うえの!ふしぎ発見:サイエンス・アート部 (2016.10.2)
10月2日(日)にあいうえのファミリー向けプログラム「うえの!ふしぎ発見:サイエンス&アート部」が行われました。国立科学博物館と東京都美術館が連携して実施され、科学博物館の研究チームと、美術館の学芸員が共にプランニングしたワークショップです。参加者はこどもと保護者、計22名。加えてアート・コミュニケータ(とびラー)7名が参加者に寄り添い、共に活動しました。
午前中に、国立科学博物館の地球館「系統広場」と、東京都美術館の企画展「木々との対話──再生をめぐる5つの風景」展に出掛け、お題として渡された “あることば” にぴったりだと思うモノを見つけて丁寧に観察&鑑賞&撮影。そして午後は、お題の“あることば”について、撮影した写真を用い、文字だけでなくイメージ付きの「自分だけの思い出辞典」を作成します。
《1. はじめに》
今日のワークショップでお題となることばは、「ぐんぐん」「がっしり」「ふわふわ」などの擬態語です。
東京都美術館のアートスタディルームに到着した参加者は、擬態語のカードと、「かはくトランプ」がひろげられた2つの机から、気になるカードを1枚ずつ選びました。
ワークショップが始まり、まずは一緒に活動する参加者3名+とびラー2名の小グループごとに、先程選んだ気になる擬態語カードと、かはくトランプを使って自己紹介タイムです。
こどもたちにとってとびラーは今日ここで初めて会う、親でも先生でもない大人です。緊張するのが当然ですが、とびラーは日頃から「きく力」のトレーニングや、対話の方法について、「とびらプロジェクト」の講座などで学びを深めており、また、こどもだから大人だからという視点ではなく、こどもと大人が対等にフラットな立場で学びあう意識で、相手の声に耳を傾け、意見を尊重し、受け入れようという姿勢で向き合うためか、こどもたちはこの自己紹介の部分から比較的解れた表情で参加しています。
大人チームの保護者たちも、初対面ですが、擬態語カードと「かはくトランプ」を使って互いに自己紹介。
自己紹介が終わると、東京都美術館の学芸員より、全体の活動の流れについてのお話がありました。
流れの説明の中で、それぞれのチームに「チームのことば(擬態語)」があることが話されました。チームごとに自分のチームのことばを確認します。
《2. 自分の「チームのことば」に合うモノを探しに。科学博物館へ。》
「ぐんぐん」が割り振られたチームは、チームメンバー全員がそれぞれに「ぐんぐん」に合った科学博物館の展示資料や、美術館の作品を探しながら、科学博物館と美術館の展示室をめぐります。
こちらは「するする」チームです。
各チーム、国立科学博物館に移動しました。
向かったのは、科学博物館の地球館にある「系統広場」です。海の生き物も、陸の生き物も、魚・昆虫・動物・植物など、細菌からヒトまで、あらゆる生物の標本や模型が並んでいる空間です。
自分の「チームのことば」を念頭に置きながら、展示品を よく見て、そのことばにピッタリだ!と思うモノを探します。たくさんの展示品をグループでぐるりと見たあとは、個人でこれだ!と思うモノを慎重に選ぶ時間です。見つかったら、なぜそれを選んだのか、どうしてそのことばに合うと思ったのかなどをメモシートに書きとめておきます。
そして、自分が選んだ資料を撮影。
最後にチームごとに、それぞれのメンバーがどの資料を選んだのか、どうして選んだかを共有しました。
この共有を通して、同じことば(擬態語)から、人によって違うモノを選んでいる、ということを目の当たりにし、見方の多様性への気付きが生まれたようです。
《3. 自分の「チームのことば」に合う作品を探しに。次は東京都美術館へ》
そして再び東京都美術館に戻り、企画展「木々との対話──再生をめぐる5つの風景」の展示室へ向かいます。
科学博物館の展示資料とは違って、今度は美術作品。まずはグループごとに気がついたことを言葉で交わしながら作品鑑賞の時間です。館種は違っても、丁寧にじっくり見る、という姿勢は、科学博物館でも美術館でも変わりません。
そして、ひきつづき、自分のチームのことばにピッタリな作品を探します。
見つけたらカメラで撮影。
アートスタディルームに戻って、どんなものを見つけてきたか、写真をみせつつチーム内で共有し、午前中の活動はこれにて終了。ランチ休憩です。
《4. 思い出辞典づくり》
午後は、午前中に見つけた科学博物館の展示資料と東京都美術館の彫刻作品の写真を並べ、イメージと文字で「チームのことば」の思い出辞典をつくります。
最後に、今後もミュージアム冒険を続けていけるよう、上野公園の9つのミュージアムを楽しむためのアシストツール「ミュージアム・スタート・パック」がプレゼントされました。パックの中に入っている特製ブックの使い方の説明を、とびラーと一緒に実際にブックを開きながら聞いています。
今回の「うえの!ふしぎ発見:サイエンス&アート部」は、科学博物館と美術館という、異なる館種を、同じキーワード(擬態語)を切り口に鑑賞・観察するプログラムでした。
「美じゅつ館にも博物館にもたくさん“ゆらゆら”があった!」(参加者の感想)
何かテーマを持って、膨大な展示資料・展示作品から、自分の‘ぴったり’と感じるものを探し出す。そういうミュージアムの楽しみ方があるんだなと、今後ミュージアム冒険をしていくときのヒントになったかと思います。また、美術館の作品をみるときも、科学館の所蔵品(資料)をみるときにも、モノを丁寧に見て、自分がピンと来るものやピッタリだと感じる、その感じ方・感覚を大切にしていく見方は、館種は違っても同じだということが、印象づけられたように思います。
「“するする”感じるものが、みんなそれぞれちがった感覚だったので、なるほどと思いました。いったことのない博物館に行けたのでよかったです。」(参加者の感想)
自分の感じ方を大切にするからこそ、共にみている誰かの違う見方や感じ方を「なるほど」「面白い」と感じられる。そういうミュージアム体験をこれからも家族で続けていってもらえたらと思います。
(Museum Start あいうえのプログラムオフィサー、東京藝術大学美術学部特任助手:長尾朋子)
投稿日: 2016年10月2日