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2018(平成30)年度 うえの!ふしぎ発見

うえの!ふしぎ発見 アート&アニマル部(2018.9.29)

9月29日(土)に「お弁当を食べる人と作る人とのつながり」をテーマに、ミュージアムに展示されている作品やものを観察・鑑賞して、オリジナルの「おべんとう」をつくるワークショップが開催されました。上野公園にある東京都美術館と恩賜上野動物園がコラボレーションをして行われた今回のプログラムでは、小学校1年生から中学3年生の幅広い年齢層のこどもたちとその保護者、全16組30名のファミリーがともに活動します。もちろんこの日もアート・コミュニケータ(以下、とびラー)がワークショップのサポートをしっかりします。

プログラムのはじまりは、恩賜上野動物園の西園に位置する「弁天門」。

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あまり知られていませんが、上野動物園には多くの入園者が利用する東園の「表門」、表門と比べると混雑せずスムーズに入園できる西園「弁天門」、「池之端門」の3つの出入口があります。以前は出口専用だった「弁天門」がリニューアルオープンしたのは1年前のこと。この真新しい門が、この日のプログラムの集合場所です。

受付を済ませた参加者を笑顔で迎えるのはとびラーたち。

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「おはようございます!」

とびラーがあいさつの声をかけながら、参加者のみなさんの緊張をほぐしていきます。午前9時45分、プログラムのスタートです。

みんなでまとまって入園したら、上野動物園のスタッフのみなさんが待つ「みんなの広場」へと向かいます。小雨交じりの天気となったこの日は、雨具を身につけて冒険に出かける準備をします。

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広場に着いたところで、Museum Start あいうえのプログラムオフィサーの渡邊祐子さんから、今日の活動紹介がはじまります。

今日の活動のテーマは、「おべんとうを食べる人と作る人のつながりを想像してみよう」。

みんなが普段口にする「おべんとう」。今日のプログラムは、デザインとしての「おべんとう」に注目し、「おべんとう」の中に隠れた作り手の工夫や思いを見つけ出すことがねらいです。午前中に恩賜上野動物園で「動物のおべんとう」を観察して「動物たちと人」とのつながりを、午後に東京都美術館の「BENTO おべんとう展―食べる・集う・つながるデザイン」を鑑賞して「人と人」とのつながりを見つめます。「食べる人と作る人のつながり」から注目してみると、「おべんとう」の中にも新しい発見がたくさん隠されています。

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まず、午前中の活動の舞台となるのは、恩賜上野動物園。動物園内の活動について紹介するのは、教育普及課の鈴木仁さんです。動物園では、動物のたべものをテーマに動物たちと飼育員とのつながりを観察するために、普段は公開されていない「エサ場」や「小獣館 バックヤード」を冒険していきます。

動物園のスタッフのみなさんのファシリテートのもと、とびラーと参加者のみなさんが15人1組ほどの3つのグループに分かれたところで、動物園での冒険のはじまりです。

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まず参加者のこどもと大人たちが訪れるのは、恩賜上野動物園西園の「小獣館」。小さいけれどユニークな動物たちを屋内で観察できる展示室です。台風の影響で朝から小雨が降り出したこの日も、じっくり動物たちを観察することができます。

今日は、「小獣館」の数多くの動物の中でも「マヌルネコ」、「ミーアキャット」、「オリイオオコウモリ」の3種類の動物を取り上げ、動物園のスタッフのみなさんの解説のもと3つのグループが順番によく見ていきます。

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その動物が野生でどんなものを食べているのか、「食べもの」や「食べかた」についてお話を聞きながら、動物の手や口をじっくりと観察します。どんなものなら小さな口で食べられるのか、動物の体のつくりをよく観察することが、普段食べているたべものを想像するときの手がかりになります。

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大人もこどもも展示ケースをのぞきこんで、じっと動物の細かな部分に目を凝らします。飼育員さんに聞いたこと、動物を観察して気がついたことは、ワークシートにどんどん書き込んでいきます。

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大人もこどもたちと同じワークシートを使って観察したことを書き込んでいきます。大人もすごく真剣な表情です。

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そうして、みんな思い思いのワークシートを完成させました!

 

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小獣館で3種類の動物をよく観察したら、つぎは動物たちのエサを見るために、動物園の管理事務所1階エントランスホールに場所を移します。エントランスホールのテーブルの上には、野菜や果物、種子類、ミールワームなど、動物の「食べもの」がずらり。動物たちのエサの材料を見て、それぞれの動物にあげるエサの種類とあげ方(加工の仕方)を考えていきます。

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色も形もとりどりの多種多様な食べものが並ぶとなんともきれい!

