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2016(平成28)年度 スペシャル・マンデー・コース

スペシャル・マンデー・コース:木々との対話展(2016.9.12)

2016年9月12日(月)、今年度初めての「スペシャル・マンデー・コース」が東京都美術館で行われました。

「スペシャル・マンデー・コース」とは、展覧会の休室日に特別に学校のこどもたちのために開室してゆったりとした環境のなかで展覧会を鑑賞できる学校向けのプログラム。
参加したのは、杉並区にある小学校5年生のみなさんと、三鷹市にある私立中学校に通う2年生のみなさん。

どちらも上野公園からは少し離れたところに位置する学校ですが、貸切バスを利用したり校外学習として上野駅に集合してからやってきたりと、それぞれ美術館で過ごす一日に向けて、足を運んでくれました。

それぞれの学校の様子について、紹介していきます。

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杉並区立天沼小学校5年生 81名
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午前中の来館となった天沼小学校のみなさん。爽やかな朝の空気でいっぱいの上野公園を通り抜けて、東京都美術館に到着しました。

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今回は学年を大きく2つに分けて、それぞれ展示室入口付近とアートスタディルームで集合する青と赤のグループで活動を行いました。

まずはそれぞれ、東京藝術大学の美術学部特任助手の鈴木智香子(Museum Start あいうえの プログラム・オフィサー)と東京都美術館の学芸員 熊谷香寿美さんより、ご挨拶。

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「上野公園の東京都美術館へようこそ!ここに来たことはありますか?」と尋ねると、来ていないお子さんがほとんど。
「それでは、今日は美術館デビューとなる記念すべき1日。ぜひ楽しんでいってください!」

見に行く展覧会は、東京都美術館で開催されている企画展「開館90周年 木々との対話 再生をめぐる5つの風景」展。

「一緒に美術館を楽しんでくれる仲間をご紹介します。アート・コミュニケータ”とびラー”のみなさんです!」

このスペシャル・マンデー・コースを含む「Museum Start あいうえの」のプログラムは、とびらプロジェクトと連動しています。
20代の学生から30,40代の会社員、70代の元教員や主婦の方まで、120名以上のアート・コミュニケータがこのプロジェクトに携わっています。
今日、一緒に活動するとびラーとこどもたち同士で簡単に自己紹介をしてから、それぞれ展示室へ向かいます。

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まず展示室に入ってから行うのは<展示室散歩>。

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「これ、本当にみんな木でできているの?」
「想像していたよりもおっきい!」など、こどもたちは驚きや発見を思い思いに言葉にしていました。

この学校プログラムは学校と連携した授業づくりを行なっています。学校でアートカードを使って事前学習をおこない、「美術館に行こう!」という気持ちを育んできてもらいます。事前学習のときに見ていたアートカードの、本物の作品を目にして、こどもたちの温度感はどんどん上がっていきます。

ぐるっと展示室をひと巡りした後は、<グループ鑑賞>の時間です。

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作品を前に、とびラーがファシリテータとなって、こどもたちが気づいたこと、発見したこと、感じたことなどを言葉にしてもらい、それらを紡ぎながら複数での対話型鑑賞を行います。
こどもたちは自分一人では見つからない視点や、お互いの見え方の違いを共有し、グループ内でのコミュニケーションを育んでいきます。

複数の視点で見合う見方を体験した後は、<ひとりの時間:個別鑑賞>です。

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展示室にも慣れてきたところで、こどもたちは自分の気づいたことをメモやスケッチをすることができる「つぶやきシート」を持って、一人で作品を見に行きます。

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見に行く作品は、事前学習で選んだアートカードの作品と、当日気になった作品があれば新しい作品の2点を時間内で見ることができます。

こどもたちは、先ほどまでのグループ鑑賞の時間で育まれた、多角的な視点で見ることと誰かと対話しながら見ること、さらには事前学習の時から「本物が見たい」と思って来ているモチベーションなどがつながり、この時間に一人ずつがとても集中して「よく見る」ことを実践するようになります。
グループ鑑賞の時とは違い、個別鑑賞の場合は「誰か」はいませんが、「自分」と「作品」が向き合う時間として、静かで内省的な時間が流れていきます。

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この時間に書かれた「つぶやきシート」を少しご紹介します。

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目にしたもののスケッチを書いたり、気づいたことや思ったことを箇条書きにして書き出したり、それぞれの視点で作品をよく見ていることがわかります。

 

展示室での活動を終えると、最後に「ミュージアム・スタート・パック」をプレゼントしました。
無事に「美術館」ひいては「ミュージアム・デビュー」した皆さんが手にすることができる、冒険の道具です。

後日、学校での事後学習で、こどもたちが書いた「ブック」の記録を送っていただきました!
こちらも少しご紹介します。

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・上の作品をいつもだったら通りすぎていたけれどじっくり見ることでいろんなことに気づくことができた。
・他の友達のちがう意見が分かり、いろいろな考えがよく分かった。

 

たくさんのことを発見し、とびラーと充実した時間を過ごすことができたこどもたち。
これをきっかけにぜひ、ミュージアムでの楽しみ方を知り、上野公園に来るようになってくれたら嬉しく思います!

