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2018(平成30)年度 スペシャル・マンデー・コース

スペシャル・マンデー・コース:文京区立文林中学校(2018.12.3)

12月3日(月)、午後の曇天のもと、今年度最後の「スペシャル・マンデー・コース(学校向けプログラム)」が行われました。
来館したのは文京区立文林中学校の1年生〜3年生。この日は教員や保護者の方々も多く参加し、全校を挙げて来館しました。

この日は全館休館日。「スペシャル・マンデー・コース」とは、本来お休みである美術館の展示室を学校のために特別に開室する日です。そのため、ゆったりとした環境の中でこどもたちが本物の作品と出会い、アート・コミュニケータ(愛称:とびラー)と共に鑑賞できると好評のプログラムです。

このブログでは、Museum Start あいうえのプログラム・オフィサーである鈴木が当日の学校の様子を詳しく紹介していきます。

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文京区立文林中学校

(生徒 49人 引率教員12人 保護者8人 とびラー24人)

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【午後2時、到着:はじめの挨拶】

最初に美術館のアートスタディールームに集合した文林中のみなさん。
「こんにちはー!」と、元気のいい挨拶をしながら入ってきました。

まずは全体で、はじまりの挨拶。
鈴木から、今日の活動趣旨やムンク展について紹介したあとで、展示室へ出かけます。

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参加者を迎えるのは、たくさんのとびラーのみなさんです。
とびラーは、美術館の楽しみ方をたくさん知っている大人の人たち。大学生や会社員、主婦の方など、様々なお仕事をしている方や年代の方がいます。中学生のみなさんからしたら、学校の先生とも違う、家庭の保護者とも違う、大人と出会う体験です。
この日はこども6〜7人と、2〜3人のとびラーがグループとなって一緒に活動をしていきます。

とびラーは、この日のためにたくさん準備を重ねて臨んでいます。
鑑賞する作品について調べたり、会場の下見をしたり、こどもたちの様子を事前に聞いてどのような声かけをしようか考えてきたり。こどもたちと一緒に作品を見るのをとても楽しみにして来ているのです。

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展示室での活動と時間配分は以下の通り:

1. 展示室散歩(15分間)

2. グループでお話ししながら作品を見る(15分間×2作品)

3. ひとりで見る時間(30分間)

 

今回のグループは、学年を混合にした編成を先生が考えてきました。
その意図は、なるべく普段の関係性から離れ、お互いに話しやすい環境をつくることにあります。

グループ内の自己紹介を終えたら、いよいよ展示室へ向かいます。

 

【展示室散歩】

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まずは立ち止まらずに、展示室のフロア全体を歩きます。

この時間は、初めて入る展示室に慣れる時間です。生徒たちは気になる作品を見つけると「あ、あの作品知ってる!」と思わず声に出したり、「白い洋服の女の人が立体的に見える」などとつぶやきながら眺めてみたり。本物の作品を見ているからこその発見を、少しずつ言葉にしていきます。

学校の事前学習で、アートカードを使って図像から気になる作品を選ぶ活動と、逆に作品リストを読みながら気になる作品タイトルを選ぶ活動の2つを行なってきていました。アートカードで気になっていた作品の本物を見たときの感動もあれば、タイトルから「どのような作品なんだろう…?」と想像してから見たときの驚きもあったようです。

このように、事前に学校で作品に興味を持たせているからこそ、当日本物の作品を見たときの感動がより大きなものとなります。

 

【グループ鑑賞】

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次の活動は、グループで一つの作品を鑑賞する時間です。

「まずは1分間、話さずにじっくり見てみてください。近づいたり遠ざかってみたり、自由に見てみていいよ。その後、気づいたことや感じたことをみんなでお話ししましょう。」

とびラーからそのように声をかけられると、先ほどまで賑やかにおしゃべりしていたグループも静まり、ぐっと集中して作品に向き合います。

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1分間静かな時間を持ったあとは、いよいよ気がついたことを発言し、聞き合う時間です。

「この絵の中で、どんなことが起こってる?」というとびラーからのひと声で、生徒たちは口火を切って話し出します。

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このように床に座って鑑賞ができるのも、スペシャル・マンデーならでは。
一般の来館者が誰もいない状態で、こどもたちは落ち着いて作品に向き合い、言葉を紡いでいました。

「制作年が1930年代と書かれているから、時代はけっこう工業化が進んでいてもおかしくない。それなのにこの風景には何もなくて、すごく田舎な感じがする。」
という、歴史を学んでいる中学生ならではの発言も。

とびラーは、そんなこどもたちが感じた疑問や感想など、どんな言葉にも丁寧に耳を傾け、話しやすい環境をつくっています。
作品を鑑賞するときに「正解」はないことを伝え、自分自身が感じたことをそのまま話せるようにすることで、生徒たちは
自分一人では気づけない、様々な視点に立って見る体験ができるようになります。

