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2018(平成30)年度 うえの!ふしぎ発見

うえの!ふしぎ発見:アート&サイエンス部(2018.11.4)
(国立科学博物館×東京都美術館×東京藝術大学)

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「こどもが、ふだんの生活では気づかない気づきが得られるように、視点を変えることができるように」といった期待を込めて申し込んだ、というのは、2018年11月4日に行われた「うえの!ふしぎ発見:アート&サイエンス部」に参加した保護者の一人。

そして、実際に参加してみて「とびラーの方が、こども一人一人に注視して、声かけしているところが印象的だった。こどもにとっても、とてもよかったと感じました。藝大の先生にも、こどもにわかりやすく、おもしろく!説明していただき、こどもも興味をもって参加していました」という感想を聞かせてくださいました。

「うえの!ふしぎ発見」は、9つの文化施設があつまる上野公園を舞台に、ミュージアムとミュージアムのコラボレーションを通じて、たくさんのふしぎやホンモノとの出会いを探求するプログラム。
今回のテーマは「アート&サイエンス」。昨年に引き続き「色」をキーワードに、上野公園の3つの施設〜国立科学博物館、東京藝術大学、東京都美術館〜をめぐる1日となりました。
参加したのは、22組44名の親子(こどもたちの年齢は、小学3年生から高校1年生まで)。そこに、プログラムの伴走役を担う19名のアート・コミュニケータ(以下とびラー)が加わりました。

 

《冒険のはじまり》

国立科学博物館日本館多目的室。
朝10時。参加する親子が到着し始めました。

「おはようございます。」入り口で、とびラーが出迎えます。
「何チームかな?」きょろきょろと部屋の様子を伺うこどもたちに声をかけ、席へ案内します。
「Aチームはこちらです。お母さん、お父さんは後ろへどうぞ。」
この日はファミリー向けプログラムですが、こどもとおとなは別行動。それぞれ少人数のチームに分かれ、とびラーと一緒に活動します。

「この名札、シールになっているので、見えるところに貼ってね」
席についたこどもたちに、とびラーが声をかけます。名札を貼って、バンダナをまいて。今日は、ミュージアムをめぐる冒険の日。準備ができた子からミュージアム・スタート・パックが渡されました。ミュージアム・スタート・パックのなかには、大切な冒険の道具、冒険ノートが入っています。

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「上野公園へようこそ!」

プログラムが始まりました。登場したのは、ミュージアム・スタート あいうえのプログラム・オフィサー、鈴木智香子さん。プログラムの流れを説明します。

今日は、「色」をキーワードとした1日。次の3つのステップで進んでいきます。

1. 国立科学博物館で、色を探す:自然物の「色」をじっくり観察・鑑賞する

2. 東京藝術大学で、色を作る:実際に「色」絵具を作る

3. 東京都美術館で、色を味わう:ムンク展にて絵具で描かれた作品の「色」を味わう

*おとなは、2が、絵具作りではなく、藝大ツアー(構内見学)になります。

 

「みなさん、こんにちは。」次に登場したのは、国立科学博物館(以下カハク)学習課の小川達也さん。
「この絵、みたことありますか?」
1枚の絵がスクリーンに映し出されました。ある、という子も、ない、という子もいます。

「どんな色が見つかりますか?」と智香子さん。
「ピンク」「黒」「茶色」こどもたちから声があがります。

「これは、いまから20,000年ほど前に描かれた絵。フランスにあるラスコー洞窟の中に描かれた壁画です。まだチューブに入った絵具がなかった時代に、土や砂を砕いたものを材料にして描かれた絵なんです。」

ここで、小川さんが、小さな木箱を取り出しました。
「冒険者のみなさんにお見せしたい、大事なお宝を持ってきました。これは、栗田宏一さんというアーティストが、日本全国のいろんな土を集めてつくった作品です。」

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そうっと覗き込むこどもたち。「パステルみたい」「紫色もあるんだ」「白もあるよ」。

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「土といっても、いろんな色があることがわかると思います。博物館は、いろんなものを集めてコレクションしている場所。いろんなものを集めて比べたり、研究したりすることで、わかることがいっぱいあるんです。」と小川さん。

「今日はいろんな“色”をみつけて、みんなの記憶のなかにコレクションしてくださいね!」

ミュージアムでのお約束(触らない、小さな声で話す、走らずにゆっくり歩こう)を確認したら、いよいよ展示室へ出発です。

 

《国立科学博物館で、色を探す》

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こどもたちが向かったのは、日本館内の《日本の鉱物・日本に落下した隕石》という展示室

「わー」「すごいきれい」「いろんなのがある」思わず漏れた声が聞こえてきました。壁一面に並ぶのは、さまざまな鉱物。

最初にみんなで一緒にみてから、それぞれ気になるものや気づいたことを冒険ノートにメモしていきます。隣では、とびラーが色鉛筆を差し出しています。

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時間がきたら、隣の展示室《日本列島の素顔》へ。この部屋には、土や動植物など、日本由来の自然物がたくさん集められています。ここでも、みんなで一通りみたあと、それぞれに気になるもののところへ。

ところが一人の時間、展示室内をぐるぐるまわり、なかなかスケッチを始めない子がいました。その様子を、とびラーが少し離れたところから見守ります。
しばらくして、足をとめたのは、海の生物の標本が並ぶ展示ケースの前。
しばらく眺めたあと、展示ケースをぐるっとまわり込んで、裏側へ。小さな標本の前でノートを広げました。

床に座り込んで描いている子もいます。

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この展示室には来たことがあるけれど、こんなふうに下の方にある展示ケースをみたのは初めてだとか。

