Facebook

En

活動ブログ

MENU

2019年度 スペシャル・マンデー・コース

スペシャル・マンデー・コース@伊庭靖子展 まなざしのあわい
足立区立高野小学校(2019.9.30)

9月30日(月)、厳しい残暑の中、今年度2回目となる学校向けプログラム「スペシャル・マンデー・コース」が実施されました。

 

展覧会の休室日に、学校のために特別に開室して行われるこのプログラムは、貸し切り状態でじっくり本物の作品と出会える特別な機会です。この日の午後に参加してくれたのは、2校。そのうちの1校である、足立区立高野小学校の様子をご紹介します。

 

=========================

 

足立区立高野小学校 小学5年生

(生徒45名 引率教員4名 とびラー17名)

 

========================

 

【はじめの挨拶】

 

貸し切りバスで、学校から上野公園に到着したみなさん。

9月末とは思えないほどの暑さの中、上野公園の大噴水前を通って東京都美術館を目指します。

IMG_6564

 

美術館の門をくぐると先生から「もうここから美術館だよ」というアナウンスが。

こどもたちの表情も一気に引き締まります。

 

緊張した面持ちのまま館内に入り、展示室入り口前のホワイエに到着すると、17名のとびラーたちが笑顔で待っていました。

 

とびラーは、美術館の楽しみ方を熟知している大人の人たち。

大学生や会社員、主婦の方など、幅広い層の方が集まっています。

 

この日は、普段から接しているご家庭の保護者でも、学校の先生でもない大人と出会う体験です。

IMG_6577

 

少し緊張もほぐれたところで、東京都美術館 学芸員の河野さんから、これから鑑賞する展覧会「伊庭靖子展―まなざしのあわい」(2019年7月20日~10月9日)の説明や、展示室での約束事のお話がありました。

 

スペシャル・マンデー・コースは

1.来館前に学校で行う事前授業

2.美術館での当日プログラム

3.来館後の事後の授業(学校)

という3つのステップからなっています。

 

鑑賞する展示作品の中から自分の「気になる作品」を一点選んだり、美術館がどういったところなのかや、展示室でのマナーについて学んだり、既に事前授業を受けてきた高野小学校のみなさん。

 

展示室で守ってほしい約束事について河野さんから問われると、元気よく答えてくれました。

IMG_6579

 

 

【展示室散歩】

 

全体での挨拶が終わると、各グループ、5~6人のこどもに2人のとびラーがついて、展示室に向かいます。

 

展示室での活動の流れは以下の通り:

 

1. 展示室散歩(グループみんなで展示室をめぐり、展示室の空間に慣れる時間)

2. グループでお話ししながら作品を見る(グループ全員で同じ作品を2点見ながら、作品に対するそれぞれの考えを共有し合う時間

3. ひとりで見る時間(自分が見たい作品と一対一になって、ひとりきりで向き合う時間

 

いざ展示室へ!となると、こどもたちの気持ちも高まり少し緊張地味でしたが、とびラーの

「じゃあゆっくり深呼吸してみようか。息を吸って~。次ははいて~」

という声かけによって、気持ちを落ち着かせ、いよいよ展示室に入ります。

 IMG_6588

 

「展示室っていきなり作品があるわけじゃないんだ~」

「作品ってこんなに沢山並んでるんだね」

「天井がものすごく高い!」

 

初めて訪れる美術館の展示室に、いたるところからこどもたちの驚きの声が聞こえました。

IMG_6595

 

展示室散歩は、ひとつひとつの作品を頭からじっくり見るのではなく、まずは全フロアをぐるっと巡ります。

 

ゆったりと時間をかけて展示室内を把握することで、普段はあまり気にすることのない壁や照明の使い方など、空間づくりにおける細部の工夫にも気づく大切な時間です。

 

 

【グループ鑑賞】

 

展示室の空間をたっぷり観察した後は、グループで作品について自由に話す時間が始まります。

 

この時、とびラーは作品について説明したり、展示室のガイドをするわけではありません。

フラットな関係性の中、作品を介した対話によって、こどもたちの関心を引き出します。

IMG_6637

 

今日初めて知り合った大人であるとびラーを交えて話すことで、自分とは異なる価値観を発見したり、しっかりと相手の意見を聞くことができるだけでなく、自発的に自分の考えを発話しやすい環境が生まれるのです。

 

グループでの対話では、

「こんなに大きかったんだ!」

「想像してたより作品の存在感がある!」

「写真みたいだと思っていたけど近くで見るとそうでもないんだなぁ」

という声が聞こえました。

IMG_6614

 

