上野公園に集合!
上野へGO! ステップ2リアル(2020.9.13)
ミュージアムの冒険へ!
今年の新しいファミリープログラム「上野でGO!」は、Web会議サービスZoomを使った作品鑑賞と、実際にミュージアムで作品に出会うことを組み合わせた、2ステップのプログラムです。
オンラインとリアルの両方の良いところを組み合わせた「ブレンディット・ラーニング」という新しい学びの形をデザインしています。
いよいよ本物に会いに
9月13日日曜日、午前10時。8月1・2日に実施されたステップ1から約1ヶ月が経ち、いよいよ実際に上野公園にこどもたちが訪れる日がやってきました。集合場所は東京都美術館のアートスタディルーム。出迎えたのはあいうえのスタッフの渡邊祐子さんです。
早速「あいうえのからの指令書(ミッション)を持って、みんなで上野公園へふしぎを探しに出かけましょう!」と、はじまりました。
こどもたち同士は、ステップ1のオンラインでのプログラム以来の再会となり、実際に会うことができてうれしかったり、ちょっと恥ずかしかったり、そしてこれからはじまる冒険にワクワクしている、そんな様子でした。
今日1日こどもたちは上野公園やそこに集まる9つのミュージアムをつぶさに調べるリサーチャー(研究員)になります。
「さて、指令書を開けてみます。何が書かれているかな?」
●あおをさがせ!
配られたミッションカードの中には3種類の「あお」の色チップが貼ってあります。
実はすべてのカードが違う青の組み合わせになっています。
この色チップの青を手掛かりに、作品や資料の中にある「あお」を探しに出かけます。
さらによく見ると、カードには「さがし出したものは何か?」「そこにあるのはどんな『あお』なのか?」という「問い」が添えられています。ただ見つけるのではなく、それがどんなもので、どんな「あお」なのかを、自分の目でじっくり見て、考え感じることもミッションを達成するための大切なポイントです。
「もっと青のいろえんぴつがほしい」
冒険ノート:「ほくさいさんのなみ」LIMONE(小学校1年生)
ここで少しだけ裏話。
ステップ1に続くステップ2のリアルプログラムは実は8月22日にすでに一度行われました。コロナ禍でなかなか集まれない状況が続く中、事前に参加者にツールキットを郵送し、それぞれのファミリーが上野公園のミュージアムに訪れてツールキットを使って参加するという形で実施をしました。
今回の9月13日のミッションを「あおを探せ!」は、実はこの8月22日のプログラムに参加してくれたこどもから投稿された冒険ノートがひとつのきっかけになっています。
その冒険ノートの端に書かれていた言葉は
「もっと青のいろえんぴつがほしい」
東京都美術館に来て本物の葛飾北斎の《神奈川県沖浪裏》を見て、版画の中に豊かなたくさんの青を発見した体験がありありと伝わってきました。
そこで今回のステップ2では「色の豊かさ」をもっとみんなと共有したいという想いを込めて、
ミッションは「あおをさがせ!」に。
こどもたちが「あお」を探すヒントになればと、ASRの壁面ボックスには様々な「あお」の素材を用意しました。
また、上野公園内の各館の資料や、色にまつわる資料も用意し、こどもたちが自由に閲覧できるようにしました。
こどもと家族は準備が整うと、早速上野公園の美術館や博物館、動物園や図書館など思い思いの場所に出かけて行きます。
スタッフは、こどもたちが上野公園で充実した体験をしてくることを期待して「いってらっしゃい!」と見送ります。
・・・そして約2時間後。
上野公園のリサーチを終えて、再び東京都美術館に戻ってきたファミリーを、アート・コミュニケータ:とびラーたちが出迎えます。
どんな作品の中に、どんな「あお」があったのか、観察したことや、発見したことをテーブルごとに共有しました。
とびラーたちは、こどもたちや保護者のそばに寄り添い、「どこで発見をしてきたの?」「それはどんな青だった?」など、声をかけ、気づきや観察を言葉にすることをサポートします。
国立科学博物館で開催されていた企画展「国立公園-その自然には、物語がある-」展に出かけた姉妹は、そこで展示されていた鉱石や蝶などの自然物の中から、それぞれの青色を見つけてきました。
藝大アートプラザという、東京藝術大学出身の作家たちの作品が展示・販売されているギャラリーショップでは、
たくさんのひびの入ったセイジの器に美しい「青」の発見をした冒険ノートもありました。
ミッションカードに貼られていた色チップ10696ににていて・・・青だらけ。
他にも、東京国立博物館の「博物館でアジアの旅 アジアのレジェンド」展では、
ある男の子が展示室で見つけたインドの「クリシュナ像」の肌の色が青いけれど、持っていた色チップに合わない!
と言いながら、一生懸命その青さを思い出そうとしていました。
その後、机の上に用意されたツールボックスを使いながら、観察や発見を「冒険ノート」にまとめます。
その中には、どんな「あお」だったのかをより豊かに表現する手助けツールとして、たくさんの言葉が並んだ「形容詞シール」が用意されています。
シールから「洗練された」という言葉を見つけたこどもがお母さんに問いかけます。
「「洗練された」って、どんな意味?」
「うーん、うーん、ちょっと待って・・・」
「いい意味?」
「いい意味よ。キレイ、みたいな感じかな・・・ちょっと違うかな・・・」
という会話も聞こえてきました。
大人もこどもと一緒に考える、そんな時間になっていることが垣間見られる、このプログラムならではのひとコマでした。
こどもたちは、とびラーや一緒にきた家族とのコミュニケーションを経て、集中して冒険ノートを作成している様子でした。
リアルに誰かに出会う機会が制限されている今だからこそ、こうした物との出会い、人との出会いの意味は、一層大きかったように思います。
出来上がったノートは、その場でスマートフォンから投稿され、Museum Start あいうえののウェブサイトにはたくさんの「あお」の冒険ノートが集まりました。
オンラインとリアルの2つプログラムを組み合わせることで実現した「上野へGO!」。コロナ禍の中でも「Museum Startあいうえの」は、こどもたちのミュージアムデビューを応援し続けます!
【実施概要】
日時: 2020年9月13日(日)午前10時から8組づつ、1日に5回実施
場所: 東京都美術館 アートスタディルーム
進行: 渡邊祐子(Museum Start あいうえのプログラムオフィサー)
河野佑美(東京都美術館 学芸員)
参加者:こどもと保護者37組80名
とびラー:7名
★8月1、2日に開催したオンライン・プログラムの様子はこちら→
執筆|河野佑美(東京都美術館 学芸員)、
渡邊祐子(Museum Start あいうえのプログラムオフィサー)
投稿日: 2020年9月13日