その頃、おとなは、地球館というもう一つの建物で同じく“色”を探す時間を過ごしていました。
「カハクのスケッチは、普段なかなか描く機会がなかったので新鮮でした!」という声も聞こえました。

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展示室で時間を過ごしたあとは、多目的室に戻り、共有タイムです。
こどももおとなも、それぞれチームで輪になって座り、スケッチしてきたものを見せ合います。

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「どんな発見があったかな?」「ほたる石。水色だけじゃなくて、黄色とかもあってキラキラしてた。」問いかけるとびラーに、答えるこどもたちの声が弾んでいます。

こどもたちだけでなく、おとなも同様にお互いが発見した色を共有し合います。
同じ展示室にいても、自分では気づかなかったものに気づいたり、また自分がどんなものが好きなのか改めて気づかされたり、おとなの参加者にとっても日常と異なる時間を過ごす機会となったようです。

これで、午前中の活動は終了。東京藝術大学(以下藝大)に移動します。お昼ご飯を食べたあと、午後の活動へ。

 

《東京藝術大学で、色を作る》

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午後、みんなが集まったのは、藝大の絵画棟技法材料研究室。ここは、絵画の素材・技法と表現の関係について研究している場所。齋藤芽生准教授と助手、学生のみなさんが待っていました。

「みんな、前に集まって。午前中、カハクではどんなものを見てきたのかな?」研究室の助手である野口さんが質問します。

「石!」「土!」

「今日ここでやるのは、そういう石や土からできた顔料を使って、絵具を作ることです。絵具には、水彩絵具、油絵の具、アクリル絵具といった種類があります。今日は、水彩絵具を作ります。」
こどもたちには、各チームに助手や学生が一人つき、とびラーと一緒に絵具づくりをサポートします。

 

その間、おとなは齋藤准教授と一緒に絵画棟構内をめぐる藝大ツアーへ。

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こどもたちの絵具作りがはじまりました。

「今日は、全部で4色作ります。材料は、顔料と、アラビアゴム。この2つに水を加えて練って絵具にしていきます。」この顔料のうち、3つは土からできているのだそうです。
作り方をきいて、待ちきれないこどもたち。腕まくりして、作業にとりかかります。
まずは、材料の計量から。

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測り終わったら、パレットナイフを使って混ぜ合わせ、練っていきます。
今回はさらに、昔ながらの方法と同じように、大理石の台と練り棒を使っての絵具作りにも挑戦。
「八の字を描くように混ぜると混ざりやすいですよ。けっこう力が必要なので、交代でやってくださいね。」と野口さん。

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「重い。けど、なんか楽しい。」

「なめらかになってきた!」

ツブツブがなくなり滑らかになったら、完成。小さなケースにつめていきます。こぼさないように、慎重に。「手についても洗うから大丈夫だよ。」とびラーが声をかけます。

「あと1個だ!」「できた!」

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できたら、ほかのチームと交換。4色の絵具がそれぞれ手元に並びました。
さらに、パレットを交換して、できた絵具で試し描きタイム。

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そこに、おとなたちも戻ってきました。「これを作ったんだよ。」
小さなケースに入った絵具は、お土産に。「水彩絵具なので、描くときはしっかり水で溶いて使ってくださいね。」と野口さん。

絵具をミュージアム・スタート・パックにしまったら、最後の目的地、東京都美術館へ向かいます。

 

《東京都美術館で、色を味わう》

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東京都美術館のアートスタディルーム(以下ASR)では、学芸員の稲庭彩和子さんが待っていました。さっそくムンク展の紹介がはじまりました。

「ムンクというと、『叫び』が有名ですよね。これがおうちにあったら?」

「こわい」「いらない」口々に答えるこどもたち。

「たしかに、こわい印象を受けるかもしれません。でも同時に、”どうしてこういう絵を描いたんだろう”といろいろ考えたくなる。だから、見たくなる。ムンクの時代は、自分のいろんな考えや思いを絵にしていった時代。飾って気持ちのよい絵だけじゃなく、こういう絵も生まれました。こんなにたくさんのムンクの作品を見ることができる機会はほとんどありません。ムンクの作品は実は、とても色彩豊か。ぜひ色に注目して、絵を見てくださいね。」と稲庭さん。

 

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アート&サイエンス部の1日の活動は、これで終了。ですが、ミュージアムの冒険はこれで終わりではありません。「Museum Startあいうえの」では、こうしたプログラムに参加し、ミュージアム・デビューを果たした方々に、さらにミュージアムを楽しんでもらえるよう、さまざまな仕掛けを用意しています。

年3回開催している「あいうえのスペシャル」も、そのひとつ(次回は、2018年12月15日(土) 冬のあいうえのスペシャル)。この日はASRにさまざまなコーナーが出現します。たとえば、9つのミュージアムの展覧会やイベントなどの、チラシが手に入る情報コーナーや、ミュージアムの冒険の記録をブックに書くためのコーナーなど。
ほかにも、「みんなの冒険ノート」というウェブページでは、冒険ノートを投稿したり、閲覧したりすることができます。

こうして、体験を多様なこどもやおとな:冒険の仲間たちと共有することで、それはよりいっそう印象に残るものになっていくように思います。

ミュージアムでの活動のなかで気づきや新しい視点を経て、いつも見ている光景の捉え方が、ふっと変わる。当たり前のなかに、たくさんのおもしろさや楽しさを発見していく。
小さな興味をきっかけにひろがる世界。そうした日常とのつながりこそが、冒険の醍醐味と言えるのではないでしょうか。

 


 

 

執筆|井尻貴子

編集|Museum Start あいうえの運営チーム

プログラム: うえの!ふしぎ発見 |
投稿日: 2018年11月4日