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2018(平成30)年度 うえの!ふしぎ発見

うえの!ふしぎ発見 コレクター部(2019.3.27)
(上野の森美術館×東京都美術館)

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『だいすき美術館』

『作品いっぱい美術館』

『自ぜんと神ぴの美術館』

 

どんな作品が並んでいるのだろう、行ってみたいと思わせる美術館の名前。名付けたのは、2019年3月27日に行われた「うえの!ふしぎ発見:コレクター部」に参加した、こどもたちです。

「うえの!ふしぎ発見」は、9つの文化施設があつまる上野公園を舞台に、ミュージアムとミュージアムのコラボレーションを通じて、たくさんのふしぎやホンモノとの出会いを探求するプログラムです。*プログラムの内容についてはこちらからご覧いただけます。

今回のテーマは「コレクター」。上野の森美術館『VOCA展2019 現代美術の展望ー新しい平面の作家たち』(以下、『VOCA展』)と、東京都美術館の野外彫刻をめぐり、作品をコレクション。マイ・ミュージアムをつくるという内容です。

参加したのは、小学校1年生から小学6年生までの13名のこどもたちとその保護者。ファミリー向けではありますが、プログラムは、こどもチームと大人チームに分かれて実施。それぞれに、ツアーの伴走役を担うアート・コミュニケータ(以下とびラー)が加わります。この日参加したとびラーは総勢15名でした。

 

【冒険のはじまり】

「そろそろ時間だね」

「どんなこどもたちに会えるのかな、楽しみ」

ここは、上野の森美術館の一室。とびラーとスタッフが、こどもたちを待っています。

「おはようございます」

「よろしくお願いします」

次々と、こどもたちがやってきました。「おはよう。こちらへどうぞ!」

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席についたこどもたちに渡されたのは、名札と、オレンジ色のバンダナ(あいうえの参加者の目印です)、そして、「ミュージアム・スタート・パック」。
緊張しているのか、うつむき加減の子もいれば、さっそくとびラーと話している子もいます。

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「おはようございます。上野公園にようこそいらっしゃいました。」

こどもたちの前に登場したのは、東京藝術大学美術学部特任助手/Museum Start あいうえのプログラム・オフィサーの鈴木智香子さん。

「今日は、みなさんと一緒にミュージアムの冒険を楽しみたいと思います。テーマは、コレクター部。みんなも何か、集めているものはあるかな?今日はコレクターの第一歩として、作品を集めるということをやってみましょう。」

1日の活動は、次の3つのステップで進んでいきます。

①  上野の森美術館『VOCA展』を観て、作品の中からマイベスト3を選ぼう

②  東京都美術館の野外彫刻を観て、作品の中からマイベスト3を選ぼう

③  選んだ作品を中心に、マイ・ミュージアムを作ろう

そして、参加者と一緒に活動するのは、とびラーのみなさん。ミュージアムの楽しみ方を知っていて、一緒に楽しんでくれる仲間です。

 

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次に登場したのは上野の森美術館 学芸課長の坂元暁美さん。

「『VOCA展』は、Vision of Contemporary Artの頭文字。日本語訳は『現代美術の展望ー新しい平面の作家たち』。全国の美術館学芸員、ジャーナリスト、研究者などが推薦した作家、33名の作品が展示されています。
今回の展覧会は、一年以上かけて準備をしてきました。学芸員の仕事のひとつに、作品を展示室のなかに並べることがあります。部屋のかたちにあわせて、どこにどれを置くのがいいのかなと考えながら並べていきます。」

その言葉をうけ、「いまの言葉は、午後に行うマイ・ミュージアムづくりのヒントになりますよ!」と鈴木さんが続けました。

「鑑賞に出かける前の心構え」を確認したら、いよいよチームごとに展覧会へ。1チームは、参加者4〜5人。そこに、2人〜3人のとびラーが加わります。

 