事前授業の中で、アートカードやチラシ、ポスターを通して既に出会っている作品でも、実際に本物と対峙すると、印象が随分違った様子。

 

本物を目の前にしたからこその気付きが沢山あったようです。

 

 

【ひとりの時間】

 

グループで対話しながら作品を鑑賞した後は、ひとりになって、作品と一対一で向き合う時間。

 

展示室会場のマップと自分の気付きが自由に書ける「つぶやきシート」をはさんだボードを持って、それぞれが選んだ作品のもとへ向かいます。

IMG_6661

 

貸し切り状態のしんとした展示室の中、時間をかけて作品と自分だけの世界に浸ることで、こどもたちはより内省的に鑑賞する時間を経験します。

IMG_6647

 

普段の美術館ではなかなかできない経験ですが、先にグループ鑑賞時間の中で作品に対する自らの考えを言語化する場を経験したからこそ、ひとりになっても、戸惑うことなく作品との世界に入りこんでいました。

IMG_6666

 

こうして作品と向き合っていると、30分間のひとりの時間はあっという間。

 

展示室での時間も残り5分となった頃、とびラーから時間の声掛けをすると、

「まだ書き足りない!」というこどもたち。

 

時間ギリギリまで作品の前に座り込み、一生懸命「つぶやきシート」に自分の気付きを記録している姿がとても印象的でした。

 

以下は、実際にこの時間で書いてくれた「つぶやきシート」です。

 

ブログ用つぶやきシート

スケッチをしながら、どの部分に心惹かれたのか、なぜそう感じたのかなど、絵の細部までよく観察しながら沢山の気付きを言葉にしてくれました。

 

 

【おわりの挨拶】

 

展示室での時間が終わり、はじめの挨拶をしたホワイエに戻ってきたこどもたち。

 

1時間前の緊張した面持ちは消え去り、友達に作品の感想を言い合ったり、個別鑑賞での気付きをとびラーに話したり・・・それぞれ充実した時間を過ごすことができたようでした。

 

 

「今日はたっぷりゆったり作品を見られましたか?」「お気に入りの1枚は見つかりましたか?」

 

おわりの挨拶の中でそう問いかけられると、みなさん思い思いに元気よく答えてくれました。

 

 

そんな素敵な体験をしたこどもたちに、「ミュージアム・スタートあいうえの」から最後のプレゼントが。

それは、これから何度でも上野公園にあるミュージアムを楽しむことが出来るようになる特別な冒険の道具「ミュージアム・スタート・パック」。

 

東京都美術館プログラム・オフィサーの柿澤より、活用方法を紹介しました。

IMG_6670

 

キラキラシールのついた緑のバインダーには、上野公園にある9つのミュージアムの楽しみ方がのっている「ビビハドトカダブック」と、冒険の記録ができる「冒険ノート」が納められています。

それがちょうど入る、布製ポシェットもセットになっているこのパックは、まさにミュージアム冒険にぴったりのアイテム。

ポシェットにはちょうど9つのミュージアムのオリジナルバッジをつけることができるスペースもあります。

 

上野公園は、美術のみならず、動物、科学、本、音楽など、多岐にわたる分野の本物や文化財や不思議が集まっている場所。

 

今日のミュージアム・デビューをきっかけに、これから何度でも上野に足を運び、沢山の発見をしてもらえたら…と思いお話ししました。

 

 

【その後:事後学習】

 

東京都美術館での冒険でおわりではない、このスペシャル・マンデー・コース。

学校に戻った後は、事後学習として、この日の振り返りまで行っています。

 

高野小のみなさんは「冒険ノート」を使ってこの日の体験をまとめてくれましたので、ここで少しだけご紹介します。

 

ブログ用2_edited_color

ブログ用1_edited_color

 

展覧会のチラシや「あいうえの」のパンフレットを切り貼りしながら、沢山の気付きを記録に残してくれました。

 

このように、冒険ノートは、自分の「お気に入り」となった作品との出会いを、言葉だけでなくイメージとともに残すことができます。

 

今回の経験をきっかけに、これから自分の興味・関心のあるミュージアムに足を運ぶ中で、沢山の素敵な出会いがみなさんに訪れることを願っています。

 

 


 

柿澤香穂|東京都美術館 アート・コミュニーション係 プログラム・オフィサー

 

 

 

 

 

 

 

プログラム: スペシャル・マンデー・コース |
投稿日: 2019年9月30日