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2019年度 ミュージアム・トリップ

ミュージアム・トリップ:聖フランシスコ子供寮(2020.2.2)

2020年2月2日(日)、Museum Start あいうえのダイバーシティ・プログラム「ミュージアム・トリップ」が東京都美術館で行われました。

「ミュージアム・トリップ」は、さまざまな状況にあるこどもたちをミュージアムに招待するプログラムです。こどもたちの学習を支援している団体や児童養護施設、海外にルーツを持つこどもたちを支援する団体など、各分野の専門機関と連携して実施しています。本年度4回目の実施となる今回は、都内にある児童養護施設「聖フランシスコ子供寮」と連携をしました。

 

よく晴れた日曜日。

上野駅前で、こどもたちの到着を待つおとなたちがいます。今日はミュージアム・トリップの日。参加者をアート・コミュニケータ(愛称とびラー)たちが待っているのです。

 

やがて、改札を出てきたこどもたち。

「おはよう!」

「おはようございます!」

挨拶を交わし、活動場所である東京都美術館へと一緒に向かいます。この日やってきたのは、聖フランシスコ子供寮で暮らし、幼稚園〜高校に通うこどもたち5名と、引率者3名の皆さん。そこに、12名のとびラーと、2名のスタッフが加わります。

 

<ようこそ!>

「今、みんながいるここは、東京都美術館。“とび”と呼ばれています。」

到着した東京都美術館アートスタディルーム(以下ASR)で、説明が始まりました。話しているのは、Museum Start あいうえのプログラム・オフィサーの渡邊祐子さん。

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「今日は、ミュージアムの楽しみ方をよく知るとびラーさんと一緒に、ミュージアムを冒険したいと思います! 見に行くのは、『東京藝術大学卒業・修了作品展』です。」

こんな作品を見に行きます!と、いくつか展示作品の写真が投影されました。

それを見たこどもたち。「こわいー」「おもしろそうー」と、さっそくそれぞれの感想を口にしています。

 

「こわいかんじがするかな?」と渡邊さん。

「実は、今日は特別なことがあります。実際に作品を作った人が、展示室でみんなのことを待っています。ぜひ、感じたことや、いろんなことをお話ししてみてね。」

 

今日の活動は、次の4つのステップで進みます。

  1. グループで作品を見る
  2. 作品をつくった藝大生とお話をする。
  3. ひとりで気になる作品をみる
  4. 冒険ノートを書いて、みんなで発表

 

<アイスブレイク>

説明が終わり、2つのグループに分かれて自己紹介が始まりました。

使うのは、アートカード(展示作品を印刷したカード)。とびラーがテーブルに並べると、

「わあ!」

「これこれ、このおばさん気になる!」

「これ何?」

と反応するこどもたち。とびラーも交え、一人一つずつ、「気になる作品」とその理由を話しながら自己紹介をしていきます。

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みんな、他の子が選んだカードにも興味津々。展覧会への期待が高まったところで、展示室へ出発です。

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聖フランシスコ子供寮のシスターをはじめ引率の大人も、こどもたちとは別にグループを作り、とびラーと一緒に活動します。

 

<展示室へ出発!>

展示室に入る前に、ルール(走らない、作品に触らない、話すときは静かな声で、メモするときは鉛筆で)を確認したら、さっそく中へ。エスカレーターを降りると、展示室が見えてきます。

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<作品を見る、作家に出会う>

「うわ!」

「あ、あそこにあった!」

アートカードの作品を見つけて声をあげる子も。

 

さらにエスカレーターを降り、展示室へと向かいます。

 

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展示室の一角。こどもたちが集まりました。《岸水寄せる》竹野優美さんの作品です。

「さっき見たアートカードとどう違う?」とびラーの問いかけに、「目が本物に見える」と一人の子が答えました。「そうだね、他の子はどうかな?」ぽそぽそっと話す子。元気よく発言する子。一人一人の言葉を、とびラーが頷きながら聞いています。

「作家の竹野さんにも、お話を聞いてみましょう」

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竹野さんが話し始めました。「これは、私のおばあちゃんを表わした作品。木でできています。みんな、触って大丈夫です。」