【展覧会へ:マイベスト3を選ぼう】

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「不思議だよね」とびラーの言葉に、頷き、「なんか出ているみたい」と話す子。

東城信之介の作品《アテネ・長野・東京ノ壁ニアルデアロウ模写》に近づいてみたり、ちょっと離れてみたりしながら、言葉をかわしているのは、こどもAチーム。

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「4つの絵が、ストーリーになっているんじゃないかな。朝、顔を洗って、ご飯をつくって、食器を出す。」

石場文子の作品《2と3、もしくはそれ以外(祖母の家)》の前で話しているのは、こどもBチーム。

「どうしてそう思ったの?」とびラーが尋ねます。

「1枚目が、寝ている跡みたいだから。」

それを聞いて、別の子が話します。「黒い線で描かれたところは、洗ってしまったもののような気がする。」

ほかの子も頷きます。「そこにあるといいなと思うものをマークしているんじゃないかな。」

こんどは、とびラーが「いままで出てきた意見とは別に、何か気になったこととかある?」と尋ねました。

ひとりの子が話し出しました。「昼でもありそう。寝るって、昼寝もありそうだから。」

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大人チームも、作品の前で対話しています。最初はかしこまった雰囲気だったところも、だんだんと笑顔が見え始めました。

チーム鑑賞の時間が終わったら、今度は一人で見る時間。
「みんなで見ていくと、いろんな発見がある。これからは一人で鑑賞の時間です。一人でも、今みたいに、いろんな視点で見てみてね。」とびラーがこどもたちを送り出します。

こどもたちは、鉛筆と冒険ノートを片手に、展示室をまわりはじめました。

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何人かのこどもたちが足を止めたのは、クスミエリカ《Metropolis

「遺跡のようにも見えるけど、よく見ると人やビルなどがある」

「地球の未来が汚れているようで対策を考えたくなる」

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気づいたこと、感じたことなどをノートに書き留めていきます。

キャプションを見てタイトルをメモしたり、なかには、作品をスケッチしたりする子もいました。

 

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一人の時間が終わったら、発表の時間。

滝沢広《Arrangement》。「このへんに虹が見えてきれいだったから」という小1の女の子。

西村 有 《アラベスク》《花》。「お花が描いてあるんだけど、どうやって生えているんだろうとかいろいろ考えたから」という小5の男の子。

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こどもも大人も、チームのみんなに自分の選んだ作品を紹介する表情はなんだか嬉しそうです。

これにて、午前中の活動は終了。次なる目的地は東京都美術館。お昼ご飯を食べたら、午後の活動がはじまります。

 

【野外彫刻:マイベスト3を選ぼう】

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「野外彫刻ってどんなものかな。みなさん知っていますか?」

みんなの前に登場したのは、東京都美術館 学芸員の稲庭彩和子さん。

「東京都美術館には、全部で10点の野外彫刻があります。今日、歩いている途中で見たものもあるかもしれません。」

彫刻のなかには抽象的なかたちのものもあり、どうやって見たらいいのかなと思うこともあるかもしれません。そこで、彫刻家がどんなことを考え、どんなふうに作品をつくっていくかを伝えたいと稲庭さんが取り出したのは、1冊の絵本。

タイトルは「石と彫刻―足のある風景」。彫刻家の鈴木久雄さんが描いた絵本です。

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じっくり朗読をきいたら、実際に彫刻を見に出発します。

「よく見て、どうなってるのかな、これ」

「下から見ると、どんな感じ?」

とびラーが声をかけます。

彫刻のまわりをぐるぐるとまわりながら見たり、立ったり座ったりしながら見たり。

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ここでも、チームのみんなで見て、彫刻を見るコツをつかんだら、一人で見る時間を過ごします。

「ボールにうつっている景色がゆがんでみえるのがおもしろい」

「傘が逆さになっている」

こどもたちのノートに、いろんな発見が記されていきます。

 