 

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参加者のこどもと大人は、小獣館でみた3種の動物の中からお気に入りの動物をひとつ選んで、その動物の「おべんとう」を考えワークシートに書き込みます。観察したことや気づいたこと、動物園のスタッフの話をヒントに、量や大きさ(切り方)についても想像してみるのが、観察のポイントです。

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動物た食べるエサの量や大きさ・切り方を考えたり、動物たちが食べるときにどんな工夫があるといいのかについて想像をふくらませたりしながら、まあるいおべんとう箱のなかに動物のためのおべんとうを書き入れていきます。そうして、参加者それぞれの個性が表れた30種類の「おべんとう」が、できあがりました。

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動物を観察し、動物たちの「おべんとう」を推理したら、次にエサ作りの現場を実際に見学していきます。見学するのは、小獣館のエサ作りの現場「小獣館バックヤード」と、上野動物園のエサを貯蔵している通称「エサ場」です。

エサ場には、ドライ加工した飼料(ペレット)だけではなく、野菜・果物や精肉などの生鮮食品や、冷凍された食材が保管されています。私たちが普段スーパーマーケットで手にする食材と同じものを動物たちも食べているのですね。

「食べること」は、動物の一日の楽しみでもあります。その「食」をデザインするために、エサを調理をする飼育員さんたちは、エサの配分や置き場所を工夫して、それぞれの動物に合わせた調理方法を考えます。食べる時間を長く楽しめるように、わざと食べにくくするのも工夫のひとつ。それぞれの個体に合わせてきれいにカットされ、器に盛られたエサはまるで「おべんとうばこ」のようです。

動物の「おべんとう」づくりは、まさに飼育係のスタッフの日々の観察が活かされる場面。動物たちに餌を与える担当者の姿を通して、動物たちと関わっているスタッフのみなさんの動物たちへの思いが見えてきます。

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現場見学に合わせて、動物たちのたべものの調理についても映像で見ます。

食材を保管・調理するエサ場、小獣館に展示される動物達のたべものをつかさどるバックヤードの見学、そして映像で調理風景。動物のたべものをよく知り、観察することを通じて、普段は見えてくることのない「動物と動物園をケアする人とのつながり」に思いを巡らせました。午後は、「おべんとうを作る人と食べる人のつながり」について、東京都美術館の展覧会の鑑賞を通じて想像します。

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恩賜上野動物園から東京都美術館のアートスタディルームに戻ったら、午後の活動に備えてお昼休憩をとります。午前から午後にかけて実施される「うえの!ふしぎ発見」プログラムは、みんなでお弁当を食べる時間があるのも特徴のひとつです。お弁当を食べる時間は、参加者ととびラーが打ち解け合う大切な時間でもあります。

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午後は、東京都美術館の「BENTO おべんとう展―食べる・集う・つながるデザイン」が冒険の舞台です。毎日のお昼ごはんから行楽弁当まで、私たちの生活に深く根付いるおべんとう。「BENTO おべんとう展―食べる・集う・つながるデザイン」展(以下、おべんとう展)は、お弁当をコミュニケーション、デザインの視点から捉え、その魅力を再発見できる空間となっています。

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「おべんとう展」の会場には、江戸時代のユニークな意匠のお弁当箱から、現代の作家たちの映像やインスタレーション、そして参加型の作品などが展示され、古今東西の多様なお弁当やお弁当をテーマとした実験的なアイデアが点在しています。おべんとうというテーマを切り口に、参加者はどんな「人と人とのつながり」を思考し、発見していくのでしょうか。

展示室にやってきた参加者のこどもと大人は、まず、グループごとに作品を鑑賞します。気になる作品、気になる空間を中心にみんなで鑑賞し、「おべんとう」を視覚的に捉えます。

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図2

「どうしてこんな形をしているんだろう?」

「このお弁当箱にはどんなものが入っていたんだろう?」

 

様々な時代の多様なお弁当箱の形を丁寧に鑑賞する中で、思わぬところに奇麗な色や形が隠れていたり、色・形に込められているメッセージを感じたりと、お互い新しい発見をしていきます。