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そうっと触る子。

「どうやって作ったんだろう?」それを聞いた竹野さんが「木をのみでたたいて、彫って作ったんだよ」と答えます。

「色は塗ったの?」「うん。これは絵の具で塗ったんだよ。」

「金はどうやって塗ったの?」「接着剤を使って貼ったの。これは、絵の具じゃなくて、本物の金箔なんだよ。」作品を前に、次々と質問する子たち。メモを取っている子もいます。

 

次に、もう一つ、向かいに展示された竹野さんの作品を鑑賞することになりました。

タイトルは、《道祖神の如く》(どうそじん の ごとく)。

 

「こっちはおじいちゃんだ!」

「座っても大丈夫だよ」と竹野さん。

座ってみるこどもたち。「あったかい? 冷たい?」とびラーが聞くと「冷たい」。

「こっちは、石で作りました。これで作ったんだよ」「トンカチだ!」竹野さんが、道具をこどもたちに手渡してくれました。「重たい!」

 

こどもたちの質問は続きます。

「作るのにどのくらいかかったの?」「1年半くらいかな。」

「おじいさんって何歳なんですか?」「モデルはいなくて。イメージで作ったので、見る人が決めて大丈夫です」。

じっくり見て、触って、話をして「ありがとうございました!」。

 

こどもたちが次に向かったのは、日本画の展示室。

そこでは、杉山花さんが待っていました。

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杉山花さん《月と星》

「これは、水面もイメージしているんだけど、自分がお母さんのお腹の中にいた時のエコー写真も重ね合わせて描きました」と杉山さん。

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「星みたいなのが見える」という子に、「そうそう」とうなずきます。

「月と星。下には、鹿を描いています」それを受け、「鹿に見えない」という子も。「ツノだけなんだよ」「なんで全部描かなかったの?」こどもたちの質問に、杉山さんも真剣に答えます。

 

<それぞれ、作品を見にいく>

最後は、ひとりで作品を見る時間。それぞれ、とびラーと一緒に気になる作品を見にいきます。

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とびラーと話しながら見たり、身体を使ってみたり、気づいたことをメモしたり。思い思いの時間を過ごしたら、ASRへ。

 

<冒険ノートを作る、みんなで見合う>

ASRに戻ったこどもたち。一息ついたら、冒険ノート作りの時間です。

今日見たもの、感じたこと、発見したことなどを書き留め、それぞれのノートを作ります。

写真を手に取り、「おじいちゃんの方が優しそう」という子に、とびラーが尋ねます。「どうしてそう思ったの?」「かお!」。書きながらまた話も弾みます。

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「完成していなくても大丈夫。今できているところまでを、みんなで見せ合いましょう」。

終了時間が近づき、渡邊さんが声をかけました。

 

一つのテーブルにそれぞれのノートを広げ、集まりました。

「すごいいいね!」とびラーの声が弾んでいます。「いっぱい描いたね。」「そっちも見たいな。」こどもたちも、お互いのノートを真剣に見ています。

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他にもたくさん、素敵な冒険ノートが出来上がりました。

 

「このノートは、これからも使ってね」と渡邊さん。

あいうえののコンセプトムービーを見て、今日の活動は終了です。

「今日はどうだった?」渡邊さんの言葉に、「楽しかった〜!」と答えるこどもたち。

「それはよかった!今日は、私たちも、みんなに会えてとても嬉しかったです。またいつでも遊びに来てね。みんなを待っています。」

「今日は1日ありがとうございました!」

 

<振り返って>

この日行われた「ミュージアム・トリップ」は、ミュージアムでの体験を通し、こどもたちの多様性を尊重し、その価値を育むプログラムです。

引率者の一人は、活動をこう振り返ります。「作品の作者さんのお話を聴ける機会はめったにないことだと思います。こどもたちの質問にも優しくこたえてくださり感謝です。」

ミュージアムでは、普段の生活の中ではなかなか出会う機会のない作品や人に触れ、交流することができます。いろいろな作品がある。いろんな人がいる。いろんな子がいる。いろんな感じ方、考え方がある。そのどれもが尊い。そんなことを、ミュージアムでの体験を通し、感じてもらいたい。プログラムには、そのための工夫が詰まっています。

楽しかった1日が、ここでの出会いや学びが、こどもたちがこれから生きていく毎日に、ほんのちょっとでも彩りを加えることができたならいいな。関わる大人たちはみな、願っています。

 

執筆|ライター 井尻貴子 編集|渡邊祐子(Museum Start あいうえの)

プログラム: ミュージアム・トリップ |
投稿日: 2020年2月2日