【マイ・ミュージアムをつくろう】

時間になったら、アートスタディルームへ。「おかえりなさい」鈴木さんが迎えます。

これから、<マイ・ミュージアムづくり>がはじまります。進め方は次のとおり。

1、ミュージアムのテーマを決めよう

2、壁を組み立てよう

3、作品を並べよう

4、美術館の名前を考えよう

5、完成!みんなで見合おう

 

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さっそく、はさみを手にとり、作品がプリントされた紙を切り出しました。

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「ここに壁をおきたい」と言う子に、「なるほど、おもしろそう」ととびラーが答えます。

「こうやって、こうして、最後にこれ」「じゃあ、ここ押さえておくから、貼ってみてね」

とびラーと相談しながら手を動かす子もいれば、ひとりで黙々と作る子も。それぞれのペースで、すすめていきます。

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大人たちも、制作中。「楽しいです」「普段なかなかやらない作業ですよね。こどもはやるんだけど」「やってみたらおもしろい」

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いろいろ並べて、ずらして、位置を調整して。

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全体ができあがってきたら、キャプションに美術館の名前、作品を選んだ理由、工夫したところを書き、完成です。

キャプションを前に、手が止まった子がいました。

「みんなにどんなふうに伝えようか?」とびラーが声をかけます。それでも、すぐには書けません。自分のつくったミュージアムを見ながら少し考えこんでいる様子です。

しばらくして、ペンを動かしはじめました。

【マイ・ミュージアム完成!みんなで見合おう】

「みんな、できたかな?」と鈴木さん。「そろそろ開館の時間ですよ。どんな美術館ができたか、みんなで見合いましょう。」

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机の上に、たくさんの美術館が並びました。

「お母さんのは?」「これ」「なんて書いてあるの?」

「なんか、みんなのすごいね」

「いいわねー。鯉も描いたの?」

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おとなのマイ・ミュージアムも、魅力的なものが並んでいます。

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『未来へつづく美術館』

『デザインしかく美術館』

『ほっこり美術館』・・・ほかにも、たくさん。

 

あっというまに終了時間となりました。

「今日はみんなで同じ展覧会を見たけれど、選んだものや気になった理由はそれぞれ違う。自分が思ったこと、感じたことを大切にしてくださいね」と鈴木さん。

今日のプログラムは、これで終了。でも、ミュージアムの冒険は今日で終わりではありません。こどもたちに渡された「ミュージアム・スタート・パック」には、これからもミュージアムを楽しめるよう、冒険のヒントが詰まっています。

 

「最初は1日で長いかなと思っていましたが、実際にはあっという間でした。」

「自分から発言することが苦手な息子なので、正解も間違いもないアートを通したセッションを体験してもらうことを期待して申し込みましたが、親のほうがミュージアムづくりに夢中になりました。」

「自分の思ったことを大事に、自由に感じて、と言われたのが良かったです。マイ・ミュージアムづくりも楽しかった!またぜひ参加したいし、個人的にもミュージアム巡りがしたいです。」

参加した保護者の方々からは、こういった感想が寄せられました。

 

それをうけて、「参加してくれたご家族みんなに、喜んでもらえて、絵や彫刻を見る楽しみ方が増えたようでよかったです。」と振り返るのは、この日参加したとびラー。毎回、とびラーもスタッフも関係者一同、たくさんのミーティングを重ねてプログラムをつくっています。

ミュージアムの冒険を楽しんでもらいたい。作品を見て、感じて、対話して、自分だけの好きを見つけて、ミュージアムの楽しさをもっともっと体験してもらいたい。

「ミュージアム・スタート あいうえの」は、そうした思いをこめて、これからも、こどもたちのミュージアム・デビューを応援するプログラムを展開していきます。

 


 

執筆|井尻貴子、編集|Museum Start あいうえの運営チーム

撮影|藤島亮(一部、運営チームが撮影)

プログラム: うえの!ふしぎ発見 |
投稿日: 2019年3月27日