作る人が食べる人のことを想像する

そして、味のバランスを考える

彩りよくお弁当箱にたべものを詰める

そんなプロセスの中には、お弁当を「食べること」をめぐるコミュニケーションデザインがあります。

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グループで作品を見てまわることで作品鑑賞のコツがつかめたら、つぎは自分のお気に入りの作品を探します。子どもと保護者の活動には、とびラーさんが寄り添います。作品に近づき参加しながら、鑑賞できるのも「おべんとう展」の楽しみ方です。時にいろいろとびラーやグループのメンバーと相談をしながら、お気に入りの作品を鑑賞します。参加者の発見に耳を傾けるとびラーさんたちも楽しそうです。

 

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お気に入りの作品をよく鑑賞したあとはアートスタディルームに集まって、創作活動のワークショップに入ります。おべんとうデザインのワークショップのレクチャーをするのは、東京藝術大学美術学部特任准教授の伊藤達矢さんです。

テーマは、「だれかのための想像上の おべんとう をつくってみよう」です。

もし自分が「おべんとう」を作るとしたら、一体誰にどんな「おべんとう」をつくるのか想像をして、おべんとうをデザインしていきます。だれに、どんな、おべんとうをつくるのか、贈る相手のことをよく思い浮かべて、想像を膨らましながら手を動かすのが大切なポイントです。

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おべんとうをデザインするワークショップに使う材料は、なんと本物の野菜!自然の中にある鮮やかな色、不思議な形、特徴的な手触りに注目して、だれかの「おべんとう」を表現をしていきます。

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まずは、おべんとうのデザインの特徴について知るために、テーブルに並べられた本物の野菜の中から気になる野菜をひとつ選んで早速包丁を入れます。切ると鮮やかな色が出てくる野菜、タネがたくさん入っている野菜、へたがごつごつした野菜、わたがふわふわした野菜。普段見慣れている野菜もよく観察して面白いところを切り出してみると、新しい発見がたくさんあります。

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そして、おべんとうをデザインするポイントは、箱のなかに「並べて」「つめる」ことにもあります。

どの色と色を隣り合わせに並べるか、どんな形と形を合わせてつめるか。色や形、手触りにまで注目して、箱の中にレイアウトをします。おべんとうのデザインはシンプルなようでいて、形や色を「並べて」「つめる」にはコツがいるもの。お弁当箱をキャンパスに見立てて、各自お気に入りの食材を選んで、好きな大きさ・部分を切り、色と形のピースに仕立ててゆきます。

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野菜の大きさや形は作り手の個性や、送り手への想像力を手掛かりに、大胆に大きく切られたり、普段は食べない野菜の葉の部分をそのままちぎったり、細かく切るといった具合に形を変えてゆきます。

並べて切る、切ってつめる。そんな作業を繰り返して、いよいよ「おべんとう」の完成です!

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 だれのための?
 おかあさんとおとうさんのため

 どんなおべんとう?
びっくりさせるおべんとう

 つくった人
さくたろう

 

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 だれのための?
 むすこ

 どんなおべんとう?
びっくりするおべんとう いきものが好きなむすこが よろこぶような おべんとう

 つくった人
そうすけのママ

 

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 だれのための?
とうもろこしのようせいさん

 どんなおべんとう?
すてられてしまう かわ や ひげ のおふねにのったり、すべりだいをすべったり、たのしくすごしています。

 つくった人
おおた

 

野菜から取り出された色や形が「おべんとう」のなかで構成されて、世界にひとつだけの贈り物ができました。動物園と美術館をめぐり想像力を膨らませてつくったおべんとう、いつもそばにいる誰かをよろこばせたいという気持ちでつくられたおべんとう。そのひとつひとつに作り手のオリジナリティが現れています。

手を動かしながらレイアウトを考えたり、色と形の配置を並べ替えながら、隣り合ったもの同士の影響を体験したりすることで、見ること、作ることの面白さを感じられたのではないでしょうか。

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最後は、みんながデザインした「おべんとう」をみんなで鑑賞し合いました。

自分のつくった「おべんとう」や、切り落とした野菜はお土産としてお持ち帰り頂きます。

「おべんとう」をテーマに、動物園の動物と人、美術館の人と人のコミュニケーションを観察・鑑賞し、造形ワークを通じて自分とあなたの関係性を考えた今回のワークショップ。色や形を組み合わせて、「おべんとう」の気持ちを表現してみる体験は、きっと特別な経験になったのではないでしょうか。

執筆|渡邊 祐子(Museum Start あいうえの プログラム・オフィサー)

撮影|藤島 亮(一部、運営チームが撮影)

プログラム: うえの!ふしぎ発見 |
投稿日: 2018年9月29日