 

 

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私立明星学園中学校2年生 87名
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次に、午後に来館した私立明星学園の様子です。

明星学園のみなさんは、学校の試験明けの校外学習の一環として来館しました。

こちらの学校も、2つに分かれてそれぞれアートスタディルームと展示室入口付近のホワイエに集まってから活動をスタートしました。

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最初にご挨拶と、これから見に行く展覧会についての導入です。

 

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こちらの学校では、美術の授業から独立して「木工」の授業もあるとのこと。
中学校の卒業作品として、来年度に木工作品を作る予定であると先生から伺っていたため、今回出品している5人のアーティスト像を伝える内容を行いました。今回の展覧会の何よりの特徴は、実際に生きている美術家:現代アーティストが作った作品である、ということ。そのことを中学生のみなさんにも感じ取ってもらってから、展示室に入りました。

午後もグループごとにアート・コミュニケータ(とびラー)が伴走します。
まずは自己紹介。

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そして<展示室散歩>の時間。

展示室以外の場所にも設置されている、屋外作品をこの時間に見て回りました。

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この屋外作品は田窪恭治さんの《感覚細胞—2016・イチョウ》という作品。
普段は立ち入れないスペースに作品を設置することで人が踏み入れる機会となり、普段見過ごされているものに光を当てるきっかけとなっています。

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中学生のみんなも、開放的な屋外という場所でお話をすることで、少しずつ緊張感がほぐれてきた様子。
普段見過ごしてしまう「木」の存在について、いつもは黄色くなった実や匂いでしか気づくことのないイチョウの木ですが、
まだ青々とした葉の中から「あ、あそこに実みたいのがある!」「葉っぱの形からして、イチョウだね、、、」「樹齢はどれくらいなんだろう」とグループ内のメンバー同士やとびラーと一緒に発見したことを話し合っていました。

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田窪さんの作品は展示室内のこんなところにも設置されています。

その次には、一つの作品の前に立ち止まって鑑賞する<グループ鑑賞>の時間です。

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ここで対話が起きるには、先ほどまでの<展示室散歩>までの導入でいかに場を温めておくことができるかに依ってきます。

その後は<個別鑑賞の時間>。

一人になって、じっくり作品と向き合う生徒の姿が多く見られたのが、とても印象的でした。

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中には友達と同じ作品を見ているうちに、そっと話し合う場面も。
個別鑑賞の時間の後、さらにもう一度グループで集まり、お互いの発見したこと、見つけてきたことを共有する時間を設けました。

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この時に手がかりにしたのは、個別鑑賞の時間の時に書いていた「つぶやきシート」です。
アートスタディルームに戻ったグループは図録を使いながら、展示室でのことを振り返りました。

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先ほどのグループ鑑賞の時間で輪に参加したがらなかった生徒が、この活動内で自分が見つけてきたことを少しずつ言葉にしていくようになりました。そして実際にその時にその生徒が言及した須田悦弘さんの《バラ》の作品をグループで見に行き、その場で共有することもできました。

その時のことを、グループを担当していたとびラーの関恵子さんが以下のようにふりかえっています:
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その子は初めから、ムスッとしていました。グループ鑑賞の時、土屋さんの「鳳凰」をじっと見ていたので、声をかけると「別に…。共有したくないんで。」と言われてしまいました。無理に話させたりせず、見守ることにしました。
「ひとりの時間」では、つぶやきシートに熱心に書き込んでいる様子でした。でも、「共有」の時には、きっと何も話してくれないだろうと覚悟していました。つぶやきシートは、「絶対見せない」という感じで、いくつにも折りたたんだままでしたが、突然、須田さんの「バラ」について話してくれました。
「自分は、花はきらいだが、バラとその空間がすごいと思った。あのせまい空間、白い壁、照明によってバラが美しく見えた。」と。その後、グループでバラを見に行き、彼女の感じたことを皆で共有できたことは、とても嬉しいことでした。「ひとりの時間」に作品と向き合ったことで、彼女にスイッチが入ったのかもしれません。
「つぶやきシート」には、グループ鑑賞の時、「別に…。」と言っていた「鳳凰」について、そして話してくれた「バラ」ではなく「ユリ」について、よく見て、感じ、考えたことがしっかり書かれていて、驚き、私自身の心が揺り動かされました。
表面に表れる表情や言葉とは別に、心のなかで作品と出会い、たくさんのことを感じ、考えていたのですね。そして、難しい思春期の子どもの心をとらえ、動かす力が、本物の作品にはあることを実感した日でした。
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様々な発達段階にあるこどもたちに対して、美術館が居心地の良い場所と思ってもらうことに、本プログラムの意味があります。
発言が豊かに出せることだけが全てではなく、「聞く」ことでその場に参加している場合もあれば、グループでの活動に慣れてくるのに時間がかかる場合もあります。

一人一人の生徒たちにとって、このスペシャル・マンデー・コースで過ごした時間を通じて「また美術館に行こうかな」「作品を見に行きたいな」と思ってもらえるように、様々な授業プログラムをデザインしていかれることを目指しています。

その後、中学生のみなさんからも当日プレゼントした「ビビハドトカダブック」に書いた冒険の記録が届きました。

 

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・東京都美術館には何回か来たことがあって昔から芸術作品を見るのは大好きでした。
でもクラスの人たちと意見をかわしながら見るのはまた新しくいい体験になりました!

・いつも、美術館はもちろん、写真展などは入ってもただ作品の前を歩いて通りすぎてさっさと出口へ向かうだけだったけど、今回、じっくりと1つ1つ観る事で、「ちゃんと観てきた」という感じがした。
このプログラムをきっかけに、また何度でもミュージアムが建っている上野公園へ足を運んでくれることを願っています!

 

(Museum Start あいうえの プログラム・オフィサー/
東京藝術大学 美術学部特任助手 鈴木智香子)

プログラム: スペシャル・マンデー・コース |
投稿日: 2016年9月12日