初めての美術館!じっくり観察し発見を伝え合う探検プログラム
足立区立高野小学校5年生(2020.11.9)
気持ちの良い秋晴れのもと、11月9日(月)に、足立区立高野小学校5年生のみなさんが
東京都美術館に来館しました!
来館のきっかけは、一本の電話でした。
コロナ禍において美術館の展覧会もお休みとなってしまった状況の中、
夏休みに入る前に、学校より来館希望の相談がありました。
そこで高野小学校と一緒に考えたのが、「美術館探検」プログラムです。
学校が立地するエリアには美術館や博物館などの文化施設がないので、
美術館を訪れる児童が少ないとのこと。
今回のプログラムがきっかけで、美術館の空間に親しんでもらうことをねらいとしました。
活動内容は、「建物探検」と「彫刻作品の鑑賞」です。
近代建築として魅力溢れる、東京都美術館の建築を観察することと、
東京都美術館の敷地内に展示されている野外彫刻作品をグループで鑑賞することをプログラムにしました。
「建物探検」のテーマは、「建物を設計した建築家・前川國男」のこだわりを探そう!
各グループに2名の「アート・コミュニケータ(愛称:とびラー)」が一緒に活動します。
とびラーと一緒に、館内の「こだわりの場所」を探しながらめぐります。
「こだわりの場所」を見つけたら、それがどのような形をしているのか、どのような素材でできているのかなど、発見したこと、気づいたことをグループのみんなで話し合います。
その活動のサポートをするのが、とびラーの役割です。
とびラーは、教えることはしません。
「どんなことを見つけた?」「それ、みんなにも教えてあげようよ」
「こっちから見ると、どんな風に見える?」
こんな風な声かけをもって、見方を共有したり、観察することや発見したことを
言語化できるように促す役割を担っています。
とびラーがグループの活動に寄り添うことで、こどもたちはより観察する目をもち、
お互いの発見を共有し伝え合う、豊かな時間となっていきます。
今回は特別に、「展示室探検」の時間がありました。
展示作品のない特別展の展示室で、東京都美術館の学芸員 稲庭彩和子がお話しをしました。
展覧会がどのようにできあがるのか、その時に使う道具や模型などを紹介し、美術館のことをもっと深く知る時間になりました。
グループでの時間を終えると、最後はひとりの時間です。
これまでグループでめぐった場所の中で「ひとりでじっくり見たい場所」を選び、それぞれ出かけて行きます。
「ひとりの時間」で使うのは、気づきや発見を書くことのできる「つぶやきシート」。それに加えて、彫刻や建築の部分写真が丸く切り取られた「丸カード」。
丸カードを手がかりにしながら、こどもたちはそのポイントで、またひとりでじっくり観察、鑑賞します。
「つぶやきシート」には、観察しながら気づいたことや感じた疑問などをメモしたりスケッチしたり、思い思いに記録を残していきます。
当日書かれた「つぶやきシート」。画像をクリックすると大きく表示されます。
美術館での活動は、これにて終了。最後の挨拶をして帰路につきました。
実は「ミュージアム・スタート あいうえの」の学校プログラムは、
この日の活動だけでは完結しません。
美術館へ来館する前に事前学習を行っているのです。
そのために「あいうえの」から学校へ、「鑑賞ボックス」を貸し出しています。
中に入っている、アートカードから自分が見たい作品を選んだり、「美術館ってどんな場所なんだろう?」と考えたりする時間を持つことで、こどもたちは美術館に連れて来られるのではなく、主体的に活動に参加するようになります。それにより、当日の活動がより充実したものとなります。
今回も、この事前学習で、こどもたちは自分が見たいと思う作品を選んでいたため、当日はとても主体的に活動に参加していました。
さらに事後学習では、当日の活動をふりかえります。
高野小学校は、「ミュージアム・スタート・ブック」制作に取り組みました。
事前学習で考えていたことと、当日の「つぶやきシート」、そして残りのページには、ふりかえって印象に残っていることをまとめて書きました。
学校から届いた素敵な「ブック」たちはこちら!
「あいうえの」から送った印刷物などの資料や写真を上手にレイアウトしたり、また自分で思い出しながら書いたスケッチやイラストを書き込んだり、感想を書いたりなど、とても充実した「ミュージアム・スタート・ブック」が集まりました!
事前に「美術館へ行こう!」という意欲を作るところから、事後学習でふりかえるところまでが、プログラムの流れとなっています。
この一連の体験をもって、「また美術館に行ってみたい」という、次の一歩へ繋がることを願っています。
日時:2020年11月9日(月)午前9:30〜11:30
学校名:足立区立高野小学校
学年:5年生
進行:鈴木智香子(Museum Start あいうえのプログラム・オフィサー/東京藝術大学 美術学部特任助手)、稲庭彩和子(東京都美術館 学芸員)
参加者:児童人数59名、教員4名
とびラー:28名
執筆:鈴木智香子(Museum Start あいうえのプログラム・オフィサー)
投稿日: 2020年11月9日