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2020年度 うえのウェルカム

コロナ禍でも学びの場を拓く
台東区における美術館と学校のアクションプランの取組み
台東区立浅草小学校5年(2020.12.17)

2020年の年末に、このようなお手紙が届きました。

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このあいだはありがとうございました。
東京都美術館の建物のしくみや作品などを見れて楽しかったです。

作品の見方や角度によって、見えかたがちがうことなど、いろんな楽しみ方があると知りました。
寒いのにどうもありがとうございました。

コロナの時期になり、外にも出れないなか、美術館によんでくださり、本当にありがとうございました。

このことをきっかけに、美術館にもっと行ってみたくなりました。

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この手紙を書いたのは、12月17日(木)に学校プログラムで東京都美術館に来館した
台東区立浅草小学校(以下、浅草小)の児童です。
プログラムに参加したあと学校でお礼の手紙を一部抜粋しました。

 

お手紙からは、美術館の建物のしくみについてや、様々な見方や角度によって作品を楽しく鑑賞した様子がうかがえます。

コロナ禍の状況で、今年初めての校外学習となったこの日。

当日はどんな様子だったのでしょうか。

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まず浅草小のみなさんが集合したのは、普段は特別展の展覧会が開催されているお部屋です。

今回の学校プログラムは、この部屋からスタートしました。

IMG_9728

最初に、Museum Start あいうえのプログラム・オフィサーの鈴木智香子による挨拶から始まります。

今日の活動のねらいは、

「美術館の中と外を探検して、たくさんの発見をしよう!発見したことをみんなで伝え合おう!」です。

 

活動の時に大事な4つのポイントを伝えました:

「見る・考える・話す・聞く」

スライド06

 

 

 

たくさん発見するためには、じっくり観察し、見ること。

そして「どんな風にできているんだろう?」「何でできているんだろう?」と想像をふくらませ、考えること。

自分の発見を積極的に誰かに話し、伝えること。誰かが話しているときは、よく聞くこと。

という4つのポイントを伝えたうえで、これから本格的にグループごとの活動に入ります。

 

浅草小学校が参加したのは、台東区教育委員会による「学びのキャンパス台東 アクションプラン」に申し込んだことがきっかけでした。台東区はまち全体を、人が成長するための環境「学びのキャンパス」として捉え、社会教育施設を含む地域との連携事業を積極的に行っています。
今回のプログラムでは、台東区の文化資源でもある、上野公園の美術館・博物館を活用した
授業づくりとして準備をしてきました。

 

そんな台東区在住のこどもたちも上野公園に親しみがあるようで、何度も来たことがあるそう。
「美術館ってどんな場所のイメージ?」と事前に学校の授業で尋ねると、
「絵などの美術作品が飾られているところ」という答えが多く返ってきました。

 

しかし、今回みんなで見るのは展覧会の作品(絵)ではなく、美術館「建物(建築)」と野外彫刻作品です。

この東京都美術館の建物は、近代建築の巨匠、ル・コルビュジエより学んだ日本の名建築家・前川國男が設計したもの。日本における近代建築の歴史を語るうえで重要な建物であり、文化資源としての価値があるものといえます。

そして、その前川さんのこだわったところや建築の見どころなど、見応えもたっぷりあるのです。

都美2012

 

活動の導入として、東京都美術館の成り立ちや、建物の歴史を紹介しながら、東京都美術館に
親しみを持ってもらいました。

 

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東京都美術館の前身である「東京府美術館」の姿。

スライド13
左側の人物が東京都美術館を設計した前川國男。
右側の人物がその人に大きな影響を与えた「近代建築の巨匠」と呼ばれるル・コルビュジエというフランスの建築家。
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ル・コルビュジエが設計したのは、同じ上野公園内にある国立西洋美術館!
この美術館の建物にも、東京都美術館を作るうえでのヒントがたくさん隠されています。
スライド15スライド17
前川國男は、古くなり老朽化してしまった美術館の新しい建物を設計することになりました。
左側の写真は前川が書いたスケッチ。そのスケッチが元となり、1975年に今の東京都美術館(旧館)の建物の姿となりました。

 

 

東京都美術館のコレクションでもある野外彫刻も、東京都美術館の建物(新館)が建った頃と同じ時代に作られた近代の彫刻作品です。

野外彫刻3_DSC00286野外彫刻4_DSC00237野外彫刻5_DSC00284

 

