうしたら作品を身近に感じてもらえるか自分なりに考えてみまして」そう言って取り出したのはスマートフォン。撮影OKの作品を自ら撮影して用意したオリジナルツールです。

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「車椅子からだと見えにくい位置もあるだろうし、これなら〇〇さんが気に入った作品を、手元で見られるかなと思って準備してみました」

この日の活動に参加した9名のとびラーの、“肢体不自由”の方と関わった経験はそれぞれ。養護学校の教師だった人もいれば、初めて接する人もいます。「こんな時はどうしたらいいのかな?」と準備の段階からお互いの経験を共有しあいながら、よりよい場づくりを目指します

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参加した生徒たちは障害の度合いにより、コミュニケーションの方法もそれぞれです。
先生と密に連携しながら、生徒一人一人のことを事前にヒアリング。それぞれの好きなもの・興味のあること・不快に思うこと・普段のコミュニケーション手段など、丁寧に共有いただきました。これらの情報を元に、とびラーはペアとなる生徒のことをイメージし、当日を迎えます。

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◯ 相手のことを知る
◯ 展覧会・作品を良く見る・知る
◯ エレベーターやトイレなど館内の施設を再確認する

生徒たちが良い形でアート(作品)と出会えるように、とびラーそれぞれが寄り添う方法を考えます。当たり前のように思えることでも、丁寧に確認し準備をすることが、当日の安心した活動につながります。

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展示室では、生徒の興味に寄り添いながら、それぞれのペースで作品鑑賞を楽しみます。

「好みの作品に出会った時、生徒さんの表情がパッと明るくなったんです。生徒さんの気持ちを感じた瞬間にとても嬉しくなりました」

とびラーと生徒は、発話に限らず、表情や目線、指の動きなどでコミュニケーションをとりながら、作品に向き合います。

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「赤が好き、お花も好き」
「お母さんみたい」

描かれているものを1つ1つ指差しながら作品から気がついたことを言葉にして伝える姿がありました。とびラーは言葉を丁寧に受け止め、共感します。教える・教わる、の関係ではないとびラーとの関わり方に、初めは緊張した様子だった生徒たちも、次第にとびラーの存在を受け入れているようでした。

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障害のある生徒にとって他者とのコミュニケーションの場が限られがちです。芸術を介してコミュニケーションが取れたことは大変有意義でした。(先生へのアンケートより)

「あいうえの」で活動するとびラーは、親でもない、学校の先生でもない、フラットな立場の大人として、ミュージアムを舞台とした社会とこどもたちの関わりに伴走をしています。社会的背景や障害の有無に関わらず、すべてのこどもたちがミュージアムで安心して過ごせるよう、こどもたち一人一人に寄り添いながら日々の活動をしています。

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「これまでは休日などに美術館へ行くことはなかったが、今回、色々な絵を見たことで喜びを感じた。」後日、生徒の言葉が届きました。

ミュージアムで豊かな社会体験を、という思いから実現した今回のプログラム。

「車椅子から見たときに、作品はどんな風に見えるかな?」
「手元で見られる画像を用意してみよう」

 相手のことを想像し、丁寧な準備を経て、生徒たちを迎えることができました。とびラーや作品との出会いが、生徒たちの世界を広げることになったのではないでしょうか。

高校を卒業し社会に出て行く生徒たち。その社会の中の“誰でも安心して来られる場所”のひとつとして、ミュージアムへ再び来てくれることを心から楽しみにしています。

 


 

執筆|山﨑日希(Museum Start あいうえの プログラム・オフィサー)

プログラム: うえのウェルカムコース |
投稿日: 2019年12月3日