 

【大人の時間:グループ鑑賞】

 

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今回は保護者や教員の方も多数参加していました。
こどもたちの学びの環境を作るのは、保護者や教員の方など、大人の人たちです。
「あいうえの」では、こどもたちだけでなく、彼らを取り巻く大人の学びもとても大切にしています。
大人の人にもこどもたちと同じ体験をしてもらうことによって、ミュージアムで学ぶ楽しさとその意義を理解していただくことを意図しています。

保護者の方8名と教員の方11名を混合し、2つのチームに分かれてもらいました。
そこにとびラーも2名ずつ加わり、大人もこどもたちと同じ活動を体験しました。

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保護者の方も教員の方も、それぞれの職種や立場を超えて、一個人として作品鑑賞を楽しんだようです。

 

【ひとりの時間】

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そうして、グループでたっぷり2作品についてお話をし終えたあとは、ひとりになる時間です。

この時間によって、グループ鑑賞で体験した「こんな風に自由に作品について見ていいんだ」という感覚を、さらに個人で深めることができます。この「個人の時間」は、この先に美術館へ出かけたときにつながることを意図しています。

こどもたちは、ただ漫然とひとりで見に行くのではありません。
とびラーより「つぶやきシート」と会場マップを渡され、自分が気になる作品を探しに行きます。その気になる作品を、当日見つけられれば良いですが広い展示室内で一つに絞るのはなかなか容易ではありません。

そこで、事前学習の時間が生きてきます。とびラーは「事前学習で選んだ作品の本物を探してごらん。作品を見つけたら、その前で立ち止まってみて、今みんなとお話ししたみたいにじっくり作品とお話ししておいで」という声かけをして放ちます。
生徒たちは、「あのタイトルの本物の作品を確かめよう」「アートカードの本物の作品がどんな色なのか、見に行こう」という風にして、それぞれ見たい作品を決めてからグループを解散します。

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この時間でも、とびラーが寄り添います。
一対一でお話しながら、生徒が気になっていることや頭に浮かんでいることを言語化させ、思考を整理していく、聞き役を担うのがとびラーの役割です。

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保護者や教員の方々も、ゆったりと過ごしていました。
中には先ほどのグループ鑑賞の延長で、対話を続けている姿も?!

 

【午後3時30分、退館:最後の挨拶】

再びアートスタディールームに戻って来た生徒のみなさん。
はじめの挨拶で見た表情より、全員が顔を紅潮させていたり、朗らかな表情になっていたりする様子を見て、展示室での時間が充実した活動になったのだなと感じました。

最後に、東京都美術館の学芸員である稲庭さんより、ムンクの作品についてお話がありました。

「ムンクの作品を見て、どうでしたか?
ムンクは、たくさんの作品を遺していきました。今日みなさんが体験したように、彼はこういう見方をしてほしい、と思って作っていたわけではありません。感じ方というのは、見る側に委ねられているんです。
これからも、今日の体験のように、感じたことや想像したことを、どんどん言葉にして作品とじっくり対話をしてみてください。」

 

今日の体験をもとに、これからも作品とじっくり向き合うには・・・
そのために活用できる道具を、最後に全員にプレゼント!『ミュージアム・スタート・パック』です。

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再びプログラム・オフィサーの鈴木より、簡単に使い方を紹介。

冒険の道具を手に入れて良いこととして、上野公園にあるミュージアムで集められる9つのオリジナルバッジについて紹介しました。バッジをもらうには、このパックを持っている人しか知らない、秘密の呪文が必要です。

上野公園は、美術だけでなく、歴史、科学、本、動物、音楽など、たくさんの本物や不思議と触れ合うことができる特別な場所。
上野公園に親しみがある、近隣の文林中のみなさんにこそ、ぜひ何度でも足を運んでほしいと思い、お話ししました。

 

【それから:事後学習】

学校に戻った生徒のみなさんは、翌日早速、「鑑賞文」作成を行なったそうです。
その中の一部をご紹介します:

1班_1年f

2班_2年m

6班_3年m

 

 

実は今回の授業は、「国語」の科目で行われました。
美術館という場所を活用しながら、事前に言葉から作品をイメージする授業を行い、当日は本物の作品の前で生徒たちの言語化を促し、事後の作文へとつなげる一連の授業となりました。

このように、学校とオーダメイドでプログラムを作成しながら、当日の豊かな時間を作ることができるように協働して行うのも本プログラムの特徴です。

 

文林中のみなさんが、自分の興味に応じてさらに上野公園に親しみ、ミュージアムをこれからもずっと楽しんでくれることを願っています。

 


 

鈴木智香子|Museum Start あいうえの プログラム・オフィサー

プログラム: スペシャル・マンデー・コース |
投稿日: 2018年12月3日