今日は、アート・コミュニケータ(愛称:とびラー)と一緒に、その建物や野外彫刻の見どころを探しながら「美術館探検」をします。

各グループには、2名のとびラーが一緒に活動します。
この日のために、とびラーのみなさんは事前にこどもたちと歩くコースやルートを確認し、しっかり準備をしたうえで、こどもたちを迎えました。

 

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とびラーは、こどもたちと一緒に活動をする、冒険の仲間です。
こどもたちに「教える」役割ではなく、こどもたちの発話や意欲を引き出す役割を担っています。
また、グループでの活動では、対話することを大切にしています。グループのこどもたちが自分の意見をきちんと発言し、そしてお互いに尊重しながら聞き合える環境をつくります。

今回、浅草小学校の先生からも、この「対話」にぜひ取り組みたい、という希望を受けました。
学校でも、文部科学省による「主体的で対話的で深い学び」の実現に向けた授業に取り組んでいます。

今回のプログラムがその実践の場になれば、というねらいがありました。

 

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立体作品なので、様々な角度から見つめることができます。

立って離れた場所から見たり、しゃがんで違う角度から見てみたり、

 

「あれ、こっちに移動すると違う形になるよ!」

「この彫刻の構造、どうなってるの?!展開図を作ってみたい!」

 

など、気づいたことをグループの仲間に伝えながら鑑賞していました。

 

続いて、建物を見ているグループの様子です。どのような対話が起こっていたのでしょうか。

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「学校との照明とどう違う?」というとびラーからの問いかけに、

 

児童:「少し暗いけど、ほんわりあたたかい感じがする」「おしゃれ!」

とびラー:「それは、どんなところが?」

児童:「学校の照明は白くてまっすぐの蛍光灯だけど、ここのは丸いのが重なって綺麗。」「天井が高いのも素敵!」

 

など、とびラーからの声かけによって、こどもたちは建物の魅力をどんどん発見していきます。

天井、壁、床など、上を見たり下を見たり、どんな形や素材なのかをじっくり観察しながら、その魅力に迫っていきました。

 

グループの時間を終えると、「ひとりの時間」です。

これまでグループで歩いてきた場所のなかで、自分がもう一度見たいと思う場所をじっくり見に行く時間です。

鑑賞のテーマは、「だれかにオススメしたいと思うポイントを伝えよう!」。

自分なりに発見した美術館の魅力を、言葉やスケッチにして、「つぶやきシート」に書き残します。

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この「ひとりの時間」こそ、一人でその対象物と向き合う時間です。
先ほどまでグループで話し合っていたことを思い出したり、そのうえで、自分がどう思うのか、どう感じるのかを頭の中で考えながら、内省している時間になります。

お互いに距離を保ちながら、それぞれが自分の時間を過ごしていました。

 

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今回は、これらの活動に加えて美術館で働く学芸員に話を聞く時間もありました。

展覧会がどのように出来上がっていくのかを、使う道具も紹介しながら、東京都美術館 学芸員の稲庭彩和子がお話ししました。

 

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最後に挨拶をして、この日の活動は終了です。

 

冒頭で紹介した、浅草小のこどもたちから届いた手紙を他にも紹介します:
(画像をクリックすると、大きく表示されます)

2組_お手紙_1 2組_お手紙_3 2組_お手紙_2

 

当日のプログラムのあとすぐに、学校の先生からメールをいただきました:

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今回の活動、とてもよかったです。
何より子供たちが実にのびのびと美術館や作品について語り合っていた姿を見られたことが、担任として一番うれしいことでした。
実は、最後に集合してあいさつをするときに私は話をしながら胸が熱くなってしまいました。
今まで当たり前のように学校でできていたことができなくなってしまった今、
このように皆さんのお力をいただいて子供たちの学びの場を拓けたこと、感謝の気持ちでいっぱいです。

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先生からのこの言葉の通り、コロナ禍において安全な距離を保ちながら、美術館という場所で実現した「対話」の重要性を再確認したプログラムとなりました。
この体験をきっかけに、こどもたちがこの台東区の文化資源である美術館に親しみを持ち、大切にし続けていってくれることを願っています。

 


 

日時:2020年12月17日(木)午後1:30〜3:00

学校名:台東区立浅草小学校

学年:5年生

進行:鈴木智香子(Museum Start あいうえのプログラム・オフィサー/東京藝術大学 美術学部特任助手)、稲庭彩和子(東京都美術館 学芸員)

参加者:こども54名、教員4名

とびラー:25名


執筆:鈴木智香子(Museum Start あいうえのプログラム・オフィサー)

プログラム: うえのウェルカム |
投稿日: 2020年12月17日